ウクライナ 駅攻撃“ロシア軍 避難の市民を狙ったか”批判の声

ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナの東部の駅で合わせて52人が死亡したミサイル攻撃について、現地では、ロシア軍が避難しようとする多くの市民が駅にいる時間帯をねらったのではないかと批判する声が上がっています。ロシアの責任を問う声が強まる中、ロシア軍は東部での大規模な攻勢に向け、追加の部隊の配置を進めているとみられ、市民の犠牲が増えることへの懸念がいっそう高まっています。

ウクライナ東部のドネツク州、クラマトルスクで8日、鉄道の駅がミサイルで攻撃を受けこれまでに子ども5人を含む52人が死亡しました。

攻撃について、ウクライナ側は広い範囲に被害をもたらし、使用を禁止する国際条約があるクラスター爆弾をロシア軍が使ったと非難しています。

攻撃を受けた駅について、ユニセフ=国連児童基金は「人々が避難する主要なルートだった」と指摘しているほか、地元の市長は「当時、多くの人たちがホームで列車を待っていた。この時間にはおよそ4000人がいたとみられる」と述べるなど、現地では攻撃はロシア軍が避難しようとする多くの市民が駅にいる時間帯をねらったものだったのではないかと批判する声が上がっています。

ロシア側は「ウクライナ軍による攻撃だ」と主張し、関与を否定していますが、欧米各国からはロシア軍による無差別攻撃で戦争犯罪だなどとしてロシアの責任を問う声が強まっています。

一方、多くの市民の犠牲が連日明らかになっている首都キーウ周辺の状況について、ウクライナの複数のメディアは、ロシア軍が撤退したキーウの西、およそ50キロに位置するマカリウで、射殺された132人の住民の遺体が見つかったと伝えました。

こうした中、ロシア国防省は9日「キーウ近郊のイルピンで、ロシア軍が市民を殺害したとする偽装工作を行うため、ウクライナ側が街に遺体を運び込む計画を立てている」と発表し、市民の被害はウクライナ側によって仕組まれたものだという主張を展開しています。

またウクライナ東部の状況についてはアメリカ国防総省が8日、ロシア軍が東部に合わせて数千人の兵士を追加で配置したとの見方を示しました。

さらにキーウ周辺から撤退したロシア軍の一部の部隊が、ロシア西部でいったん補給を受けたあと南下してウクライナ東部地域に入る可能性が高いと分析しています。

ロシア軍はウクライナ東部の掌握に向け大規模な攻勢に乗り出すとも指摘されていて、市民の犠牲が増えることへの懸念がいっそう高まっています。

駅周辺にいた人「恐ろしい光景だった」

当時、駅の周辺にいた人たちが状況を語りました。

このうち、西部の都市リビウに列車で避難するため妻と娘とともに駅を訪れていた男性は「燃えている車やミサイルの残がい、それに逃げ惑う人々を見ました」と話しました。

この家族が駅に着いたのは、爆発が起きてから3分後だったということです。

鉄道の駅に向かうために乗る予定だったタクシーが遅れたため、別のタクシーを使うことになったことから、駅への到着が遅れて爆発を免れたということです。

男性は「もし最初に乗る予定だったタクシーが時間どおりに来ていたら、私たち家族は爆発に巻き込まれていたでしょう」と話していました。

また、駅に集まった人たちに食べ物や飲み物を提供する予定だった支援団体の男性は「爆発音が聞こえて駅に向かうと壊滅的な状況だった。多くの死傷者がいるのが見えたし、車が燃え、ミサイルの残がいがあった。恐ろしい光景だった」と振り返りました。

そして「爆発音が6回から10回ほど連続して聞こえたが音だけでなく、体の内側に響くような振動があった。ボランティアが1人駅で亡くなった。攻撃が無差別的に行われたことを示している」と話していました。