G20閉幕 ロシア代表の発言時 米英などが席を立つ異例の展開

ワシントンで開かれていたG20=主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議が閉幕しました。ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアの代表が発言する際、アメリカやイギリスなど複数の国の代表が席を立つ異例の展開となり、共同声明も採択されませんでした。

ロシアによる軍事侵攻以降、G20としては初めての閣僚級の会合となった財務相・中央銀行総裁会議は、ワシントンで日本時間の20日夜開幕しました。
そして5時間余りにわたって討議を行い、21日朝、閉幕しました。

会議では、ウクライナ情勢が世界経済に与える影響が議論され、多くの参加国は軍事侵攻がもたらす人道危機と世界経済に及ぼす影響を懸念し、侵攻を今すぐやめるよう求めたということです。

これに対し、オンラインで出席したロシアのシルアノフ財務相は「世界経済の状況は非常に悪化している。ロシアに対する制裁が、すでに生じていたインフレ圧力を強めているだけでなく、経済の新たなリスクになっている」などと述べ、欧米などによる経済制裁を批判しました。

鈴木財務大臣は途中退席しなかったものの、イギリスのスナク財務相は、ツイッターへの投稿で、ロシアの代表が発言する際、アメリカやイギリスなど、複数の国の代表が席を立ったことを明らかにし、異例の展開となりました。

また、議論の成果をまとめる共同声明も採択されず、対立の構図が鮮明になりました。

インドネシアのスリ・ムルヤニ財務相は、閉幕後の記者会見で「軍事侵攻が世界経済の回復をより複雑にしており、感染症への対応や気候変動などへの努力を阻害しているという見方は参加国の間で共有された」と述べました。

英財務相 “戦争を非難するために団結”

イギリスのスナク財務相はツイッターへの投稿で「ロシアの代表者が発言する際、われわれはアメリカとカナダとともに会場を離れた。われわれはロシアによるウクライナに対する戦争を非難するために団結し、ロシアを罰する強い対応を協調して推し進めていく」と表明しました。

また、カナダのフリーランド副首相兼財務相もツイッターに「カナダと多くの民主的なパートナーは、ロシアの発言時に退出した」と投稿しました。

現地の複数のメディアは、アメリカのイエレン財務長官も退席したと伝えています。

人道危機や経済影響に深い懸念 一方で制裁反対の声も

会議のあと、議長国 インドネシアのスリ・ムルヤニ財務相はオンライン形式で記者会見しました。

この中でスリ・ムルヤニ財務相は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が会議の議題となったことを明らかにしたうえで「戦争による人道危機や経済の影響に深い懸念が示され、戦争の一日も早い終結を求める声があがった。多くの国が戦争は正当化できず、国際法に違反すると非難した」と述べました。

一方で「一部のメンバーは経済制裁による影響に懸念を示した」とも説明しました。

また今回、ロシアの参加をめぐって各国の間で意見の違いがあったことについて、スリ・ムルヤニ財務相は「ロシアの参加に反対の声が出るのは驚きではなかったが、議論は混乱なく終えられた。ロシアへの強い非難があるにもかかわらず、すべてのメンバーが協力を維持し続ける必要性を理解していて、G20の協力関係や役割が失われることはないと確信している」と強調しました。

松野官房長官「ロシアを非難したうえで退席せず」

松野官房長官は記者会見で「G20=主要20か国とG7=主要7か国の財務相・中央銀行総裁会議ではロシアのウクライナ侵略による世界経済への影響などについて議論が行われた。日本を含むG7各国はロシアの侵略行為を厳しく非難し、一致してロシアに圧力をかけている。鈴木財務大臣は会議の場でロシアを厳しく非難したうえで退席はしなかったが、鈴木大臣が現地でも記者会見を行っているので私からは詳細を控えたい」と述べました。

中国 欧米などけん制

中国政府は21日、G20の財務相・中央銀行総裁会議にオンラインで参加した劉昆財政相の発言の内容を明らかにしました。

それによりますと、劉財政相は「リスクと挑戦に対して、G20のメンバーは団結と協力をし、不安定な世界に安定性を提供するべきだ」と述べました。

そのうえで「G20は国連を中心とした国際システムと、国際法に基づく秩序の改善に取り組むべきだ。世界経済を政治問題化したり、道具や武器にしたりすべきではない」と述べ、ロシアへの経済制裁を強める欧米などをけん制しました。

中国政府は今回のG20の会議で経済を政治問題化することに反対し、議論を経済的な影響に絞るべきという姿勢を強調したとしています。

専門家「国際協調に支障が出ているならば 極めて残念」

今回のG20について、財務省の財務官やIMF=国際通貨基金の副専務理事をつとめた三井住友銀行国際金融研究所の古澤満宏理事長は「ウクライナ侵攻をめぐる各国の立場の違いで国際協調に支障が出ているならば、極めて残念なことだ。会議では議論がなされたとは思うが、その土台となる立場が大きく違っていて、十分な環境が整っていない」と述べました。

複数の国の代表が席を立ったことについては「珍しいことだ。ずいぶん国際会議には出てきたがあまり離席をしたというのを見た記憶はない」と述べました。

また、今後G20が役割を果たしていけるかについて「世界経済の8割を占める先進国と新興国が参加し、国際協調を進める枠組みのポテンシャルは十分持っている。ただ、今の状況では十分な進展が期待できず一刻も早い戦争の終結による事態の改善が必要だ」と述べました。

G20で日本の果たすべき役割については「先進国の1つの国としてリードしていくことだ。いろいろ知恵を絞っていくとか人的な貢献も含めて国際協調に取り組んでいくべきだ」と述べました。