国の「緊急小口資金」など 貸付額 2年間で1兆3000億円余

新型コロナウイルスの影響が長期化する中、仕事を失った人などが当面の生活費を借りることができる国の制度で、貸付の決定額は、この2年間で1兆3000億円余りに上ることがわかりました。

国の「緊急小口資金」と「総合支援資金」は、失業や収入の減少で生活に困っている人が当面の生活費を無利子で借りることができる制度で、社会福祉協議会が窓口となっています。

「緊急小口資金」は、最大20万円を借りられるほか、「総合支援資金」は1か月につき最大20万円の借り入れを、原則3か月間受けられ、おととし3月以降、新型コロナウイルスの影響が認められる人も申請できる特例措置が続けられています。

厚生労働省によりますと、2つの制度の貸付の決定件数は、おととし3月25日から先月26日までの2年間で318万4598件、金額にして1兆3699億円に上っています。

リーマンショック後の2009年度からの2年間の、2つの制度の貸付件数は、およそ10万6000件、490億円余りで、金額は当時のおよそ28倍に上っています。

厚生労働省は新型コロナの影響が長期化していることなどから、特例措置の申請期限を、ことし6月末まで延長することを決めています。

また、国の「住居確保給付金」は、仕事を失うなどして家賃が払えなくなった人に、自治体が一定額を上限に家賃を支給する制度で、支給期間は原則3か月、最長で9か月となっています。

厚生労働省によりますと「住居確保給付金」の支給が決まったのは、おととし4月からことし1月末までで17万4539件に上っています。

困窮者支援 職員の負担は大きく 改善に向け議論

新型コロナウイルスの影響が続く中、生活に困窮する人を支援する社会福祉協議会の職員などの負担は大きくなっていて、厚生労働省は、専門家や自治体の職員などでつくる検討会で改善に向けた議論を続けています。

検討会では、失業や収入の減少などで生活に困窮する人を支援する「生活困窮者自立支援制度」の在り方や課題などについて議論を行っていて、支援する職員の負担を軽減する取り組みについても意見を交わしています。

今月中には報告を取りまとめる予定です。

今後は、社会保障審議会で議論を続け、来年以降、制度の改善に向けた取り組みを強化するとしています。

自治体の相談支援への影響を調査

厚生労働省の委託を受けたシンクタンク「北海道総合研究調査会」は、おととし11月から12月にかけて、新型コロナウイルスの感染拡大による相談支援への影響を調査しました。

調査には、生活に困窮する人の相談などに応じる「自立相談支援機関」を設置する都道府県や市町村など、544の自治体から回答がありました。

それによりますと、「本来業務実施への負担や困難さ」を聞いたところ、「強く感じる」「少し感じる」と回答したのは、合わせて90.6%に上りました。

自治体からは「相談員が貸し付けの事務手続きに追われてしまい、本来の相談業務などに集中できない実態がある」などの声が寄せられました。

また、「住居確保給付金」の申請に関する相談を受けたものの、その後、継続的な支援につながっていないケースがあるかを尋ねたところ、56.1%が「ある」と回答しました。

自治体からは「相談の対応だけで手いっぱいだったから」という声も目立っているということです。

厚生労働省は「自治体や社会福祉協議会の相談員など支援する側の負担も大きく、その状態が長期化している。国として人員を増やすための補助金などの支援策を設けていて、引き続き、改善に向けて取り組みたい」としています。