ロシア マリウポリ掌握を宣言 ウクライナ側は激しく抵抗

ロシアのプーチン政権は、ウクライナ東部の要衝マリウポリの掌握を宣言し、来月9日に予定されている第2次世界大戦の「戦勝記念日」に向けて、東部や南部で支配地域を広げたい思惑とみられます。これに対してウクライナ側は激しく抵抗していて、一進一退の攻防が続く見通しです。

ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ東部の要衝、マリウポリを掌握したと宣言する一方、ウクライナ側の部隊や多数の市民がとどまる製鉄所への攻撃は中止した上で一帯の包囲を続けるよう指示しました。

これについてイギリス国防省は22日「製鉄所を総攻撃すればロシア側の犠牲者をかなり出すことになり、さらに戦闘力の低下につながる可能性があった」と分析しています。

またウクライナのゼレンスキー大統領は「まだ一部にはわれわれの部隊が残っている」と述べ、ロシアの主張を否定し抵抗を続ける構えを示しました。

こうした中、ロシア側が一方的に任命したマリウポリの副市長、カラチョワ氏は旧ソビエトが第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利した来月9日の「戦勝記念日」にあわせてマリウポリで軍事パレードを開催する考えを示し、「最も重要かつ最も愛国的なイベントになる」と述べました。
「戦勝記念日」には例年、首都モスクワをはじめとするロシア各地で軍事パレードが行われ国民の愛国心が高まることから、プーチン大統領としてはマリウポリをロシアの支配下に置いたことを既成事実化し、国内向けに勝利を強調したいねらいもあるとみられます。

一方、ロシア国防省は22日も各地をミサイルで攻撃し、東部ドニプロペトロウシク州の鉄道駅付近でウクライナ軍の部隊を巡航ミサイルで攻撃したほか、東部ドネツク州で地対空ミサイルシステム「S300」をミサイルで破壊したなどと発表しました。

また、ロシア軍の中央軍管区の高官は22日「特別軍事作戦の第2段階が、2日前に始まったばかりだ。任務の1つは、東部のドンバス地域と南部を完全に掌握することだ。南部クリミアからの陸上の回廊を確保でき、ウクライナ経済にも大きな影響を与えるだろう」と述べました。

そのうえで「沿ドニエストル地方に、新たにアクセスする方法を得ることになる」と述べ、ロシアとしては、ウクライナ南部を掌握したあと、モルドバから一方的に分離独立を宣言し、ロシア軍が駐留している沿ドニエストル地方まで、支配地域を広げていきたい考えを示した可能性があります。

ロシア軍の動きについて、イギリス国防省は分析で「ロシアは新たな戦力を投入しているが、紛争が開始した当初に受けた損害の影響が残っている。消耗した戦力を回復させるため、使用できなくなった装備をロシアに送って修理している」としています。

またアメリカ国防総省の高官も、ロシア軍の部隊が東部ハルキウ州のイジュームからドネツク州に向けて南下しているものの、ウクライナ側の抵抗にあい東部ではロシア側、ウクライナ側ともに「大きな成果は見られない」と指摘しています。

プーチン政権は来月の「戦勝記念日」に向けて東部や南部で支配地域を広げたい思惑とみられますが、ウクライナ側の抵抗は激しく一進一退の攻防が続く見通しです。

“取り残されているのは10万人以上”避難の実現できるか課題に

ロシア軍に市内の大部分が掌握されたウクライナ東部のマリウポリでは10万人以上の市民が取り残されているとされ、人道回廊を設置して住民の避難を実現できるかが課題となっています。

21日にはマリウポリからの79人の避難者を乗せた3台のバスが南東部のザポリージャに到着し、目に涙を浮かべたり、安どの表情を見せたりする人たちの姿が見られました。
避難してきた住民は「マリウポリではとても言葉にはできない地獄のようなことが起きていた」と語ったほか、別の住民も「裏庭にある小さな墓地に7人を埋葬した」などとマリウポリの状況を語りました。

一方、翌日の22日、ウクライナのベレシチュク副首相はSNSのフェイスブックに「ルートが危険な状態のため22日は人道回廊は設置されない」と投稿し、避難ができない状況になったと明らかにしました。そのうえで「避難を待つ皆さん、どうか持ちこたえてください」と投稿し、安全に避難できる状態になるまでとどまるよう呼びかけました。