ピスタチオブーム なんでなん?

ピスタチオブーム なんでなん?
チョコにプリン、クッキーにフィナンシェ…
最近、コンビニやスーパーなど至るところでピスタチオ商品を目にしませんか?

いつのまにか私たちの周りにあふれるピスタチオ商品。
広まった理由を調べていくと、今の時代ならではのブームの裏側が見えてきました。
(大阪放送局 なんでなん取材班)

ピスタチオ専門店も登場

「食の阪神」として親しまれる大阪の「阪神梅田本店」の地下一階。
長さおよそ100mのフロアの洋菓子店の多くがピスタチオを使ったスイーツを販売しています。
今月6日には、ピスタチオ専門店がこの店としては初の常設店をオープン。店頭にはフィナンシェやブラウニーなどの焼き菓子からピスタチオカレーまで、さまざまな商品が並んでいます。

「もともとお酒のおつまみとして好きだったけれど、スイーツにはまった」

「ピスタチオのお菓子を食べたときの衝撃が忘れられなくて、ずっと追い求めています」

ピスタチオブームいつから?

ピスタチオのお菓子やアイスなどの商品は、コンビニやスーパーなど身近なところにも。いったい、いつごろから広まってきたのでしょうか。

こちらは民間の調査会社が、全国約1200店舗のスーパーのレジから収集したデータです。
「ピスタチオ」という言葉が使われた商品の売上額は、2020年には前の年と比べおよそ2倍に。2021年には、さらにそこから6倍と急上昇しています。
グーグルの検索でも「ピスタチオ」という言葉の検索数は、2018年から徐々に増え出していて、スーパーでの商品の売り上げと同じように、2020年から大きく伸びています。

ナッツ協会会長は「むき身」に注目

ピスタチオ人気のきっかけは何か?
それを探るため、日本ナッツ協会の中島洋人会長を訪ねました。

会長は、気になる色のネクタイをしていました。
記者「そのネクタイは?」
会長「ピスタチオグリーンにしてみました」
そして会長によるピスタチオ講座が始まりました。

ピスタチオは、アメリカやイランなどからの輸入に頼っています。
主に酒のおつまみなどで食べられる「殻付き」と、殻を外した「むき身」に分かれています。
財務省の貿易統計によると、2021年の「むき身」のピスタチオの輸入量は1062トンと、2020年の2倍以上に急拡大。主に加工用に使われ、スイーツなどの需要が高いといいます。
東洋ナッツ食品 中島洋人社長
「これがいわゆる、ピスタチオブームと言われているものの数字的な正体です。洋酒のおつまみに殻をむいて食べるというイメージが強いんですが、アイスクリームだったり、チョコレートだったり、焼き菓子であったり、ここ数年はスイーツとしてのピスタチオが大注目です」
ピスタチオは、実はナッツの中では高級品。収穫や出荷までの工程に手間がかかり、供給量も少ないため、例えばアーモンドと比べると、2倍近く高い時もあるといいます。

ペースト状ピスタチオ 想定外のヒット

高いにもかかわらずピスタチオはなぜ売れたのか?

グーグルでこの5年間の検索状況を調べると、とくに注目されていた関連ワードに「ピスタチオスプレッド」という名前がありました。
ピスタチオをペースト状に加工し、ジャムやピーナツバターのようにパンに塗って食べることを想定して作られた商品でした。

1個およそ1000円と決して安くはない商品ですが、2年前に発売されるとおよそ70万個と異例のヒットを記録。販売したスーパーも予想していなかった反響だったといいます。
成城石井 商品本部 濱田智之 本部長代行
「発売開始当時、ほかのナッツと比べるとピスタチオはまだ知名度がなかったのと、単価が高いため、あくまでほかのナッツ商品のバリエーションの1つとして提案しました。ここまでの数量が継続して売れ続けているというのは記憶にないぐらいで、こちらとしても非常に驚いています」
販売が始まった2年前の4月は、ちょうど全国で初めて緊急事態宣言が出された時期でした。コロナ禍の巣ごもり需要で、おうち時間を優雅に過ごそうという人たちの需要と合致しました。
さらにSNSが人気を後押しします。ペースト状のピスタチオを使ったアレンジレシピが次々と投稿。
アイスの上にかけたり、ホットミルクに入れたり…
スーパー側が想定していなかった食べ方が、SNSで一気に広がりました。
成城石井 商品本部 濱田 智之 本部長代行
「商品を販売する時に、われわれとしても食べ方の提案は行っていますが、消費者の方の食べ方のアイデアが1つ投稿されると、さらにそのアレンジが増えていって、SNSでどんどん拡散していくことを実感しました」
ピスタチオはパンだけでなく、スイーツとも相性がいい。このスーパーではピスタチオ商品を当初の4倍の35品へと大幅に増やしました。

各社もピスタチオ商品の開発に次々と乗り出しています。

なぜピスタチオを投稿したがるのか?

ピスタチオブームを支えるSNS。なぜみんなピスタチオを投稿したくなるのでしょうのか?

調べていくと、500個以上のピスタチオ商品を投稿しているインスタグラマーを見つけました。
その名も「ピスタチオ警察」。おいしいピスタチオ商品は「心を奪った罪なやつ」として、“逮捕”しています。

「ピスタチオ警察」は大阪の女性でした。
ピスタチオスイーツの魅力、それはナッツとしての香ばしさや甘さといった味はもちろん、色がポイントだといいます。

今までスイーツと言えば、イチゴなどベリー系の赤や、柑橘類のオレンジや黄色、それにクリームの白やチョコの茶色が中心でした。

しかしピスタチオの登場で、それまで抹茶の独壇場だった緑のポジションを確保。
緑色とほかの色とのコントラストが多くのファンを引き付けています。

また、抹茶がフルーツの酸味など洋菓子と合わない部分もあるという弱点も補えるといいます。
ピスタチオ警察
「おいしいナッツはいっぱいありますけど、どれも茶系の色味ですよね。ピスタチオだけこんなに鮮やかなグリーンで、見た目もすごく素敵だなって思います。投稿では、特にスイーツの断面を写すと緑と赤などのコントラストが映えるということで、『きれいな綺麗、萌え断』ってコメントいただいたりして盛り上がっています」

鮮やかなグリーン出すのも楽じゃない

ただ、その鮮やかなグリーンを出すのも簡単ではありません。

ピスタチオを使ったケーキが人気のパティシエ、橋本史明さん。

店で使うピスタチオは、ローストすることで青臭さが飛んで、香ばしさや甘さが引き立つようになります。しかしローストすると茶色っぽくなってしまいます。
そこで橋本さんは緑色を出すため、ローストしたピスタチオに色合い鮮やかな生のピスタチオを配合。味と色見のバランスを追求しています。
SoLiLite 橋本史明オーナー
「ローストしたピスタチオだけでつくった方が味はいいのですが、やはり商品をショーケースに並べた時の『緑色』は、目を引く華やかさを演出してくれるので重宝しています。いろいろ試行錯誤してきて、生とローストをそれぞれ半分ずつ入れてペーストをつくることで、味と色味を最大化できると気づきました」

ピスタチオブームいつまで?

ピスタチオブームの背景を探ると、コロナ禍の巣ごもり需要や、SNSでの拡散、それを支えるSNS映えする鮮やかな緑色といった特徴が見えてきました。

また、その人気はピスタチオの輸入量も、食べ方も、パティシエの作業工程までも変えていました。

消費トレンドを分析している専門家は、ピスタチオはもはや一過性のブームではなく、定番化していると指摘しています。

ただ気になる点も。

ピスタチオは輸入に頼っているため、ウクライナ情勢などの影響による原油価格の高騰や、世界的なコンテナ不足の影響で、値上がりが気になります。

またナッツメーカーによると、1日の摂取量の目安はだいたい40粒。これで150キロカロリーほどだそうです。食べ過ぎには気をつけて、みなさんも素敵なピスタチオライフを!

身近な疑問 教えてください

「なんでこうなん?」「関西だけ?」
ネットで調べてもわからない疑問はありませんか?
NHK大阪放送局の取材班が徹底リサーチ。皆さんの“なんで?”に応えます!
下のリンク先の投稿フォームから皆さんの身近な疑問をお寄せください。
大阪放送局 記者 小野明良
アメリカと並ぶ2大産地イランへの留学を機に10年ほど前からピスタチオにはまった“古参ピスタチオファン”。自宅にはナッツとスイーツを常に確保。新商品はだいたい食べてます。
大阪放送局 ディレクター 加藤弘斗
ピスタチオは“お酒のつまみ”程度の認識で取材を開始。小野記者のあまりある“ピスタチオ愛”にはついていけず、冷静に一歩引いて取材しました。