だるい!きつい!つらい!リモート解除でもう“五月病”!?

だるい!きつい!つらい!リモート解除でもう“五月病”!?
新年度が始まりました。
コロナ禍で迎える3年目のこの春、職場や大学ではリモートでの業務や授業を対面に切り替えるところも多く、日常が少しずつ戻ってきました。
新たな出会いや刺激への期待に胸を躍らせるこの季節。
ただSNSをのぞいてみると…
「対面しんどい」
「視線と話し声が気になる」
なぜこうした声が上がっているのか?
取材してみると、4月なのにどうやらもう“五月病”が現れているようです。

(おはよう日本 村上隆俊 ネットワーク報道部 鈴木有 廣岡千宇)

対面授業再開 歓迎する声のかげで…

「つらい」「きつい」とSNSに投稿している多くは学生のようでした。

学生たちは対面をストレスに感じているのだろうか?

気になった私(村上)は母校の大学のサークルの後輩に連絡してみました。
大学では今年度から9割の授業が対面に戻り、1週間が過ぎたところでした。

まずは、サークルの代表に就任した新2年生。
新2年生
新たな学生どうしのつながりが生まれることを実感しています。サークル活動も対面のほうがよく、冗談も言えて笑いが起きています。
対面授業の再開を歓迎していました。

ところが、前代表の新3年生に聞いてみると…
新3年生
村上さん、、五月病かもしれません。
なにが起きているのか。私はすぐに母校に向かいました。

話を聞いたのは新3年生の水野隆聖さん。
入学したときには、すでに新型コロナウイルスの感染は拡大していて、入学式は中止でした。

1、2年生では体育の授業を除き、履修したすべての授業はオンライン。
自宅で受けていました。

対面授業の再開について水野さんは「当初思い描いていた学生生活を送れると楽しみでしたし、友人とも何か月ぶりに会えて本当にうれしかったです」と話してくれました。

4月11日の月曜日から金曜日まで毎日大学に通って、友人たちと肩を並べて授業を受け、サークル活動にも精を出しました。

ただ、その週末は、朝からなにもやる気が出なくなってしまったと話します。
水野隆聖さん
土曜日は午前中から勉強をしようと思っても、手が付きませんでした。気分転換をしようと散歩にもいったのですが、効果がありませんでした。日曜日も気分が晴れず、食べて、寝ることしかできなかったんです。
想像していなかった疲れがどっと出てしまったといいます。
水野隆聖さん
小中高のときはもちろん対面で授業を受けていたので、対面授業にすんなり戻れると思っていました。でもみんな同じ場所で授業を受けている間は無意識に気を遣っていたのではないかと感じます。対面授業のほうが、プライベートな空間で授業を受けるより疲れます。地方出身なので、東京の満員電車も初めて経験しました。慣れるのに1か月ぐらいはかかりそうです。
水野さんは早送りも可能で何回も聞き直しができるオンライン授業が当たり前になっていて、対面授業の感覚を取り戻せないことも負担に感じているようでした。

オンラインに近づけろ

水野さんのような学生の負担を少しでもやわらげようと、ユニークな対面授業にトライした先生もいます。
兵庫教育大学大学院の小川修史准教授です。

対面になっても学生の集中を切らしたくないと思い、学生が動画を「1.3倍速で聞いている」という声を参考に、いつもより早口で授業をすることと、要点は2回繰り返すことを意識しました。
兵庫教育大学大学院 小川修史准教授
自分も早口でテンション高く話すので、学生たちも集中してくれる。今後の対面授業でも続けていきたい。

大学側は学生に寄り添った対策も

対面授業に不安を訴える学生を、大学側はどう受け止めているのか。
島根大学保健管理センターの河野美江教授に現状を聞いてみました。

島根大学では「人前で話す」「友達に会う」ことで生活リズムが乱れ、対面をしんどく感じてしまう学生もいるということです。

中には、学生生活がこのまま送れるのかと不安を感じる学生すらいるといいます。

そのため相談のあった学生と面接し、配慮が必要だと判断されれば、教員がオンライン授業も合わせて行うことを決めました。

すでに複数の学生から相談を受けて対応したということです。
島根大学 河野美江教授
対面かオンラインかの二者択一ではなく、オンラインを残しつつ対面も続けていくことが重要です。きちんと対応するので、対面がしんどいなと思ったり不安に感じたりしている学生は相談してほしい。

久しぶりに出社してみると…

新年度を迎えて心身の不調を訴えているのは学生だけではありません。

働く人たちの健康相談に乗っている産業医は、例年とは違った要因でストレスを抱える社会人が増えていると危惧しています。
日本ストレスチェック協会代表理事 産業医 武神健之さん
長かったリモートワークがあけて久しぶりに出社すると心機一転、仕事を頑張ろうという人もいれば、チームみんなで頑張ろうと意気込んでいる同僚もいるかもしれません。リモートワークから出社に切り替わるいわば“Back to Office”の動きが広がり、再び新しいかたちの生活が始まる中で、高すぎる期待を持つ人は疲労もたまりやすく五月病のような症状に注意が必要です。
以前にはなかったストレスを感じるようなケースもあるようです。

武神さんが面談した40代の男性は、在宅勤務が続いたあと、久しぶりに出社してみると職場の景色が少し違って見えたそうです。

周りの同僚が私語をしたり、たばこを吸ったりするのを目にするたびに、だらだらしているように見えてしまい、自分は一生懸命やっているのにとイライラが募っていったといいます。

在宅勤務が続いた間に、周囲に人がいない環境で集中して仕事に取り組むことに慣れてしまったことで環境の変化にギャップを感じてしまったことが原因でした。

“五月病”という名にとらわれないで

新入生や新社会人に限らず、新しい生活を始めた人たちも多くいる中で、コロナによってすっかり定着した生活様式がこの春、変わってきています。

このため、大型連休明けに増える“五月病”の症状が例年よりも早く出始めていると警鐘を鳴らす医師もいます。
東京TMSクリニック 田中奏多医師
五月病の大きな原因のひとつと言われているのが環境の変化なんです。久しぶりに会社に向かう道のりを歩いたり、誰かと少し会話をするにも体力を使いますよね。生活の変化から心身の不調が起きてくることもあり、もう今の時期(4月中旬)から五月病のような症状が出ている人が多いという印象です。

五月病のサイン出ていませんか?

田中さんは「朝起きるのがおっくうになった」とか「なんとなく最近イライラする」などの症状がある人は予防を心がけたり、必要に応じて医師に相談してほしいと話しています。

“ことしは早めに対策をとる必要がある”

予防のためにいまからできる対策を、田中さんに3つ教えてもらいました。
ポイント1 朝起きる時間は一定に
人間の体内時計は1日に1時間分しか調整ができないと言われているそうです。

朝ゆっくりしたい休日も、できるだけ平日と同じ時間に起きるか、遅く起きる場合でも1時間ぐらいの差にとどめておくことで生活のリズムが崩れにくくなります。

ポイント2 15分間、目をつぶる
15分ぐらいお昼寝を計画的にとることもオススメです。

お昼寝といっても、必ずしも眠る必要はなく、ただ目を閉じるだけでも脳を休めることができるそうです。ただし長く、深い眠りは逆に頭がぼーっとしてしまうことがあり、注意が必要です。

ポイント3 夕方にちょっとした運動を
いすに座ったまま背筋を伸ばしたり、お手洗いに行くときにあえて階段で上の階にいくだけでもちょっとした運動になります。

人間の体温は朝と夕方に上がりやすくなります。夕方に運動で体温を上げておくことで、夜、眠るときに体温が下がりやすく、睡眠の質が良くなる効果が期待できるそうです。
田中さんは最後にこんなアドバイスをしてくれました。
東京TMSクリニック 田中奏多医師
日本人というのはほんとうに真面目な性格で80%の力でやっているつもりでも、いつのまにか自分の力が振り切れて120%で頑張ってしまっているときがあります。特に大きく環境が変わったときには、3週間ぐらいは力を抜いて頑張りすぎないでください。

いまは頑張りすぎないで

オンラインばかりで学生生活を十分に楽しめていないことを少し悔やんでいた後輩。

サークル活動で会った新入生が最初から対面の学生生活を送ることができてうらやましいと話していたことが印象的でした。

コロナ禍3回目の春は、今まであったさまざまな制約が少し和らいだ初めての新年度です。

新入生や新入社員だけではなく、皆さん、この春、ついつい頑張りすぎていませんか。

私も息切れしないように、日々を楽しみたいと思いました。