大阪 第6波で集団感染相次ぎ 往診医療チーム派遣強化 課題も

新型コロナウイルスの第6波で、高齢者施設などで集団感染が相次いだことから、大阪府は地域の医師の協力を得て、集団感染が起きた施設に往診チームを派遣する取り組みの強化に乗り出していますが、チームの医師は協力する医療機関の数が少なく「再び感染者数が増えた場合、今の往診の体制では対応しきれなくなるおそれがある」と危機感を示しています。

大阪府内の高齢者施設や障害者施設で発生した集団感染は、第6波に限っても今月3日までで773施設にのぼり、感染者の累計は1万2000人を超えています。

こうした事態を受けて、府は施設内の感染者を素早く治療に結び付けようと、地域の医師の協力を得て集団感染が起きた施設に、往診チームを派遣する取り組みの強化に乗り出しています。

このうち河内長野市にある診療所は、大阪府や保健所の要請を受けことし1月以降、13の施設に往診してきました。

この診療所では医師や看護師、それに事務職員ら合わせて6人から7人が1つのチームになって往診し、携帯型のPCR検査の機器などを使って感染の広がりを把握したり、重症化を防ぐため点滴の治療薬を投与したりするほか、肺のレントゲン写真を撮影する検査機器を持ち込んで、肺炎の兆候がないか調べています。

診療所の水野宅郎医師が懸念しているのは往診の体制です。

府が呼びかけた結果、往診に協力する医療機関は現在、およそ100まで増えたものの、水野医師によりますと、地域によって偏りがあり、数が十分とはいえない地域もあるということです。
水野医師は「感染の広がりを抑えたり重症化しないよう治療薬を投与したりするには、できるだけ早期に往診することが大切だ。再び、感染者数が増えた場合、今の往診の体制では対応しきれない地域が出るおそれがあり、協力する医療機関をさらに増やす必要がある」と話していました。

協力医療機関の対応状況

大阪府のまとめによりますと、新型コロナウイルスの第6波で高齢者施設や障害者施設で起きた集団感染に関連して、感染して施設内で亡くなった人は今月6日の時点で82人と、これまで最大だった第4波の40人の倍以上にのぼっています。

こうした状況を受け、大阪府は施設ごとにあらかじめ指定された協力医療機関の対応状況を調査しました。

その結果、回答を得た3601の施設のうち、協力医療機関が新型コロナの飲み薬を処方できるとした施設は25%でした。

また「ソトロビマブ」などの中和抗体薬の点滴が行えるとした施設は13.4%、抗ウイルス薬の投与が行えるとした施設は11%で、いずれかの方法で新型コロナの治療ができる施設は全体のおよそ3割にとどまりました。

支援を受けた老人ホームでは

往診チームが支援に入った大阪 松原市の老人ホームは、ことし2月に集団感染が発生しました。

3人の入居者が発熱し陽性が判明したのをきっかけに、1週間ほどの間に入居者や職員ら合わせて20人の感染が相次いで確認されました。

府から往診チームが派遣され、まず、改善されたのが施設内の感染対策です。

老人ホームは病院などと異なり、一人一人の部屋が決められているため、感染が分かった人を1か所に集めることができませんでした。
そのため施設ではチームの助言を受け、各部屋の前に防護服などを準備し、介護のために職員らが部屋に入るたびに着替えるなどして、感染を広げないよう注意したといいます。

さらに往診チームは、施設内の感染者に早い段階で点滴薬の投与などの治療を行いました。

その結果、基礎疾患があった2人は一時、入院したものの、そのほかはすべて軽症で、最終的には全員が回復したということです。

オアシス北燦しばがきの仲谷増巳施設長は「施設内で感染者が出たのは初めてだったこともあり、防護服の着脱を始め、自分たちだけでは的確にできなかったおそれもありました。施設内での感染対策や治療を支援してもらえたことで感染の広がりも抑えることができました」と話していました。