専門家「ロシアに向かい合う側エスカレートさせてはならない」

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続き、核兵器や生物・化学兵器を使用する懸念が強まっている中、国際政治学の専門家で東京大学の藤原帰一客員教授がNHKのインタビューに応じ「対抗して核兵器の使用も辞さないという姿勢を示すことは決して望ましくはなく、ロシアに向かい合う側が戦争をエスカレートさせてはならない」と訴えました。

藤原帰一さんは長年、平和構築について研究してきた国際政治学者で、東京大学を定年退職したあと、今月から客員教授を務めていて、13日、NHKのインタビューに応じました。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の現状について、藤原客員教授は「古典的な侵略戦争と呼ぶほかない。当初想定していたキーウの攻略には失敗したが『正しい戦争であり 戦いに勝つ』というプーチン政権の意志は揺らいでいない。東部地域での戦闘のこう着状態が続き、多くの犠牲が出る一方で、自分たちの立場を強めようと、戦争がむしろ続いていく展開が、可能性としては極めて高いシナリオだ」と指摘しました。

また、ロシアが生物・化学兵器や核兵器を使用する可能性について「長期間の戦闘でロシア軍の兵士の士気が下がっている中で、相手に打撃を与える大量破壊兵器を使用することは考えられる。多くの市民がロシア軍によって殺害されたことを考えると、抑制がなくなっているおそれがある」と懸念を示しました。

そのうえで、西側諸国の対応については「大量破壊兵器が使用された場合に反撃として同様に使用することは、ウクライナを救うために正当と考えるかもしれないが、戦争の規模を広げ、悲劇を拡大させる。核兵器の使用も辞さないという姿勢を示すことは決して望ましくはなく、ロシアに向かい合う側が戦争をエスカレートさせてはならない」と訴えました。

そして、今後の見通しについて「容易な出口はないと思う。平和を作るのも壊すのも軍事力だという二面性がある中で、模索を続けることになる。現在プーチン政権を支持している国民が戦争の実態を知ったときに、新しい政府が生まれる可能性はあるだろう。ただ、厳しい言い方をすれば、新たな政府が生まれるまで残酷な暴力が続くことになるのだろう」という見方を示しました。