ロシア外交官ら8人 羽田空港から出国 日本政府が追放措置

ウクライナ情勢をめぐって日本政府がロシアの外交官など8人を追放する措置をとったことを受けて、外交官らは20日午後、羽田空港から出国しました。
日本が複数の外交官などを一斉に追放することは極めて異例で、8人は主に情報収集部門を担当していたとみられています。

日本政府は、今月8日、日本に駐在するロシア大使館の外交官とロシア通商代表部の職員、合わせて8人を国外に追放することを発表しました。

関係者によりますと、8人は日本国内で主に情報収集部門を担当していたとみられ、中堅の幹部クラスも含まれています。

また、警察当局が、重要人物だとしてマークしていた人物もいるということです。

外交官らは、午前10時ごろ、他の関係職員や家族などと一緒に、東京・港区のロシア大使館からバスで羽田空港に向かいました。

そして、ロシア側が用意したチャーター機に乗り込み、飛行機は正午すぎに離陸してロシアに向かいました。

日本が複数の外交官などを一斉に追放することは極めて異例で、ロシア側は対抗措置を取るとみられていますが、具体的な内容については明らかになっていません。

外交官ら乗せたバス ロシア大使館出発(午前10時すぎ)

ロシアの外交官らを乗せたバスは20日午前10時すぎに東京・港区のロシア大使館を出発しました。

出発する際には大使館から音楽が流れ、多くの関係者が見送っていました。

車内には子どもを含む20人以上が乗っているのが確認でき、バスの窓から集まった報道陣にスマートフォンを向ける関係者もいました。

ロシア大使館前 警察官10人以上が警戒

ロシア大使館前には、バスが出発する40分ほど前になると警視庁の警察官10人以上が集まり、向かい側の歩道や近くの交差点に立って警戒にあたっていました。

大使館の前には「NO WAR」と書かれたカードを掲げた男性が1人いましたが、バスが出発する際、現場で目立った混乱などはありませんでした。

また、これに先立って大使館では午前7時半ごろ、外交官らの荷物とみられる大量の段ボール箱やスーツケースを積んだ大型トラックなど4台が次々に出て行きました。

外交官ら 主に情報収集部門を担当か

日本政府が国外に追放する措置をとったロシアの外交官ら8人は主に情報収集部門を担当していたとみられています。

関係者によりますと、8人の中にはロシアの情報機関「GRU」=「ロシア軍参謀本部情報総局」や「SVR」=「対外情報庁」に所属している人物が含まれているとみられ、警察当局が重要人物だとしてマークしていた人物もいるということです。

こうした人物は、ロシア大使館や通商代表部に所属しながら、実際には、さまざまな諜報活動に関与しているとみられています。

このうち「GRU」はロシア軍直轄の情報組織で、特にハイテク・サイバー分野を中心に情報収集にあたっているということです。

サイバー攻撃への関与もたびたび疑われていて、おととしイギリス政府は、「GRU」が東京オリンピックなどの関係者に対してサイバー攻撃を行っていたと発表しました。

また「SVR」はかつてプーチン大統領が旧ソビエト時代に所属していたKGB=国家保安委員会の後継機関で、主に国外の情報収集を手がける組織です。

2020年には通信大手「ソフトバンク」の元社員が、通信設備に関する情報を不正に持ち出したとして逮捕され持ち出された機密情報が「SVR」に所属するとみられる人物にわたっていたことが捜査で明らかになっています。

磯崎官房副長官「ロシアでの邦人や企業活動の保護に万全期す」

磯崎官房副長官は記者会見で「出国の見通しについては事柄の性質上、答えを差し控えたい」と述べました。

また、記者団が「ロシア側が対抗措置を取るとみられるが」と質問したのに対し「仮定の質問なので答えは差し控えたいが、引き続きロシアでの邦人や企業活動の保護には万全を期したい」と述べました。

公安調査庁元職員「ロシアに打撃」

公安調査庁の元職員でロシアを担当したことがある藤谷昌敏さんは「外交官や大使館の職員などは特権的に守られており、ロシアの情報機関の人物がこうした立場にいて情報集活動を行うことはよくあることだ。今回、追放となった8人は警察当局などの情報も踏まえて日本政府が選定したとみられる」と分析しています。

そのうえで「欧米諸国と足並みをそろえた動きではあるが、今回の対応は日本としては異例で、しばらくの間、ロシア側が日本国内で情報収集を活発に行うことは難しくなるのではないか。長期的に見ればロシアにとって打撃となるはずだ」と指摘しています。

また、今後のロシア側の対抗措置について「ロシアの日本大使館に勤務する外交官について、同じくらいの人数を国外追放する可能性が高いだろう」と話しています。

松野官房長官「ロシア側から対抗措置の連絡ない」

松野官房長官は、記者会見で「今月8日に国外退去を要求した在京ロシア大使館の館員など8人はきょう全員が出国した。同時に家族も出国したことが確認されている。これは日本側がロシア側に伝えた退去の期限内だ。事柄の性質上、人定事項は公表しない。現時点でロシア側から対抗措置の連絡はない。いずれにせよ在留邦人や日本企業の活動の保護に万全を期していく」と述べました。

ロシア駐日大使「報復措置が続くことになる」

日本政府がロシアの外交官など8人を追放したことについて、ロシアのガルージン駐日大使はロシアの国営メディアに対し「このような動きは日ロの対話や日ロ関係にとって極めて逆効果だ。日本側は外交上の対話の機会を人為的に狭めている」と述べ、批判しました。

そのうえで「われわれの外交官が大使館を去るのだから、そのあとには当然、われわれの側からの報復措置が続くことになる」と述べました。