ロシア軍 旗艦「モスクワ」が沈没 米報道官「戦力に影響」

ロシア軍によるウクライナ東部での攻勢が続く中、ロシア国防省は黒海艦隊の旗艦「モスクワ」が火災のあと沈没したと発表しました。
アメリカ国防総省の報道官は「ウクライナ側がミサイルで攻撃したというのは妥当で、ありうることだ」と述べたうえで、今後のロシア軍の戦力に影響を与えるとの見方を示しました。

ウクライナでは、ロシア軍が東部で攻勢を強めていて、要衝マリウポリではウクライナ側もこれに抗戦し、激しい戦闘になっているとみられます。

こうした中、ロシア国防省は14日、ロシア海軍の黒海艦隊の旗艦「モスクワ」について、「火災で船体が損傷し、港にえい航される途中だったが、船は安定性を失い、海が荒れる中で沈没した」と発表しました。

沈没の詳しいいきさつはわかっていませんが、ウクライナ側は、「ミサイル攻撃で深刻な被害を与えた」と主張しています。

これについて、アメリカ国防総省のカービー報道官は14日、出演したCNNテレビで、「何が原因で沈没したのか独自に確認することはできないが、ウクライナ側がミサイルで攻撃したというのはもちろん妥当で、ありうることだ」と述べたうえで、「黒海艦隊にとっては大きな打撃だ。500人近い乗員を乗せた非常に有能な巡洋艦であり、ロシア軍の戦力に影響を与えるだろう」と指摘しました。

近くロシア軍がウクライナ東部での大規模な攻撃を行う可能性が指摘される中、司令塔機能を担う旗艦の沈没はロシア側の軍事作戦に影響を与えるものとみられています。

米 バイデン大統領 政府高官派遣を検討

一方で、アメリカ国防総省の高官は、14日、ロシア軍が引き続きウクライナ東部で激しい攻撃を行うための態勢を整えているとの分析を明らかにしました。

具体的には、ロシア軍の部隊への補給の拠点になっているとみられるロシア西部の都市にはヘリコプターなど追加の装備品が到着しているということです。

この高官は、「ロシア軍は今後2週間ほどでウクライナ東部で何らかの具体的な目標を達成したいと考えているとみられる」と指摘しました。

こうした中、アメリカのバイデン大統領は14日、ウクライナへの政府高官の派遣について、「いま検討しているところだ」と述べ、アメリカの複数の主要メディアはブリンケン国務長官やオースティン国防長官の派遣の可能性を伝えています。

ロシア軍がウクライナ東部への大規模な攻撃を行う懸念が高まる中、アメリカとしてもウクライナを支援する姿勢を改めて強く示したいものとみられ、今後、状況を慎重に見極めながら判断する見通しです。

松野官房長官 “戦況に及ぼす影響含め注視”

松野官房長官は、午後の記者会見で「沈没の経緯やロシア側の軍事行動に及ぼす影響をコメントすることは差し控えたいが、ウクライナ南部正面における今後の戦況に及ぼす影響も含め、ウクライナをめぐる情勢については、引き続き重大な懸念を持って注視しており、G7=主要7か国をはじめとする関係国と緊密に連携して対応していきたい」と述べました。

海上自衛隊 元海将「沈没でロシア海軍の士気低下」

海上自衛隊で司令官を務めた元海将の香田洋二さんは、黒海に展開しているロシアの艦隊の主な任務は、クリミア半島からウクライナ東部にかけての地域への海上からの物資輸送や艦砲やミサイル攻撃による地上作戦の支援で、沈没した「モスクワ」は、ミサイル攻撃からの防御を担うとともに、作戦全般を指揮する艦艇だったと指摘しています。

そのうえで、今後の影響について「旗艦=フラッグシップは艦隊、あるいは海軍全体にとって象徴的な船であり、いとも簡単に沈没してしまったことは、ロシア海軍の士気を大きく下げるだろう。ウクライナ側からのミサイル攻撃に対する防御の態勢をどうつくり直し、士気を維持するか、ロシアとしては新たな難題を抱え込んだと言えるのではないか」と話しています。

また、沈没の原因については「艦内で火災が起き、弾薬庫にまで燃え広がったケースと、ウクライナ側のミサイルが命中して爆発したケースが考えられるが、軍艦は火災に対しては二重三重の対策が講じられている。一方で、ミサイルが命中すると、対処する間もなく弾薬が爆発して手がつけられなくなり、大きな被害が出る」と話し、ミサイルが命中した可能性が高いという認識を示しました。