JR東日本も地方路線の収支公表を検討 路線の存廃など議論へ

存続が危ぶまれる全国の地方鉄道の在り方を議論する国の検討会で、JR西日本が今月、赤字の地方路線について線区ごとの収支を初めて公表したのに続いて、JR東日本も管内路線の収支の公表を検討する考えを示しました。
鉄道事業者側が厳しい経営事情を示したうえで、路線を維持すべきか、廃線やバスなどへの転換を図るべきか、議論していく見通しです。

18日の検討会には、国土交通省と鉄道事業者の幹部や有識者などおよそ20人が出席し、今後、議論すべき論点を整理しました。

この中で、出席者からは地方の赤字路線についてこれまで議論を避けてきたとして「今回議論しなければ鉄道が大変なことになる」、「路線をこのまますべて残すことは次の世代に無責任になる」などといった意見が出されました。

また、18日の検討会では、JR西日本が今月、赤字の地方路線について線区ごとの収支を初めて公表したことを念頭に、JR東日本の幹部が「収支を出すと一気にインパクトが出てくる。建設的な議論の材料として提供できれば、公表の検討はしていきたい」と述べ、管内路線の収支の公表を検討する考えを示しました。

そのうえで、出席者からは鉄道事業者側が厳しい経営事情を示したうえで沿線自治体側からも地域での鉄道の必要性について丁寧に意見を聞き取り、路線を維持すべきか、廃線やバスなどへの転換を図るべきか、議論していくべきだという意見が出されました。

座長を務める東京女子大学の竹内健蔵教授は「鉄道やそれ以外も含めて最善の方策を選び、地域の足をしっかり確保していけるよう議論を深めていきたい」と話していました。

国土交通省の検討会は、ことし7月をめどに方向性を取りまとめるとしています。

JR西日本の収支公表 沿線自治体からさまざまな反応

JR西日本は今月11日、1キロ当たり一日に平均何人を運んだかを示す「輸送密度」が2000人に満たない近畿・中国・北陸の30の地方路線について、線区ごとの収支の状況を初めて公表しました。

これに対し沿線の自治体からは、JRの厳しい経営事情に理解を示す一方、廃線を視野に入れた公表ではないかと批判するなど、さまざまな反応が出ています。

岡山県の伊原木知事は「収益の高い“ドル箱路線”で利用者が少ない路線を補填(ほてん)していると聞いていたが、採算がとれるギリギリの数字よりもはるかに低い数字だと感じた」と述べ、JRの経営は厳しさを増しているという認識を示しました。

一方、広島県の湯崎知事は「株主に対する責任があるという話もあるが、それを追求していけば、極論を言えば赤字路線はすべて廃止すべきということになる。どういった基準で考えていくのかが不明確だ」などと批判しています。

会社は、具体的な収支を公表することで、沿線自治体などと課題を共有したいとしていて、バス路線への転換なども含めて今後の在り方についての議論を加速させたいとしています。

JR東日本 首都圏でも郊外路線では厳しい収支も

JR東日本はこれまで、路線ごとの収支は公表していませんが、運行する首都圏の路線では、利用者が多い山手線や埼京線などだけでなく、通学・通勤以外は利用者が少なく、収支が厳しいとみられる郊外の路線も抱えています。
このうち、JR八高線は、1キロ当たり一日平均何人の利用客が乗っているかを示す「輸送密度」が、都内の八王子駅の近くが2万人以上に上る一方、埼玉県日高市の高麗川駅より北の群馬県高崎市に向かう60キロの区間では、10分の1以下のおよそ1600人になります。

国鉄時代に「適切な措置を講じたとしても収支の均衡が困難」と判断された状況は今も変わらず、JR東日本は、将来にわたって路線を維持していくためには、日々のコストを下げることが必要だとしています。

八高線を利用している68歳の男性は「高齢者は病院や買い物に行く時に必要になるので、1時間に1本でも2時間でも1本でもあったほうがよいとみんな言っています。ないと困る路線です」と話していました。

また、20歳の大学生は「本数が多くないため、他の路線で通学路を組んでいるので、新潟にスキーに行く時など半年に1回ぐらいしか使いません。地元としては、たまに使うのであればありがたく、なかったらさみしいという存在だと思います」と話していました。

首都圏郊外のJR路線 新システム導入でコスト抑える取り組みも

利用者の少ない首都圏郊外のJRの路線では、新たなシステムを導入して人手やコストを抑えて路線を維持していこうという取り組みも始まっています。

JR八高線は、埼玉県から群馬県にかけての60キロの区間が首都圏のJRの路線の中でも特に利用者が少なく、路線を維持していくためには人手やコストを抑えることが課題となっています。

特に踏切の遮断機の上げ下げや列車の速度制御に使われてきた沿線のケーブルやセンサーなどの設備は、現場での定期的な点検や修理などが必要なため、人手やコストの面で大きな負担となっていました。
そこで、JR東日本は人工衛星によって列車の位置を把握し、情報を携帯電話会社の無線通信網で指令室に伝えて踏切の操作や列車の制御を行うシステムの導入を検討しています。

このシステムはケーブルやセンサーなどを必要とせず、踏切などの維持管理コストを3分の1ほど削減できるほか将来的には人員も減らせる見込みだということで、JRは再来年度以降の導入を目指しています。

全国の地方鉄道では利用が少ない一方でコストがかさんで採算が取れない赤字路線が数多くあり、廃線となるケースも出ていて新たなシステムの導入は人手やコストをかけずに路線を維持する試みとして注目されます。

新システムとは

全国のほとんどの鉄道は、列車の位置を沿線に設置したセンサーで感知して安全を確保する仕組みで運行しています。

この仕組みは数十年以上、変わらなかったことから、新しいシステムの導入は鉄道の歴史の中で、大きな転換点となる可能性があります。

新しいシステムではこのセンサーを無くし、人工衛星で上空から複数の列車の位置や速度を把握し続け、その情報を携帯電話会社の無線網で1秒ごとに指令室に送ります。

指令室では、踏切を動作させるほか、列車に危険が発生じた場合、自動で非常ブレーキを作動させるということです。

現在、安全性に関する試験が繰り返されていて、運行本数が少ない一方で、日常的な沿線の点検や人員の確保が負担になっている地方路線を中心に、JR東日本の在来線の3分の1で導入が検討されているということです。

JR東日本電気ネットワーク部の斎藤祐樹担当部長は「人口減少が進む中では、列車の運行を維持するために、設備をスリムにして、コストがかからないシステムを作っていかなければならない」と話しています。