ゼレンスキー大統領 “ロシア軍 市民殺害の証拠隠滅の試み”

ウクライナの首都近郊で多くの市民が殺害されているのが見つかったことを受け、戦争犯罪だとしてロシアの責任を厳しく問う声が広がっています。
こうした中、ウクライナ側からはロシア軍が首都近郊以外で市民を殺害した証拠を隠そうとしているという指摘が出ています。

アメリカ国防総省の高官は6日、ウクライナの首都キーウ周辺に展開していたロシア軍の地上部隊が完全に撤退したという見方を初めて示しました。

これまでに、ロシア軍が撤退した首都キーウ近郊の町ブチャでは多くの市民が殺害されているのが見つかり、欧米各国の間では戦争犯罪だとしてロシアの責任を追及する声が広がっています。

4月3日に避難先からブチャに戻った男性が6日、NHKの電話インタビューに応じロシア軍が撤退した後のブチャの状況について証言しました。

男性は「多くの人が殺されていました。拷問を受けた人もいて、多くの遺体が放置されています。混乱なのか恐怖なのか、この地獄を表現する言葉はありません」などと現地の惨状を語りました。

ブチャに残っていた男性の義理の弟も殺害されたということで、当時の状況について、男性は「妹の夫を連れ出し、服を脱がせてひざまずかせ、顔と頭を撃ったそうです。殺害した後、彼らはなんでもない仕事を終えたような感じで路上で水を飲んでいたそうです」と話した上でロシア軍を厳しく非難しました。

こうした中、ウクライナのゼレンスキー大統領は7日、公開したビデオメッセージで「ブチャで見た惨状がほかの都市でも起きている可能性があることからロシアの指導者は世界の怒りを買うことを恐れているようだ。ロシア軍が方針を変え、殺害した住民を占領地の路上や地下室から動かそうとしているという情報がある。これは証拠隠滅の試み以外の何ものでもない」と述べ、ロシア軍が市民を殺害した証拠を隠そうとしていると指摘しました。

また、ロシア軍が攻勢を強め、多くの市民の犠牲者が出ているとみられる東部の要衝マリウポリの市議会も6日、「ロシア軍が移動式の火葬施設を運用している」とSNSに投稿し、ロシア側が市民の遺体を焼却して証拠の隠滅を図っていると訴えました。

こうした中、G7=主要7か国やNATO=北大西洋条約機構は7日、外相会合を開いて今後の対応について意見を交わすことにしていて、追加の制裁や軍事支援でロシアへの圧力を一段と強める姿勢を打ち出すかが焦点となっています。