【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(9日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる9日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

キーウ近郊マカリウで132人の住民遺体見つかる 複数メディア報道

ロシア軍が撤退したウクライナの首都キーウの近郊では、通信手段の復旧に伴って、ブチャやボロジャンカなど以外の地域でも住民の被害が次々と明らかになっています。このうち、キーウの西、およそ50キロに位置するマカリウでは、ウクライナの複数のメディアが射殺された132人の住民の遺体が見つかったと伝えました。

地元の関係者は「住民はロシア軍に射殺された。1か月以上にわたって電気やガス、水がない状態が続き、町の40%が破壊された」と話していると現地メディアが伝えています。

ロシア政府 国際的な人権団体など登録を抹消

ロシア政府は8日、アメリカに本部がある国際的な人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」など13の欧米の団体がロシア国内に置く15の拠点について、登録を抹消したと発表しました。
ロシア法務省によりますと対象になるのは▽「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のほか▽国際的な人権団体の「アムネスティ・インターナショナル」、▽アメリカのシンクタンク「カーネギー国際平和財団」、▽ドイツの「フリードリヒ・エーベルト財団」などのロシア国内にある拠点です。

登録抹消の理由についてロシア法務省は「現行法に対する違反が明らかになった」とするだけで具体的な内容を説明していません。
ロシア政府はこのところプーチン政権を批判する国内の人権団体に対して抑圧を強めたり解散に追い込んだりしています。
「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」などはプーチン政権による人権侵害に強い懸念を示してきたほか、ウクライナへの軍事侵攻で戦争犯罪にあたる残虐な行為が行われているなどとしてロシアを強く非難しています。
ロシア政府による登録抹消の決定を受けて「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のケネス・ロス代表は8日、団体のホームページで「権威主義に傾くロシアを告発していくわれわれの決意はむしろ強まった」としてプーチン政権の圧力に屈しない姿勢を示しています。

ウクライナ国防省「ロシアがクラスター爆弾使用」と主張

ウクライナ国防省は8日、東部のドネツク州のクラマトルスクの鉄道の駅が攻撃されたことについてSNSで「ロシアの戦争犯罪者は多くの人たちを意図的に標的にしただけでなく、クラスター爆弾を使った」と主張し、ロシア軍が残虐な兵器とされるクラスター爆弾で攻撃したと強く非難しました。

“ミサイル残がいの側面”にロシア語で「子どもたちのために」

東部ドネツク州クラマトルスクの鉄道の駅の攻撃に使われたとされるミサイルについて、現地で撮影されたミサイルの残がいとされる写真や映像には、側面にロシア語で「子どもたちのために」と白い文字で書かれているということです。

これについてアメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは、複数の専門家の分析としてロシアの子どもたちを守るためといった意味や何かをされたことに対する報復といった意味が込められていると伝えています。またアメリカのニューズウィークも、専門家の見立てとして、ロシアの子どもたちがウクライナの砲撃で苦しんでいるとするロシアのプロパガンダを後押しするねらいがあると伝えています。

WHO“医療施設や救急車などへの攻撃 100回超えた”

WHO=世界保健機関は7日に声明を発表し、ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナで、医療施設や救急車などに対する攻撃がこれまでに100回を超えたと明らかにしました。攻撃は7日の時点で合わせて103回に上り、73人が死亡、51人がけがをしたということです。

WHOのテドロス事務局長は「国際人道法に違反する医療への攻撃が続いていることに憤りを感じる」と強く非難したうえで、長期的なウクライナの医療体制にも影響を及ぼしかねないとして懸念を示しています。

駅に攻撃“52人死亡” 欧米側は軍事支援を強化

ウクライナ東部で、鉄道の駅が短距離弾道ミサイルによるとみられる攻撃を受け、地元の州知事は52人が死亡したと明らかにしました。
この攻撃について、アメリカ国防総省の高官は8日、ロシア軍が短距離弾道ミサイルを使って行ったという分析を明らかにしました。
ロシア国防省は「ウクライナ軍による攻撃だ」と関与を否定していますが、ゼレンスキー大統領は8日に動画を投稿し、ロシアによる新たな戦争犯罪だとしたうえで「誰が命令を下し、ミサイルはどこから来たのか。責任は避けられない」と強く非難しました。

一方で、ロシア軍は今回の攻撃があった東部を中心に攻勢を強めていて、今後、大規模な戦闘を行うのではないかという懸念が高まっています。
これに対し欧米側は、ウクライナに地対空ミサイルシステムを供与するなど軍事支援を強化しています。

ウクライナ公共放送 マリウポリから4万人強制移送

ウクライナの公共放送は動画投稿サイト、ユーチューブで現地の状況を連日、国内外に英語で発信しています。8日に公開された放送では、東部のマリウポリの住民が、ロシア軍によってロシアのほか、東部のドネツク州とルハンシク州に強制的に連れて行かれたと伝えています。

また、マリウポリ市長の話として、武装した男性らが市内の病院におしかけ、医師や患者に対して移動するよう迫り、恐怖心からロシア軍の指示に従うしかなかった人たちもいると伝えています。そのうえで、マリウポリからは、すでに少なくとも4万人がロシアなどに強制的に移送されたとしています。

英独首脳会談 ロシアへの経済制裁強化で一致

イギリスとドイツの首脳会談が8日、ロンドンで開かれ、両国は、ウクライナへの軍事支援やロシアへの経済制裁の強化で一致しました。

会談の後、イギリスのジョンソン首相は、ウクライナに対し、対戦車ミサイルなど1億ポンド、日本円で160億円余りに相当する軍事物資をあらたに供与すると発表しました。

また、経済制裁の一環として取り組むロシア産原油の輸入を停止する措置については、ドイツのショルツ首相が「年内に実現できる」との見通しを示し、すでに年内の停止を表明しているイギリスと足並みをそろえていくことで一致しました。

EU プーチン大統領の娘ら資産凍結や渡航禁止の追加制裁

EU=ヨーロッパ連合は8日、ロシアに対する追加制裁として、プーチン大統領の2人の娘、▼カテリーナ・チホノワ氏と▼マリヤ・ボロンツォワ氏や、プーチン政権に近い「オリガルヒ」と呼ばれる富豪ら合わせて217人と、ロシアの金融機関など18の団体をあらたに、EU域内の資産凍結やEUへの渡航禁止の対象にしたと発表しました。

また、先に方針を明らかにしていた▼ロシアからの石炭の輸入禁止や、▼ロシアの4つの金融機関との取り引きの禁止なども正式に決めました。プーチン大統領の2人の娘は今月6日に発表されたアメリカの制裁でも対象とされています。

米 サキ報道官 「駅攻撃は戦争犯罪 捜査に協力」

ウクライナ東部で鉄道の駅が攻撃されたことについて、アメリカ・ホワイトハウスのサキ報道官は8日「避難しようとしていた市民を攻撃したものであり、ロシアによる残虐行為の一つだ。市民を標的にするのは明らかな戦争犯罪であり、何が起きたのか捜査に協力していく」と述べロシアの責任を追及するためアメリカとして協力していく考えを強調しました。

ブチャ市長「9割近くに銃撃された痕」

ドイツの公共放送、「ドイチェ・ウェレ」は7日、ブチャの市長にインタビューしたやり取りの内容を電子版で伝えました。

市長は、これまでにロイター通信の取材に300人以上の住民が殺害されたと答えていますが、今回のインタビューでは、「死者の数は日々、増えている」と述べ、被害がさらに増えるおそれがあります。

そのうえで、市長は「殺害は銃撃か砲撃のどちらによるものか」という質問に対して、「9割近くに銃撃された痕がある」と答え、多くの人が、銃でねらわれて殺害されたとの認識を示しました。また、「ロシアの侵略者たちは、ブチャにある会社の敷地内に遺体をまきのように積み上げていた」などと述べ、現地の状況を説明しました。

EU フォンデアライエン委員長らキーウ訪問

EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長と外相にあたるボレル上級代表は8日、ウクライナの首都キーウを訪れました。

フォンデアライエン委員長らはキーウでウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、その後の記者会見で「皆さんの戦いはわれわれの戦いでもある。きょうキーウで伝えたいのは、ヨーロッパは皆さんとともにある、ということだ」と述べて、連帯する姿勢を示しました。そのうえで、今後も軍事的、財政的な支援を強化し、ロシアへの追加的な制裁も行っていくと強調しました。

フォンデアライエン委員長らは大勢の市民が殺害されているのが見つかったキーウ近郊のブチャも視察に訪れました。フォンデアライエン委員長はツイッターに、「残虐な行為の責任者は司法の場で裁かれるだろう」と投稿し国際刑事裁判所などで殺害に関わった者の責任が追及されるべきだという考えを示しました。

EUからは先週、ヨーロッパ議会のメツォラ議長もキーウを訪れ、ウクライナ議会で演説するなどしてウクライナを支援する方針を重ねて示しています。

ロシアでインフレ加速 消費者物価指数 16.69%

ロシアの統計庁の発表によりますと、3月の消費者物価指数は前の年の同じ月と比べて16.69%の上昇でした。2月の消費者物価の上昇率は9.15%で、軍事侵攻のあと、欧米による経済制裁の強化を受けて通貨ルーブルが急落するなかで、インフレが加速したことがうかがえます。

インフレの加速はロシア経済や市民生活を直撃しています。一方、ルーブルは、最近になって軍事侵攻前の水準まで値を戻していて、今後の相場動向がロシア国内の物価にも影響することになりそうです。

国連のグテーレス事務総長「駅攻撃 容認できない」

ウクライナ東部で鉄道の駅が攻撃されたことについて、国連のグテーレス事務総長は8日、声明を発表し、「駅で避難しようと待っていた女性や子どもなど多くの市民を死傷させた今回の攻撃は、全く容認できない。国際人道法や国際人権法の重大な違反であり、加害者はその責任を問われなければならない」と非難しました。

そのうえで「すべての当事者に対しこの残忍な戦争を直ちに終わらせるよう改めて求める」として、市民の犠牲を食い止めるための人道的な停戦を改めて呼びかけました。

アメリカ高官「駅攻撃はロシア軍の短距離弾道ミサイル」

アメリカ国防総省の高官は8日、ウクライナの東部ドネツク州にあるクラマトルスクの鉄道の駅が攻撃されたことについて、ロシア軍が短距離弾道ミサイルを使って行ったという分析を明らかにしました。

この高官は、ロシア軍が東部に軍事作戦の重点を移す中、交通の要衝を攻撃することでウクライナ側がこの地域に追加の部隊を投入することなどを妨げようとしているのではないかと指摘しました。

また、この高官はロシア軍がウクライナ東部に投入している部隊を増やしていると指摘し、合わせて数千人の兵士が追加で配置されたとの見方を示しました。

さらに首都キーウ周辺から撤退したロシア軍の地上部隊について、その一部が、ロシア西部の都市ベルゴロドやバルイキに向かう動きが確認されたと明らかにしました。これらの都市は、ウクライナ東部との国境に近く、ロシア軍の部隊がここで補給を受けたあと南下して東部地域に入る可能性が高いと指摘しました。

さらに、ロシアが予備役の動員を始め、6万人以上の兵士の確保を目指している兆候があるということです。この高官は、ウクライナに投入されているロシア軍の戦力は、侵攻を始めた時と比べて80%から85%にまで低下したと推定されるものの、いまだ大きな戦力だとして今後、戦闘が長引く可能性があると指摘しました。

ドネツク州知事「駅攻撃で50人死亡 98人けが」

ウクライナ東部ドネツク州のクラマトルスクの鉄道の駅が8日、攻撃されたことについて、地元の州知事は、これまでに子ども5人を含む50人が死亡し、98人がけがをしたと発表しました。

また、ウクライナの検察当局は、「攻撃はロシア軍によるものだ」としたうえで、「当時、駅の周辺には避難をするため、4000人余りの市民が集まっていた」とSNSに投稿しました。

一方、ロシア国防省や大統領府は、「ロシア軍は攻撃していない」と関与を否定しています。

スロバキア 地対空ミサイルシステム「S300」を供与

スロバキアのヘゲル首相は、8日、ウクライナ側からの求めに応じて、戦闘機やミサイルを撃ち落とす能力を持つ地対空ミサイルシステム「S300」を供与したことを明らかにしました。そのうえで、ヘゲル首相は、「これによってプーチン政権の侵略から多くの市民の命を守ることができると信じている」と述べました。

ロイター通信は、「S300」が列車で運ばれる様子が映るスロバキア政府提供の映像を伝えています。

これについて、アメリカのオースティン国防長官は8日、声明を発表し、「敬意を表する」としたうえで、ヨーロッパに駐留するアメリカ軍が数日中に迎撃ミサイル「パトリオット」1基をスロバキア国内に配置転換すると明らかにしました。

スロバキアは、「S300」の供与にあたって代わりの防空システムの補充が必要だという認識を示していたことから、3月、オースティン長官がスロバキアを訪れ、調整を進めていました。

ウクライナ 少なくとも1626人の市民死亡

国連人権高等弁務官事務所は、ロシアによる軍事侵攻が始まったことし2月24日から4月7日までに、ウクライナで少なくとも1626人の市民が死亡したと発表しました。このうち132人は子どもだということです。

死亡した人のうち▼1127人はキーウ州や東部のハルキウ州、北部のチェルニヒウ州、南部のヘルソン州などで、▼499人は東部のドネツク州とルハンシク州で確認されています。また、けがをした人は2267人にのぼるということです。

多くの人たちは砲撃やミサイル、空爆などによって命を落としたり、負傷したりしたということです。

今回の発表には、ロシア軍の激しい攻撃を受けている東部マリウポリなどで、確認がとれていない犠牲者の数は含まれておらず、国連人権高等弁務官事務所は、実際の数はこれよりはるかに多いとしています。

ウクライナから国外避難438万人(7日)

UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、7日の時点で438万人余りとなっています。

主な避難先は
▼ポーランドがおよそ254万人、
▼ルーマニアがおよそ67万人、
▼ハンガリーがおよそ41万人、
▼モルドバがおよそ40万人、
▼ロシアがおよそ37万人などとなっています。

ブラジル 消費者物価指数 前年同月比+11.3% インフレ拍車

南米のブラジルではロシアによるウクライナへの軍事侵攻の影響で燃料や食料品の価格が上昇し、インフレに拍車がかかっています。

ブラジルの3月の消費者物価指数は、前の年の同じ月に比べてプラス11.3%となり、2003年10月以来の高い水準となりました。

月間の上昇率は1.62%と、3月としては通貨レアルが導入された1994年以来、最も高い伸び率で、所得の低い貧困層の人たちへの影響が懸念されています。

ロシア軍が撤退 チェルニヒウ市長「軍人と市民 約700人死亡」

ウクライナの地元メディアは8日、ロシア軍が撤退した北部・チェルニヒウのアトロシェンコ市長が、「侵攻が始まってから、軍人と市民の合わせておよそ700人が死亡した」と述べたと伝えました。また、およそ40人の行方がわからなくなっているということです。

市長は、侵攻開始前の人口はおよそ29万だったのに対し、現在、市内に残る住民は8万人から9万5000人程度に減っているとしています。

リビウ 女性服の縫製工場で軍用ベスト製作

ロシア軍による攻撃が続く中、ウクライナ西部の都市、リビウにある縫製工場では、前線で戦うウクライナ軍を支援しようと、兵士のためのベストなどをつくっています。

20人ほどが働くこの縫製工場ではふだん、女性用の服などをつくっていますが、ロシアによる軍事侵攻を受けて3月からウクライナ軍の兵士のためのベストや軍服につける国旗や軍の紋章をあしらったワッペンを作り始めました。軍用のベストは一日に最大120着作っているということで、これまでにおよそ3000着を軍に納入したということです。

縫製工場のオーナー、ナターリア・ヤレシュさんは「一人一人が少しずつでも自分ができることをしなければいけないと思います。そうすることでよい結果、勝利を得ることができると思います」と話していました。

“ロシア兵から性的暴行被害” 訴え相次ぐ 人権団体

国際的な人権団体、「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、4月、ウクライナ国内でロシア兵による市民への性的暴行があったとする報告書を発表しました。

報告書によりますと、東部ハルキウの31歳の女性が学校の地下に家族で避難していたところ、ロシア兵が侵入し、女性は上の階の教室に連れて行かれたということです。女性はこめかみに銃を突きつけられるなどして脅され、何度も性的暴行を受けたうえ、ナイフで首や髪の毛を切られたということです。

団体ではこのほかにもチェルニヒウやマリウポリなどで3件の性的暴行が疑われる報告があり、調査を進めているということです。

ウクライナ検事総長「キーウ州 650人の遺体 40人は子ども」

ウクライナのベネディクトワ検事総長は、首都キーウから北西におよそ50キロのボロジャンカを訪れ、「キーウ州のボロジャンカ、ブチャ、ホストメリ、イルピンなどで合わせて650人が遺体で見つかっている。このうち40人は子どもだ」と述べました。

そのうえで「プーチンは、21世紀の重大な戦争犯罪者だ。ウクライナの法令では大統領と、外相、首相を訴追できないが、国際法廷なら可能だ」と述べて国際社会と協力してロシアのプーチン大統領の責任を追及していく姿勢を強調しました。