男女の垣根をなくす “ジェンダー平等” 実現に向けて

男女の垣根をなくす “ジェンダー平等” 実現に向けて
今回は、中学校で出題された入試問題を入り口に、「ジェンダー平等」について考えます。

問題に挑戦!

今回の問題は、開成中学校の入試問題です。
超難関と言われる男子校、その2022年の問題です。
問題
男女共同参画社会実現への取り組みが進められるなか、アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)の問題が指摘されている。
下記の言動の背景には、母親に対するどのようなアンコンシャス・バイアスがあると考えられるか?

単身赴任の母親に対して
「え? 母親なのに単身赴任? お子さん、かわいそうね」

(男女共同参画局「共同参画」2021年5月号より抜粋)
(開成中学校 2022年 改題)
解答例としては、「母親は子どもと暮らし、子育てすべきであるというアンコンシャス・バイアス」となります。

この入試問題では、「母親はこうあるべきだ」と、この部分が無意識の思い込みにあたるわけですね。

入試問題に“ジェンダー平等”

およそ30年にわたってジェンダーの社会学を研究している静岡県立大学教授の犬塚協太さんに話を聞きました。
今回、中学の入試問題に出題されたことについて、どういう感想を持ったのでしょうか。
犬塚さん
「男子の生徒に、こういった問題を考えさせる機会が出てきたことは非常に意味のあること。男性が、これを自分の問題、あるいは自分たちを含めて社会全体を変えていかなければならない問題、そういうことに早くから自覚的になっていくことは大変大事。時代が変わってきたなと痛感します」

実現に向けて取り組む鯖江市

性別にかかわらず、平等に責任や権利や機会を分かち合うことなどを意味するジェンダー平等。
その実現に向けて、取り組んでいる市があります。
女性の就業率が全国トップクラスの福井県の鯖江市です。
鯖江市に移住し、地域おこし協力隊として、市の職員とともにジェンダー平等に向けた活動をしている川口サマンサさんに話を聞きました。
川口さん
「ものづくりのまちと言われ、鯖江市は歴史的に女性が働くのが当たり前な環境だったのでジェンダー平等が結構浸透しているのではないか。市が行う『さばえ38組』というのがあり、鯖江市内の企業のリーダーたちが、女性がより働きやすい環境をつくって、情報共有するためのネットワークになっています」
2021年、国際女性デーにあわせ3月8日に発足した「さばえ38組」には、これまでに、市内の29の企業が参加しています。
「子育て中の女性を積極的に雇用する」、「男性が育児休暇を取得しやすいようにする」など情報交換しながら、お互いのよい取り組みを自社にも生かそうとしています。
川口さんは、講演などを通じて一定の手応えを感じる一方で、まだ課題も残っていると言います。
川口さん
「家事をする時間は、まだ女性のほうが多い。最近のデータで、女性は男性の3倍ぐらい。10年近く前は5倍だったので差は縮まってきたが、それでも結構格差がある。まだ課題が残っているところもあるが、どこかが立ち上がって、みんなのロールモデルにならないと。それを見て、周りももっと力を入れてほしいと思っています」

切実に求められる理由

長年、研究してきた犬塚さんは、仕事や家庭生活に対する若い男性の意識の変化に注目しています。
2021年、静岡市が行った調査で驚くべき結果が出たと言います。
「生活の中で何を優先したいか」という問いに対し…
犬塚さん
「『仕事を優先したい』というふうに答えた人が、男性の10代・20代・30代で0%でした」
仕事を優先したいと答えた人は、50代の男性では9%いましたが、30代以下では一人もいなかったのです。
さらに、30代の男性では、家庭生活を優先したいと答えた人が40%近くと最も多くなりました。
若い男性において、これほどの変化が起きている背景を今の段階で、どう分析しているのでしょうか。
犬塚さん
「自分や家族を犠牲にして、そこまで会社に尽くしたからといって報われない、保障してくれない時代になってきた。今の親、先輩たちの世代の生き方が、ロールモデルにならなくなってきたことが大きな要因ではないか。企業選びの基準が、完全に変わってきているので、そこに企業が早く気付いて、どうすれば優秀な人材をちゃんと確保できるか、生き残りがかかった問題だという、それぐらいの危機意識が大事だと思います」
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