最高裁裁判官の国民審査 在外投票認めるべきか 夏までに判決

最高裁判所の裁判官の国民審査に、海外に住む日本人が投票できないことが憲法違反かどうかが争われている裁判で、最高裁判所大法廷の弁論が開かれ、原告側は「同じ日本人なのに権利が行使できないのはおかしい」と訴えました。

海外に住んでいたため、5年前の最高裁判所の裁判官の国民審査に、投票できなかった日本人の映画監督や弁護士など5人は、国民審査で在外投票ができないのは、公務員を罷免できる権利を定めた憲法15条などに違反すると国を訴えています。

15人の裁判官全員で審理する最高裁判所大法廷は20日、双方の主張を聞く弁論を開き、原告側は4人が意見陳述しました。

このうちブラジルに住んでいた女性は「同じ日本人なのに国民の権利であるはずの国民審査ができないのはおかしい。憲法に定められた権利が着実に行使できるよう、公正な判断を切に期待します」と訴えました。

一方、国は「在外投票を認めていないのは選挙とは投票方法が異なり、短期間に世界中の国々で審査の手続きを行うのが技術的に難しいからだ。合理的な理由があり、憲法違反ではない」と主張しました。

1審と2審は在外投票を認めないのは憲法違反だと判断し、そのうえで2審は次回の国民審査で在外投票ができなければ違法になると指摘しました。

最高裁の判決は夏までにも言い渡される見通しで、現在の国民審査法の規定について、どのような憲法判断が示されるか注目されます。

原告側「国民に信託されている 軽んじる判断しないで」

最高裁大法廷での弁論のあと、原告と弁護団が会見しました。

原告のひとりでもある谷口太規弁護士は「国は国民審査権は選挙権よりも軽いと主張しているが、私たち国民に信託されているからこそ、最高裁判所の裁判官には、憲法違反を審査する権利があり、その判断は、国会さえもしばる強大な力を持っている。最高裁の裁判官には自分たちの正当性の根拠を軽んじるような判断はしないでほしい」と話しました。

また、弁護団の吉田京子弁護士は「もし今回の判決をおかしいと思っても、制度が変わらなければ海外に住む日本人は審査に参加できない。今の制度を改められるのは最高裁の裁判官だけだ」と強調しました。

国民審査と在外投票

「国民審査」は、司法の最終的な結論を示す最高裁判所の裁判官としてふさわしい人かどうかを国民が投票によって審査する制度で、憲法で定められています。

審査の対象となるのは、就任してから一度も審査を受けていない裁判官、
または、審査を受けてから10年以上たった裁判官で、結果によってはやめさせることができます。

衆議院選挙に合わせて行われ、選挙権を持つ18歳以上の人が、投票できますが、海外に住む日本人の投票は認められていません。

一方、選挙については平成10年に在外投票の制度ができました。

当初は、衆議院選挙と参議院選挙の比例代表しか投票できませんでしたが、選挙区についても在外投票を認めるよう求める訴えが起こされ、平成17年に最高裁判所大法廷が、「投票を比例代表に限定する制度は、選挙権を保障した憲法に違反する」という判断を示しました。

この判決を受けて公職選挙法が改正され、平成19年の参議院選挙から比例代表だけでなく、選挙区でも在外投票ができるようになりました。

選挙と国民審査で異なるのが投票方法です。

選挙は当選させたい候補者などの名前を投票用紙に記入しますが、国民審査は投票用紙に裁判官の名前が印刷されていてやめさせたい人の名前の上に「×」をつけます。

このため国は、国民審査は用紙の印刷などに時間がかかり、海外で行うには技術上の問題があるとしていて、これまでに在外投票を認める法案が国会に提出されたこともありません。