「コロナ後遺症」相談相次ぐ 実態と影響は? 厚労省が調査開始

新型コロナウイルスの第6波は感染のピークを越えていますが、医療機関にはオミクロン株に感染したあとの後遺症とみられる症状に悩む患者の相談が相次いでいます。
厚生労働省は今月から新たに後遺症の実態と影響を把握する調査を始めています。

オミクロン株の感染が拡大した第6波では、先月末までに全国でおよそ460万人が感染し、専門の外来を設けている医療機関には味覚や嗅覚の異常のほか、けん怠感や集中力の低下などの症状に悩む患者が相次いで相談に訪れています。

こうした中、厚生労働省は後遺症の実態の把握と新型コロナが医療態勢に与える影響を調べるため、今月から2億円の予算をかけて調査を始めています。

具体的には、国の研究班が今後の流行も踏まえて、オミクロン株の感染後にどんな症状が続いているかや引き起こされる合併症、それにその要因などについて調査するということです。

また厚生労働省は今後、最新の知見をもとに、後遺症とみられる患者の診察やリハビリの方法などを示した手引きを改訂し、症状に悩む人が地域の医療機関で迅速に治療を受けられるようにしていきたいとしています。

厚生労働省は「新型コロナの後遺症についてはまだ明らかになっていないことも多いが、病態の把握とともに、適切な医療につなげられるよう取り組んでいきたい」としています。

専門家 患者数多く、後遺症出る人が増える可能性指摘

ことし3月まで新型コロナの後遺症を調べる国の研究班の代表を務めた高知大学医学部の横山彰仁教授は、オミクロン株に感染したあとで出る後遺症について、まだ詳しくは分かっていないものの、オミクロン株に感染した人はそれ以前に比べて格段に多いため、後遺症を訴える人も増えるおそれがあるとしています。

横山教授によりますと、新型コロナに感染したあとに出る後遺症は、コロナで息切れや筋力低下など重症になった人に出やすいものと、けん怠感や嗅覚・味覚異常など重症でも軽症でも出るものがあるということです。

新型コロナの後遺症についてWHO=世界保健機関は「発症から3か月後から始まり、少なくとも2か月は続く症状」としていて、オミクロン株の感染後に出る後遺症についてはまだ詳しく分かっていませんが、横山教授は「後遺症が出る頻度は、軽症が多いとされるオミクロン株では低くなっていると考えられるが、患者の数は極めて多いので、後遺症が出る人も非常に多くなるのではないか。実際に後遺症に苦しんでいる人も出ていて軽視はできない」と話しています。

また新型コロナへの感染では重症化しにくい、若い世代でも後遺症がみられることについて、「オミクロン株は比較的若い人でも多くの人が感染し、現役世代にも非常に大きな影響を及ぼしている。後遺症の症状を登録して実態を把握し、起きる仕組みをできるだけ早く明らかにするための研究を進めることが重要だ。ワクチンを打つと後遺症の頻度が減るという報告が海外から出ているので、ワクチン接種も重要だ」と話しています。

後遺症の専門外来に現役世代の患者 日常生活に影響出るケースも

新型コロナウイルスの後遺症の専門外来を設けている医療機関にはオミクロン株が拡大した第6波で感染したあと、後遺症とみられる症状に悩むいわゆる現役世代の患者が相次いで診察に訪れています。

福岡市博多区のみらいクリニックは新型コロナの後遺症外来を設けていて、この1年間でおよそ250人の患者が診察に訪れています。

このうちオミクロン株が拡大した第6波で感染して後遺症の疑いがあると診断された患者は37人にのぼり、15日も新たに2人の患者が診察に訪れていました。

40代の女性は1月下旬に感染したあとに全身のけん怠感が続いているということで「喉と鼻の奥のところにずっと何かが残っているような感じで、息苦しく夜中にパニックになったり、集中力がなかったりします。1日働けずに午前中で帰らせてもらうこともありました。不安で、わらをもつかむ思いで来ました」と話していました。

クリニックによりますと、患者の主な症状は鼻とのどの奥の上咽頭と呼ばれる部分が炎症を起こし、全身のけん怠感を訴える患者が多いほか、集中力の低下やめまい、頭痛などを訴えるケースもあるということです。

年齢層は中学生から高齢者まで幅広く、平均年齢は43歳といわゆる現役世代が多いほか、症状によっては仕事を休職や退職せざるをえないなど日常生活に影響が出ているケースもあるということです。

また、コロナに感染した時の症状が軽い場合でも、感染後に後遺症とみられる症状が重く、治療が長引くこともあるということです。
みらいクリニックの今井一彰 院長は「働き盛りの患者が仕事ができない状態が続く不安や恐怖は想像するにはあまりある。元気に過ごしていた人が突然動けなくなってサボってんじゃないかと誹謗中傷されることもある。自分を責める人もいるが、誰にでも起こる病態なので、一人だけで悩まないよう心にとめてほしい。早く治療すればよくなることも多いので、できれば積極的に医療機関にかかってほしい」と呼びかけています。

症状に悩み仕事を辞めた女性「治るメドわからず 不安」

新型コロナウイルスの後遺症とみられる症状によって仕事を辞めざるを得なかった人もいます。

福岡県内に住む40代の女性は、シングルマザーとして小学生と高校生の2人の子どもを育てながら保育園で職員として勤務していました。

そして、オミクロン株の感染が拡大していたことし2月、園児や職員の間で感染が広がり、自分自身も感染していることがわかりました。

新型コロナのワクチンは2回接種していたということです。

当初は、悪寒を感じたあとおよそ39度の発熱と頭痛やのどの痛みなどの症状で軽症と判断され、2週間ほど自宅で療養していました。

女性は「オミクロン株はそれほど重症化するとは聞いていなかったですし、のどや関節の痛み、せきなどの症状からインフルエンザ程度かなと思っていました」と話していました。

しかし、療養を終えて職場に復帰したあとも頭痛やのどの違和感などが続いたということです。

その後、状態は悪化し、けん怠感と強い耳鳴りにも悩まされるようになり、夜中に何度も目が覚め、十分な睡眠がとれない状態に陥りました。

痛み止めの薬などを飲みながら仕事を続けていましたが、体力的に限界を迎え、悩んだ末に、これ以上職場に迷惑をかけるわけにはいかないと先月末で退職する決断をしました。

いまは、週に1回後遺症の専門外来に通い、ふだんの家事は2人の子どもが手伝ってくれていますが、収入が絶たれ、今後の生活に不安をもっているということです。

女性は「買い物に行っても帰ったらぐったりすることがあります。まわりからは怠けていないで我慢しなよと言われたり、子どもたちにもお母さんゴロゴロしているだけでしょと思われたり、いつまで休んだら治るというメドがわからないことがいちばん不安です。後遺症にはどういう症状があって、どう対応したらいいのか、国や自治体などどこに問い合わせたら正しい情報が手に入るのかわかるようになってほしい」と話していました。