【詳しく】ウクライナ教育相 “戦争でも学び止めない”

「教育を続けることが最も大切な目標だ」

ロシアによる軍事侵攻で多くの国民が自宅を追われ、子どもたちの半数以上は国内外で避難生活を余儀なくされています。
命を脅かされ、衣食住もままならない中でも、ウクライナの人たちが守り続けようとしているのが、教育の機会です。

シュカーレット教育科学相に話を聞きました。

子どもの被害は?

「毎日多くの国民が犠牲になり、これまでに150人以上の子どもが亡くなり、200人以上がけがをしていて、本当に心が痛みます。子どもの犠牲はどんなことがあっても正当化することはできません」
「学校などの教育施設は83か所が全壊し、776か所が被害を受けました。この数字は日に日に増えています。21世紀では考えられない野蛮なことです」

子どもは学べている?

「現状では国内の2つの州で学習が継続できていません。22の州では一部で休校もありますが、オンラインなどで授業を続けることができています。子どもたちは避難先でも授業が受けられます。私たちは教育を続けることが最も大切な目標だと考えています。子どもたちがどこに行っても、ちゃんとウクライナの教育を受けられるようなシステムを構築しているのです」

具体的にどう学ぶ?

「コロナ禍でオンライン授業の仕組みを作っていたことが役に立ったと言えます。『オールウクライナ・オンラインスクール』というオンライン授業のプラットフォームを立ち上げています」
「子どものためにさまざまな教科の動画や教科書を提供しています。国外からも利用でき、現在は130を超える国々からの利用があります。さらにウクライナの公共放送なども、子ども向けの教材をオンラインで提供しています」

子どもの心理ケアは?

「子どもだけでなく親や先生たちも多大なストレスを受けているため、教育担当の役所とさまざまな対策を考えて、インターネットで情報発信を行っています。世界中の精神科の医師によるアドバイスを受けながら、オンラインでのセラピーなども始めました。今では避難所にいても、こうした行政サービスを利用できるようになりました」
「教育科学省は教育機関と連携し、インターネットで子どもの心理的なサポートに関する情報提供を行っています。シェルターや家から出られない子どもたちに、体を動かしてもらうための簡単な体操もSNSのテレグラムで紹介していますし、親が子どもに戦争について説明する時に役立つ動画も制作しました」

日本に求めることは?

「日本がアジアの国々の中で最初にウクライナへの連帯を表明し、支援してくれたことに心から感謝しています。日本の高い技術力を生かしたオンライン授業のシステム開発など、専門的な支援を期待しています。また、オンライン授業のためのタブレット端末も不足しています。提供してもらえるよう検討をお願いします。日本の教師や研究者には、ウクライナ側の教師や研究者と協力してもらい、教育・科学の分野での復興を支援してほしいと考えています」

教育科学相として目指すのは?

「ウクライナの国民が国を離れていくのは悲惨なことです。私はウクライナ人として、そして教育科学相として、国民が帰国するためにできることはすべてやります。それは、ウクライナという国にとって、国民が何よりも宝だからです。今、ポーランドやヨーロッパの国々ではウクライナの基準で教育が受けられるシステムがあります。今後、若者がウクライナの復興のために帰ってきてくれることを期待しています。私に限らず、ウクライナ政府もゼレンスキー大統領も、ウクライナ人が自分の国に誇りを持てるように、あらゆることをしています。国民が安心できるよう、どんなことがあっても国が助けます。経済を立て直すための政策や、子どもが専門性を身につけられるような政策を検討しています。実現できれば、将来的にウクライナは世界でもすばらしい国になるでしょう」

(国際部 田村佑輔/聞き手 和久田麻由子)