“多くのロシア国民 危機的状況を把握せず” 現地の経済専門家

欧米などから厳しい経済制裁を科されているロシア国内の経済状況について、現地の経済専門家は、多くのロシア国民は政権の統制下にあるメディアの情報に影響され、危機的な状況を把握していないと警鐘を鳴らしました。

モスクワ大学の教授で、国内の社会経済学を専門にするナタリア・ズバレビッチ氏は、NHKのインタビューで、ロシア政府がことしの経済成長をマイナス10%程度、物価上昇率はおよそ20%に上るという見通しを示しているとして「かつてない危機だ」と述べました。

そして、厳しい制裁や外資系企業の活動停止によって、自動車や鉄道輸送、天然資源開発の設備の製造や資源の採掘、それに建設など、多くの産業で深刻な影響が出てくる可能性があると指摘しました。

とくに「ロシアでは小売りやホテル、飲食店などのサービス業が雇用全体の20%を占める」と述べて、失業者が増えることへの懸念を示しました。

これに関連して、モスクワのソビャーニン市長は18日、外資系企業の活動停止で20万人が職を失うおそれがあるという見方を示しています。

一方でズバレビッチ氏は「ロシア人はとても忍耐強い」という認識を示しながら「多くの人たちは、この危機の規模やリスクを全く理解していない。『すべてうまくいく』というプーチン政権のことばを信じることに慣れてしまっている」と述べ、多くのロシア国民は、政権の統制下にあるメディアの情報に影響され、危機的な状況を把握していないと警鐘を鳴らしました。

また、ロシアに経済制裁を科していない国も多く、国際社会から完全に孤立しているわけではないと強調しながらも「今後、経済的な辺境に追いやられることになる」と述べ、強い危機感を表しました。

そして、ズバレビッチ氏は「旧ソビエト圏で影響力を取り戻そうと、軍事作戦に乗り出したことの代償だ」と述べて、ウクライナへの軍事侵攻を暗に批判したうえで「軍事作戦が続くほど経済状況は悪化する。作戦の終了は早いほどいい」と述べました。

スーパーの買い物客からは物価上昇への不安も

ロシアの首都モスクワにある大型チェーンのスーパーでは、近くに住む人たちが日用品などを買い求めようと多く訪れています。

店の担当者によりますと、先月は制裁の影響を懸念した一部の客が砂糖や衛生用品などを買い占め、一時的に不足したということです。

ただ、現在は品不足は解消されたということで、店の担当者のジャンナ・ガーリナ氏は「一時期、買い占めの騒ぎはありましたが解決しました。今では商品が豊富にそろっています」と話していました。

一方、買い物客からは、物価の上昇に対する不安の声が聞かれ、年金生活者の女性は「値上がりを感じます。野菜一つとっても、これからは目に見えて深刻になるでしょう」と話していました。

また、7人の子どもを育てているという女性は「以前は100ルーブルだったものが、いまは150ルーブル以上に値上がりしています。毎日、その日暮らしで、きょうはお金がありますが、あすは分かりません」と話し、政府から支給される子育ての支援金なども使ってやりくりしているものの、生活費は不足していると、今後の生活への不安を訴えていました。