ロシア 黒海艦隊の旗艦 ミサイル攻撃で深刻な被害か

ロシア軍がウクライナ東部を中心に攻勢を強め、要衝マリウポリでは激しい戦闘が続いています。
一方、ウクライナ側は、ロシア海軍の黒海艦隊の旗艦をミサイルで攻撃し、大きな打撃を与えたとしていて、ロシアの今後の作戦にも影響が出る可能性があるとみられます。

ロシア国防省は14日、ウクライナ東部のドネツク州や南部のオデーサ州などでミサイル攻撃を続け、ウクライナ軍の武器庫などを破壊したと発表しました。

北東部スムイ州のジビツキー知事は「これまでに民間人100人以上が殺害され、犠牲者の数は増え続けている」と、13日にSNSのテレグラムで明らかにしました。

なかには両手を縛られたり、拷問を受けた痕があったりしたほか、頭を銃で撃たれた犠牲者の遺体も見つかったということです。

また、東部の要衝マリウポリでは、激しい戦闘が続き、ロシア国防省は14日、1100人を超えるウクライナ軍の兵士が武器を捨てて投降したと主張しました。

ウクライナのメディアによりますと、マリウポリの防衛にあたる部隊の指揮官の1人は、一部の兵士が投降した事実を認めたということです。

マリウポリの戦況について、アメリカ国防総省の高官は13日、ロシアの激しい攻撃にウクライナ側が応戦しているとの認識を示しました。

またイギリス国防省も14日「ウクライナの継続的な防衛によって、ロシアはかなり多くの軍と装備を必要としている」と分析しています。

一方、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は13日の分析で、ロシア軍が今後1週間でマリウポリを掌握する可能性が高いと指摘しています。
このシンクタンクの分析によりますと、ロシア軍は12日の時点で市の中心部の多くを支配し、13日にはさらに支配地域を広げてウクライナ側を追い込んでいます。
ウクライナ側の激しい抵抗が続くなか、南部オデーサ州の知事は14日、ロシア海軍の黒海艦隊の旗艦「モスクワ」に対して「ミサイル攻撃で深刻な被害を与えた」とSNSに投稿しました。

ロシア国防省によりますと巡洋艦「モスクワ」の乗組員は最大で680人、巡航ミサイル16発や魚雷などを搭載できるとしていて、ロシア海軍の主力と位置づけられています。

ロシア国防省は、国営メディアを通じて「巡洋艦『モスクワ』が、火災の結果、弾薬が爆発し、深刻な損傷を受けた。乗組員は避難した」と伝えていますが、一方で「火災の原因は究明中だ」として、ウクライナ軍の攻撃によるものかどうかは言及していません。

その後、国防省は「巡洋艦はまだ浮かんでいる。艦上の火災は収まり、主要なミサイルシステムに被害はない」と説明しました。

ロシア軍はウクライナ南部の黒海沿岸での支配地域の拡大を目指し、黒海艦隊はこれまで、巡航ミサイルで海上からの攻撃を行ってきましたが、艦隊の象徴ともいえる旗艦が大きな被害を受けたとすれば、今後の作戦にも影響が出る可能性があるとみられます。

黒海艦隊の旗艦「モスクワ」とは

ミサイル巡洋艦「モスクワ」は、ロシア海軍の黒海艦隊の旗艦です。

ロシア国防省によりますと1983年に就役し、ソビエト崩壊後の1999年、ウクライナ南部クリミアにある軍港セバストポリを拠点とするロシア黒海艦隊の旗艦となりました。

乗組員は最大680人で「バザリト」と呼ばれる巡航ミサイル16発や魚雷などを搭載できるということです。

2008年のロシアによるジョージアへの軍事侵攻のほか、2015年にロシアが軍事介入したシリア内戦にも派遣されるなど、ロシア海軍の主力と位置づけられています。