国際刑事裁判所検察官 ウクライナ ブチャ視察 戦争犯罪捜査へ

ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナの状況について捜査している国際刑事裁判所のカーン主任検察官が、多くの市民が殺害されているのが見つかった首都キーウ近郊のブチャを訪れ、ウクライナの検察当局と協力して戦争犯罪などの本格的な捜査に乗り出す姿勢を示しました。

国際刑事裁判所のカーン主任検察官は13日、ロシア軍の撤退後、多くの市民が殺害されているのが見つかったブチャを訪れました。

記者団の取材に応じたカーン主任検察官は「私がここを訪れたのは国際刑事裁判所が管轄する犯罪が行われたと信じるに足る合理的な根拠があるからだ」と述べ、戦争犯罪や人道に対する罪の本格的な捜査に乗り出す姿勢を示しました。

そのうえでカーン主任検察官は、国際刑事裁判所としても法医学の専門家などからなるチームを現地で捜査にあたらせることを明らかにしました。

また国際刑事裁判所によりますと、カーン主任検察官は13日、首都キーウも訪れてウクライナのベネディクトワ検事総長と会談し、捜査に向け協力していくことで合意したということで、今後、戦争犯罪などの責任の追及に向けた動きが活発化するものとみられます。

国際刑事裁判所 元裁判官「ウクライナ側と協力関係構築 意図か」

国際刑事裁判所の主任検察官が、多くの市民が殺害されているのが見つかったブチャを訪れたことについて、国際刑事裁判所で9年間、裁判官を務めた中央大学法学部特任教授の尾崎久仁子氏は「捜査を進めるには、ウクライナ側との意思疎通が非常に重要になってくるため、捜査官をどこに立ち入らせるかなど協力関係をどう築いていくかについて、トップレベルで打ち合わせを行うことが考えられる」と述べました。

一方で主任検察官が早い段階で現地を訪れたことについては「国際社会が見ているため、国際刑事裁判所がその負託に一生懸命応えようとしていることをアピールする意味合いもあると思う」と述べました。

また、今後の捜査のポイントについては「『戦争犯罪』であるためには犠牲者が文民でなければならないが、戦闘員ではないことをどう証明するかのほか、『人道に対する犯罪』に該当する可能性があるので、規模や、組織性をどう証明するかだ。保全が難しい証拠もあるので、将来、裁判に使えるようなものをきちんと確保するということが非常に大事だ」と指摘しました。

捜査にどれくらいの時間がかかるかについては「誰をターゲットにして捜査するかにもよるが、かなり上層部の責任のある人をターゲットにするのであればかなり時間がかかる可能性はある」と述べました。