“化学兵器使用” 親ロシア派武装勢力は否定 各国で警戒強まる

ウクライナ軍は、東部の要衝マリウポリでロシア軍が化学兵器を使用したと訴えていましたが、親ロシア派の武装勢力は12日、否定しました。
ただ、欧米の国防当局が、ロシア軍が東部で戦力を強化していると指摘し、化学兵器の使用の可能性も排除できないと各国の間で警戒が強まっています。

ロシア国防省は12日、ウクライナ東部のドネツク州とルハンシク州をミサイルで攻撃し、ウクライナ軍の対空ミサイルシステムを破壊したなどと発表しました。

また、東部の要衝マリウポリについて、「われわれに包囲された工場に残っていたウクライナ軍の兵士らが夜間、脱出を試みたが、空爆と砲撃で失敗に終わった」と主張し、マリウポリの掌握に向け、包囲を続けているとみられます。

東部の戦況についてイギリス国防省は12日、「戦闘は今後2、3週間で激化するだろう」と指摘し、ロシア軍が引き続きドネツクとルハンシク周辺で攻撃を集中させると分析しました。

また、アメリカ国防総省の高官も11日、ロシア軍がここ数日間で行ったミサイル攻撃の大半は東部地域に集中していると指摘したうえでロシア軍がドネツクの南西方向で、砲撃を行う部隊を中心に戦力を強化し始めているのが確認できるとしています。

さらに東部ハルキウ州にあるイジュームの北側にロシア軍の車列が確認できるとしたうえで、東部に展開する部隊に対し、補給や戦力の強化を行うのが目的だという見方を示しました。

一方、親ロシア派の武装勢力のバスリン報道官は、11日、最大で4000人のウクライナ兵がいるとしてマリウポリにある製鉄所を掌握するために化学兵器を使用する可能性に言及しました。

化学兵器についてウクライナ軍の部隊は11日、SNSに「ロシア軍がマリウポリでウクライナ軍の兵士と市民に対し、有毒な物質を使い、複数の人が呼吸困難の症状を示している」などと投稿しました。

ただ、バスリン報道官は12日になって、インターファクス通信に対し、「われわれはマリウポリでいかなる化学兵器も使用していない」と否定しました。

アメリカ国防総省のカービー報道官は11日の声明で化学兵器の使用について「現時点では確認できず、引き続き、状況を注視する」としているほか、イギリスのトラス外相もツイッターで、「詳細の確認を急いでいる」と投稿するなど、ロシア軍が東部で戦力を強化するなか、化学兵器の使用の可能性も排除できないと各国の間で警戒が強まっています。