【詳しく】“ライブカメラ”から見えるウクライナの今とは?

今も続く、ロシア軍によるウクライナへの侵攻。激しい攻撃で破壊された街の様子が連日伝えられています。実は、ウクライナ国内には、数多くの「ライブカメラ」が設置され、街の様子をリアルタイムで映し出していました。今、その「ライブカメラ」はどうなっているのか?今も見ることができるのか?調べてみました。

(国際部記者 田辺幹夫、ネットワーク報道部 斉藤直哉)

そもそも「ライブカメラ」ってどんなもの?

ライブカメラとは、防犯カメラのような街なかの様子を映すカメラです。インターネットにつながっていて、世界中の人たちが自由にその映像を見ることができます。

ユーチューブなどの動画共有サイトには、誰でも見ることができるライブカメラの映像が数多く公開されています。

日本国内にもたくさんのライブカメラがあって、例えば、桜の名所にあるライブカメラを通して、見頃を確認したり、観光地の天気や混雑状況を確かめたりすることができます。

ウクライナにも設置されているの?

ウクライナ国内にも、ロシアによる軍事侵攻が行われる前は、首都キーウをはじめ、各地にライブカメラがありました。

世界のライブカメラの映像をまとめたサイトを運営する、赤倉広樹さんによりますと、ウクライナ国内のライブカメラは、地元の企業が運営しているものが多く、100か所以上に設置されていたということです。

ウクライナ国内のライブカメラは、何を映していた?

いくつかのライブカメラの映像を確認したところ、首都キーウのライブカメラには、軍事侵攻が起きた直後の2月下旬の未明、砲撃によるとみられる光が遠くの空を照らす映像がありました。
また、南東部にあるザポリージャ原子力発電所が公開した動画には、攻撃を受けたときの様子が記録されていました。この映像は、ニュースを通して世界各国で報じられ、軍事侵攻の生々しい実態を伝えました。

今も見ることができるの?

実は、ほとんどのライブカメラは、リアルタイムの配信をやめています。赤倉さんによりますと、侵攻が始まった2月24日の数日前から、一部のカメラが配信を止め始めたということです。

そして、侵攻のあとは、次々に配信されなくなり、3月上旬になるとほとんどの配信を見ることができなくなりました。中には、ウクライナ国内のライブカメラの管理者から「配信をやめるので、サイトからも削除してほしい」というメールが来たケースもあったそうです。

赤倉さんは、通信状況が悪化したことや、現地の情報をロシア側に知られたくないという事情もあったのではないかと話していました。

残されたライブカメラはあるの?

わずかに残されているものもあります。

その1つに、キーウ中心部にある修道院がライブ配信する映像があります。朝と夕方になると、祈りをささげに訪れる人の様子が映し出されます。配信を見ている人の数も表示されていますが、ふだん見ている人は数人ほどなのに対して、祈りをささげる時間になると50人ほどに増えます。

困難な状況の中、祈りをささげに行くことができない人たちの心の支えになっているのではないかと感じました。

この配信も、今はやや不安定になっています。

ほかに国内の様子がうかがえるものは?

意外なものが映っていることもありました。

隣国ベラルーシとの国境付近の道路を映しているとされるライブカメラの映像には、広い道路に大きなコンクリートのようなものが積みあげられ、バリケードのようにも見えました。

真意はわかりませんが、バリケードをライブカメラで監視しようとしていたのかもしれません。
また、東部ハルキウを映しているとされる映像には、4月に入ってから砲撃とみられる光の筋や、何かが燃え上がる様子が映っていて、今も続く軍事侵攻の緊迫した状況が伝わってきました。

NHKでは、このほかにもウクライナ国内に残されているライブカメラを捜し出し、定点観測を始めています。

こうしたライブカメラが映し出す現地の状況を分析し、ウクライナで今何が起きているのかを、伝えていきたいと思います。