円相場 1ドル=126円台まで値下がり 約20年ぶりの円安水準に

13日の外国為替市場、円相場は1ドル=126円台まで値下がりし、およそ20年ぶりの円安水準となりました。

13日の外国為替市場は投資家の間で金融政策の方向性の違いから日米の金利差の拡大が改めて意識され、円を売って、より利回りが見込めるドルを買う動きが一段と強まりました。

円相場は1ドル=126円台まで値下がりし、2002年5月以来、19年11か月ぶりの円安水準となりました。

午後5時時点の円相場は、12日と比べて53銭、円安ドル高の1ドル=126円5銭から6銭となっています。

ユーロに対しては、12日と比べて18銭、円安ユーロ高の1ユーロ=136円62銭から66銭となっています。

ユーロはドルに対して1ユーロ=1.0838から39ドルでした。

市場関係者は「日銀の黒田総裁が『現在の強力な金融緩和を粘り強く続ける』などと発言したことで、日米の金融政策の違いが改めて意識された。また、イギリスで発表された先月・3月の消費者物価指数が市場予想を上回る水準となったことで、欧米でインフレを抑え込むため利上げが早まるという見方が出たことも、円を売る動きにつながった」と話しています。

鈴木財務相「急激な変化は大変に問題」

鈴木財務大臣は総理大臣官邸で記者団の取材に応じ「為替の水準については、私の不用意な発言が影響を与えてもいけないので、コメントはしないが、為替の安定は大切だ。特に急激な変化は大変に問題だと思っている。政府としてもしっかりと緊張感を持って、為替の動向について注視していきたい」と述べました。

また、「そうした考えは岸田大臣とも共有しているのか」という問いに対して、鈴木大臣は「はい」と答え、うなずきました。

日銀 黒田総裁「粘り強く緩和続ける」

日銀の黒田総裁は午後3時すぎ、東京都内で信託銀行でつくる業界団体の会合に出席し、あいさつをしました。

この中で、黒田総裁は国内の経済や物価の現状について「わが国のGDP=国内総生産は依然として感染症拡大前の水準を下回って推移している。また、足元の輸入コストの上昇に起因する物価上昇は、家計の実質所得の減少や企業収益の悪化を通じてわが国経済の下押し要因となる」と述べました。
そのうえで「このような経済・物価情勢を踏まえて、日本銀行としては現在の強力な金融緩和を粘り強く続けることで、感染症からの回復途上にある経済活動をしっかりと支え、2%の物価安定目標の持続的な実現を目指していく」と述べて、今の金融緩和策を続ける姿勢を示しました。

こうした発言は、これまで示してきた日銀の方針を改めて繰り返したものですが、市場関係者は「『強力な金融緩和を粘り強く続ける』などとした黒田総裁の発言によって、投資家の間で日米の金融政策の違いや金利差の拡大が強く意識される形となった」と話しています。

専門家「生活へのマイナスこれから目立つ」

三井住友信託銀行マーケットストラテジストの瀬良礼子さんは「輸出企業にとっては業績にプラスとなるが、日本は食糧やエネルギーを輸入に頼っており、生活へのマイナス影響もこれから目立ってくるだろう。電気やガスなど光熱費が追加で値上がりする可能性があり、ガソリンや、エネルギーを使うさまざまなサービスの価格についても、上昇圧力になる」と指摘しました。
そのうえで「コロナ前であれば、これほどの円安なら、大勢の外国人が訪れて日本経済を押し上げ、サービス業にプラスだっただろうが、コロナ禍でありサービス業を押し上げる効果は期待できない」と述べました。

今後の円相場の見通しについては「ここで止まるというよりは、もう少し円安の余地はあるかと思う。ただ、今回の円安の背景にあるアメリカの物価上昇率が今月・来月辺りでピークとなり、それと同時に利上げ観測や円安ドル高の動きも一服するのではないか」と述べました。

サイゼリヤ「全輸入食材に影響 最悪の状況」

外食チェーン・サイゼリヤの堀埜一成社長は13日の決算会見で「コロナ禍が続く中で、エネルギーや原材料価格の高騰も加わり、経営環境はこれまでにない逆風となっている。さらに円安で、すべての輸入食材の価格に影響が及ぶため、最悪の状況だ」と述べました。

そのうえで、しばらく円安傾向が続くことも想定して、輸入している食材を国産に切り替えるなどの対応を検討していく考えを明らかにしました。

吉野家「円安はトリプルパンチ」

吉野家ホールディングスの河村泰貴社長は「世界中から食材を輸入しているため、あまり過度に進んだ円安は歓迎しない。ただでさえ牛肉などの食材の価格が上がっているし、物流費や容器や袋などの包材費も上がっており、円安はトリプルパンチだ。経営への影響は小さくない」と述べました。

牛丼など商品の値上げについては「現時点で決定していることは何もないが、販売メニューの価格については常に検討している」と述べました。

酪農家「生産者はお手上げ」

原材料価格が高騰する中、酪農が盛んな茨城県小美玉市の牧場では、海外から輸入している飼料用の穀物などの値上がりで経営が圧迫されています。

この牧場では飼料用の牧草やトウモロコシなどの穀物はおよそ90%を海外から輸入しています。
中国での需要の増加などで去年ごろから値上がりし、その後も原油価格の高騰などの影響で値上がりが続いていますが、今後円安が加速することで経営状況がさらに悪化するのではないかと頭を悩ませています。

牧場を経営する宮澤智浩さんは「飼料の原料がこれだけ急激に値上がりすると、われわれ生産者はお手上げ状態です」と話していました。

地鶏 生産者「餌代は過去最高」

愛媛県の地鶏を生産する農業法人は輸入に頼る餌の価格がさらに値上がりすることに懸念を強めています。

愛媛県八幡浜市で県産ブランド地鶏の「媛っこ地鶏」をおよそ3000羽飼育している農業法人は、輸入したコーンや小麦などの「配合飼料」を年間100トンほど購入しています。
飼料の価格は、物流費の高騰や円安などを背景に値上がりが続き、今月は1トン当たりおよそ8万1000円と去年の同じ時期より20%高くなりました。

いなほ農園の井伊敏郎 農園長は「15年前に農園を開園しましたが、餌代はこれまでで最も高く、厳しい環境です。餌代を抑える工夫をしていきますが、少しでも円安が落ち着いてほしい」と話していました。

鉄鋼製品メーカー「企業努力とお客様へのお願いで」

愛知県東海市に本社を置くトヨタグループの「愛知製鋼」は自動車向けの鉄鋼製品の製造を手がけていて、原料となる「モリブデン」や「ニッケル」などを輸入しています。

会社によりますと、1円、円安が進むことで、これらの輸入原料の仕入れコストが年間およそ2億円増えるということです。
国内で調達している「鉄スクラップ」の値上がりや工場の電気料金の上昇に加えて、さらに円安の負担が重なり、厳しい経営環境になっているということです。

愛知製鋼モノづくり革新本部の安永直弘本部長は「われわれの製品で輸出するものは全体の8%しかなく、むしろ海外からいろいろなものを輸入している。企業努力と値上げといったお客様へのお願いをしながらものづくりを継続させたい」と話していました。

円相場 1ドル=90円台前半からの動き

円相場は2013年3月、日銀の黒田総裁が就任する前の時点では1ドル=90円台前半でした。

こうした中、「黒田バズーカ」と呼ばれた市場に大量の資金を供給する大規模な金融緩和策を打ち出したことをきかっけに、円相場は一転して円安方向に動きます。

2015年6月には、当時としてはおよそ12年半ぶりの水準となる1ドル=125円台まで円安ドル高が進みました。

このとき、衆議院の財務金融委員会で黒田総裁が「ここからさらに円安に振れることは、普通に考えるとなかなかありそうにない」と発言。

市場では、行き過ぎた円安へのけん制だと受け止められました。

当時、アメリカでは、景気回復を受けて、リーマンショックから続いてきたゼロ金利政策の解除が視野に入り始めていましたが、この黒田総裁の発言もあって日銀の追加の金融緩和への期待が後退し、これ以上の円安は進みませんでした。

そして、今回の円安の背景にも日本とアメリカの金融政策の動向が大きく影響しています。

1年前の去年3月には、1ドル=110円前後で取り引きされていて、新型コロナウイルスの感染状況などをにらみながら、一進一退の動きが続いていました。
しかし、去年10月以降、原油高に伴うインフレへの懸念からアメリカが金融引き締めに向かうという見方が広がって、円安ドル高が進み、去年11月には4年8か月ぶりに1ドル=115円台をつけました。
そして、ことしに入ると、2月下旬のロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、原油をはじめとする資源価格が一段と高騰。

先月、アメリカの中央銀行に当たるFRB=連邦準備制度理事会が利上げを急ぐ姿勢を強調するのとは対照的に、日銀は金融緩和を続ける姿勢を鮮明にし、日米の金利差の拡大が強く意識される形となりました。

日銀が先月、長期金利の上昇を抑えるため、一定の期間、指定した利回りで国債を無制限に買い入れる「連続指値オペ」と呼ばれる措置に踏み切ったことで、円安ドル高が加速し、円相場は先月上旬から下旬にかけてわずか3週間で10円程度も値下がりしていました。

20年前の円安の頃は…

前回、1ドルが126円台だった20年前は、2002年・平成14年。

デフレへの対応や、金融機関が抱える不良債権処理の加速が大きな課題となっていて、当時の小泉内閣は日本経済の再生を目指し「構造改革」を掲げていました。

この年は、1ドル=135円台から115円台まで「円高ドル安」が進みました。

年明けからは、日本の景気や金融システムに対する懸念が高まって、いったん円が売られましたが、春先からアメリカ経済の減速などを背景に円高ドル安に転じました。

これを受けて、政府・日銀が急激な円高を食い止めるため、断続的に市場介入を行いました。

1月に三和銀行と東海銀行が合併し「UFJ銀行」が営業を開始したほか、4月に第一勧業銀行と富士銀行、それに日本興業銀行が「みずほ銀行」など2つの銀行に再編。

金融機関の合従連衡が相次ぎました。

その一方で、不良債権処理の加速を求められる中、金融機関がみずからの経営を優先して融資先から資金を回収することを示す「貸し剥がし」ということばが、流行語にもなりました。

国際的な動きとしては、1月にヨーロッパの単一通貨「ユーロ」の流通がドイツやフランスなど12か国でスタート。

また年末にかけては、翌年の3月に始まるイラク戦争を前に、情勢が緊迫化していました。