試される東証の“本気”【経済コラム】

4月4日にスタートした東証の「プライム市場」など3つの新市場。長年親しまれ、多くの企業が目指した「東証1部」などを廃止する、およそ60年ぶりの本格的な市場再編です。しかし、“世界で戦える企業”を集めるため上場基準を厳しくしたものの、当日は小幅な値上がりにとどまって「ご祝儀相場」はほとんど見られず、その後はむしろ株価は値下がり傾向をたどっています。(経済部記者 篠田彩)

看板の掛け替え?

投資家からは「看板の掛け替えにすぎない」と、冷ややかな目も向けられています。

プライム市場の上場基準をクリアしていなくても、もとの1部上場の企業には改善に向けた計画書を提出すれば、プライム市場に移行できる「経過措置」が設けられ、およそ300社が基準未達のまま移行しました。

東証1部の8割以上がプライム市場に移行する結果となり、優良銘柄の絞り込みには至らなかったことが大きな理由です。

市場関係者からは、早くも“次の対策”を求める声が上がっています。
マネックス証券 広木隆チーフストラテジスト
「市場再編後の株価の動きは日本企業そのものの魅力が増しておらず、何も変化がないことを表している。パイをどう切るかについて論じても意味はなく、パイそのものの味や質を高めなくてはならない。基準をさらに引き上げるなどして、企業に変革を求め、経営目標として行動させることができる市場環境になれば、海外投資家からの評価も変わる。チャンスはそこにある」
米大手資産運用会社ヌビーン・アセット・マネジメント ピーター・ボードマン 日本株戦略ポートフォリオ・マネージャー
「現状のプライムでは、海外投資家の投資対象にならない時価総額の小さい銘柄や、市場流動性の低い銘柄、それにROE(=自己資本利益率)の低い銘柄が含まれている点で、これまでと何も変わらない。また経過措置が設けられていることも再編の意義を薄めている。大切なことは、企業が高いROEや株式の流動性を生み出す環境であり、また企業がそれらの水準を目指したいと思えるようなインセンティブを与える環境が必要だ」

上場企業の新陳代謝とは?

また、上場企業の新陳代謝を増す必要があるという指摘もあります。

東証の上場企業は2096社(2000年末)から3822社(2021年末)へ1.8倍に増加。

対して、ニューヨーク証券取引所とナスダッグを合わせた上場企業数は7194社(2000年末)から6203社(2021年末)に減少。

この間、上場企業全体の価値を示す時価総額は増加した一方、M&A(合併や買収)などによって上場企業の数は減っているのです。

成長著しいスタートアップがほかの企業を買収したり、逆に既存の大手企業が新興企業を取り込んだりすることで規模拡大・価値向上を進めるということが起こっているわけです。

東証、次の一手は?

こうした声に対して、東証も「次の一手」を考え始めています。

関係者によると、プライム市場の上場基準を将来的にさらに厳しくする可能性はあるとしています。

また、基準を満たさない企業の上場廃止についても、今後厳格に対応していくことも選択肢としては否定しないとしています。

今回の再編の背景にあるのは、世界における“東証の地盤沈下に対する危機感”です。

しかし、次の一手までが中途半端だという指摘が出るようだと、「東京、日本は変われない」として、世界の目がますます離れて行きかねません。

企業に新陳代謝や価値向上を促すため、どこまでハードルを引き上げられるか。

東証の本気が試されるのは、むしろこれからかもしれません。
12日にはアメリカの消費者物価指数が発表されます。ロシアのウクライナ侵攻や各国によるロシアへの経済制裁がエネルギー価格などに影響を及ぼす中、アメリカのインフレは加速するのか、今後のアメリカの利上げペースを占う指数の1つで、円相場にも影響すると見られるだけに、物価の動向に注目です。

13日にはヨーロッパ中央銀行の理事会が開かれ、政策金利(4月)が発表されます。