新型コロナ 新たな変異ウイルス「XE」 イギリスなどで報告

新型コロナウイルスのオミクロン株のうち、複数のタイプが組み合わさった「XE」(エックス・イー)と呼ばれるタイプのウイルスが、イギリスなどで報告されています。感染の広がりやすさなどははっきり分かっておらず、専門家は注目して監視する必要があるとしながらも、基本的な対策は変わらないとしています。

新型コロナウイルスは世界中で広がる中で変化を繰り返していて、1人の人が複数のタイプに感染することで遺伝子の組み換えが起き、複数のウイルスの特徴を持った新たな変異ウイルスができることがあります。

このうち「XE」と呼ばれるウイルスは、オミクロン株のうち「第6波」で広がった「BA.1」(ビーエー・ワン)というタイプと、より感染力が高いとされる「BA.2」(ツー)が組み合わさったタイプです。

ウイルスの表面にあり、人の細胞に感染する際の足がかりとなるスパイクたんぱく質を含むほとんどの部分が「BA.2」、ほかの部分が「BA.1」となっています。

WHO=世界保健機関は「XE」をオミクロン株の一種として監視していて、イギリスの保健当局の資料によりますと、イギリスで2022年1月19日に最初に報告されて以降、3月22日までに763件報告され、小規模のクラスターも報告されていますが、3月下旬の時点で検出されたすべてのウイルスに占める割合は1%未満となっています。

また、3月15日までの初期のデータに基づいて数理モデルを使った解析を行ったところ、感染が広がるスピードは「BA.2」より9.8%速いと試算されたとしていますが、WHOはさらに確認することが必要だとしています。
「XE」は日本ではまだ見つかっていないということで、厚生労働省の専門家会合の脇田隆字座長は、6日の記者会見で「今のところ、日本の検疫などでXE系統が見つかった報告もなく、国内でも見つかっていない。イギリスでも広がっている状況ではなく、重症度の関連についてもよくわかっていない。今後の感染拡大の状況をしっかり見ていくことと、検疫で見つかるウイルスのゲノム解析を続ける必要がある」と述べました。

複数のウイルスが組み合わさったウイルスはほかにもあり、このうち「XD」と「XF」(エックス・ディー/エックス・エフ)は、去年夏の「第5波」で広がったデルタ株と、オミクロン株のうち、「BA.1」というタイプが組み合わさったタイプです。

「XD」はスパイクたんぱく質の部分が「BA.1」、それ以外のほとんどがデルタ株となっていて、イギリスの保健当局の資料によりますと、最初に検出されたのは2021年12月13日で、2022年3月22日の時点でフランスで40件、デンマークで8件、ベルギーで1件、報告されているということです。

WHOは「XD」を感染力や感染した際の重症度、ワクチンの効果などに対する影響の度合いがはっきり分からない「VUM」(ブイ・ユー・エム)=監視下の変異株に位置づけていますが、感染の広がりは限定的だとしています。

また「XF」は、スパイクたんぱく質を含めた大部分が「BA.1」で、一部がデルタ株となっています。

イギリスの保健当局は、2022年1月7日以降、イギリスで39件見つかっているものの2月14日以降報告はなく、感染の広がりは見られていないとしています。

WHOは、複数のウイルスが組み合わさるなどして新たな変異ウイルスが生まれるリスクは今も高く、ウイルスの遺伝子を解析して、データを共有することは引き続き欠かせないとしています。
厚生労働省の専門家会合のメンバーで、国際医療福祉大学の和田耕治教授は「これまでもアルファ株とデルタ株の合わさったものなどが出てきていて、オミクロン株でも『BA.1』と『BA.2』の2種類があることから、同時に感染することで合わさったものが出ることはありえると考えられていた。全く予想もしなかった変異のあるウイルスではない。注目して見ていくことにはなるが、対策の大きな方針が変わるといったことはなさそうだ。いまは『BA.2』が主流になってきているが、XE株であっても基本的な日常の対策は変わらないし、3回目のワクチン接種を引き続き進めてほしいという方針も変わらない」と話しています。

松野官房長官「さらなる知見を収集する必要がある」

松野官房長官は、午後の記者会見で「感染性や重症度などのウイルスの特徴について、さらなる知見を収集していく必要があると考えている」と述べました。

そのうえで「現時点では検疫や国内においてXE系統の変異株が確認されたという報告は受けていないが、引き続き諸外国の状況や知見なども収集しつつ、ゲノムサーベイランスによる監視を続けていく」と述べました。