大谷翔平 2022 さらなる進化へ

大リーグが日本時間の8日に開幕する。
昨シーズンの歴史的な活躍によって、今や大リーグの「顔」となったエンジェルスの大谷翔平選手。9勝2敗、ホームラン46本と投打で自己最高の成績をあげ満票でMVPを受賞した1年を「最低ライン」と振り返った27歳は、2022年、さらなる飛躍を遂げようとしている。キャンプでの大谷選手、そしてチームメートの言葉から大リーグ5年目での進化を探った。
(アメリカ総局 記者 山本脩太)
昨シーズンの歴史的な活躍によって、今や大リーグの「顔」となったエンジェルスの大谷翔平選手。9勝2敗、ホームラン46本と投打で自己最高の成績をあげ満票でMVPを受賞した1年を「最低ライン」と振り返った27歳は、2022年、さらなる飛躍を遂げようとしている。キャンプでの大谷選手、そしてチームメートの言葉から大リーグ5年目での進化を探った。
(アメリカ総局 記者 山本脩太)
さらなる進化 目指す決意
大谷翔平選手
「去年と同じようにやろうと思ったら、そういう成績は残らない。もっともっと上を目指したい」
「去年と同じようにやろうと思ったら、そういう成績は残らない。もっともっと上を目指したい」
このオフシーズン、大リーグは揺れていた。
大リーグ機構と選手会の労使交渉が泥沼化し、労使に関わるすべての活動が止まる「ロックアウト」が去年12月から3か月以上続いた。
3月10日にようやくロックアウトが終わり、4日後には慌ただしくキャンプが始まったが、ロックアウトの代償としてオープン戦の試合数は当初の半分程度に減った。
大リーグ機構と選手会の労使交渉が泥沼化し、労使に関わるすべての活動が止まる「ロックアウト」が去年12月から3か月以上続いた。
3月10日にようやくロックアウトが終わり、4日後には慌ただしくキャンプが始まったが、ロックアウトの代償としてオープン戦の試合数は当初の半分程度に減った。

選手にとっては難しい調整になると予想されたが、およそ1か月遅れで始まったキャンプ2日目に、大谷選手は、自信とさらなる進化を目指す決意を口にしていた。
昨シーズンよりさらにひと回り大きくなったように見えるその体つきが、オフのトレーニングの充実ぶりを物語っていた。
昨シーズンよりさらにひと回り大きくなったように見えるその体つきが、オフのトレーニングの充実ぶりを物語っていた。

大谷翔平選手
「フィジカルはもうすでに去年よりいい状態でここまで来られた。体重的にはほぼ変わってない(102キロ)が、(ウエイトで)挙げる重量や身体の強さみたいなものは年々上がっている。それをしっかりプレーにつなげて出せるように」
「フィジカルはもうすでに去年よりいい状態でここまで来られた。体重的にはほぼ変わってない(102キロ)が、(ウエイトで)挙げる重量や身体の強さみたいなものは年々上がっている。それをしっかりプレーにつなげて出せるように」
エンジェルスのマッドン監督にも話を聞いた。
去年、大谷選手のフル回転での二刀流起用に踏み切り、あの歴史的な活躍を実現させた指揮官は、体つき以外にもことしの大谷選手のある変化を感じ取っていた。
去年、大谷選手のフル回転での二刀流起用に踏み切り、あの歴史的な活躍を実現させた指揮官は、体つき以外にもことしの大谷選手のある変化を感じ取っていた。

マッドン監督
「去年との違いを言うとしたら、より心地良く過ごしていることだ。彼は昔から自分に自信を持っていたが、今は前よりももっと落ち着いている。非常に自信があり、同時にとても謙虚な人間だ。その謙虚さのおかげで、すべての事にうまく対処できている」
「去年との違いを言うとしたら、より心地良く過ごしていることだ。彼は昔から自分に自信を持っていたが、今は前よりももっと落ち着いている。非常に自信があり、同時にとても謙虚な人間だ。その謙虚さのおかげで、すべての事にうまく対処できている」
5年目のキャンプ“いつも以上にやらなきゃいけない”
マッドン監督の言う「心地よさ」は、キャンプ中の大谷選手のふるまいや表情からも見て取れた。
ことしの大谷選手は、とにかくよく笑う。
体の不安がないことが心の充実につながっていることは確かだが、通訳の水原さんを介さずにチームメートと楽しそうに話す場面が以前にも増して多い。
ことしの大谷選手は、とにかくよく笑う。
体の不安がないことが心の充実につながっていることは確かだが、通訳の水原さんを介さずにチームメートと楽しそうに話す場面が以前にも増して多い。

じかにアドバイスを求められることもあり、特に今シーズン加入し大谷選手に次ぐ二刀流選手として先発ローテーションを託されるロレンゼン投手とは、身ぶり手ぶりを交えながら投球フォームについて話し込む様子も見られた。
ことしでプロ10年目、エンジェルスで5年目を迎えた大谷選手自身も立場の変化を実感している。
ことしでプロ10年目、エンジェルスで5年目を迎えた大谷選手自身も立場の変化を実感している。
大谷翔平選手
「所属する年数が長くなることで、やっぱりチームとしての位置というか、やらなきゃいけないことが増えてくると思うし、計算される度合いも高くなってくる。そこに対して、いつも以上にやらなきゃいけないなっていう気持ちはもちろんある」
「所属する年数が長くなることで、やっぱりチームとしての位置というか、やらなきゃいけないことが増えてくると思うし、計算される度合いも高くなってくる。そこに対して、いつも以上にやらなきゃいけないなっていう気持ちはもちろんある」
ロレンゼン投手
「世界最高の選手と一緒にプレーできるなんて最高だ。去年のオープン戦で僕は翔平にホームランを2本打たれたが、ことしは同じチームでプレーしている。僕もピッチングにバッティングと、やらなければならないことがいろいろとあるが、なるべくシンプルにしたいと思っているので、彼の準備のやり方をぜひ聞いてみたい」
「世界最高の選手と一緒にプレーできるなんて最高だ。去年のオープン戦で僕は翔平にホームランを2本打たれたが、ことしは同じチームでプレーしている。僕もピッチングにバッティングと、やらなければならないことがいろいろとあるが、なるべくシンプルにしたいと思っているので、彼の準備のやり方をぜひ聞いてみたい」
投打ともに順調 ホームランは“56本ペース”

オープン戦の投手成績
登板:2試合 5回2/3
勝敗:1勝0敗
防御率:4.76
奪三振:9
登板:2試合 5回2/3
勝敗:1勝0敗
防御率:4.76
奪三振:9
オープン戦ではピッチャーとしては2試合に登板し、最速99マイル(159.3キロ)をマーク。
開幕投手が決まった後に登板を1度回避したが、疲れをためずに開幕戦に万全の体調で臨むためだとし、調整は順調そのもの。
昨シーズン終盤から投げていると言う「チェンジアップとスプリットの中間」という変化球も、ピッチングの幅を広げるのに役立っている。
右ひじのけがから本格的な復帰を目指していた去年の同じ時期に比べると、完成度は明らかに上だ。
開幕投手が決まった後に登板を1度回避したが、疲れをためずに開幕戦に万全の体調で臨むためだとし、調整は順調そのもの。
昨シーズン終盤から投げていると言う「チェンジアップとスプリットの中間」という変化球も、ピッチングの幅を広げるのに役立っている。
右ひじのけがから本格的な復帰を目指していた去年の同じ時期に比べると、完成度は明らかに上だ。

オープン戦の打撃成績
出場:12試合
打数:25
安打:7
打率: .280
ホームラン:3
打点:7
出塁率: .471
出場:12試合
打数:25
安打:7
打率: .280
ホームラン:3
打点:7
出塁率: .471
バッターとしては34打席でホームラン3本を打ち、持ち味の長打力はことしも健在。
1試合に2~3打席しか立たなかったので、あまり目立たなかったが、昨シーズンと同じ打席数ならホームラン56本を打つハイペースだ。
さらに目を見張るのが出塁率の高さ。
ボールの見極めが明らかに昨シーズンよりも進化している。
ホームラン王を争っていた昨シーズンの終盤、相手からフォアボールはしょうがないとコースぎりぎりを攻められ続け「バッターとしてのスキルアップになった」と表現した経験が今、実を結ぼうとしている。
相手にとってさらに難しい打者になっている大谷選手を今シーズン、マッドン監督はまずは1番バッターとして起用していくつもりだ。
1試合に2~3打席しか立たなかったので、あまり目立たなかったが、昨シーズンと同じ打席数ならホームラン56本を打つハイペースだ。
さらに目を見張るのが出塁率の高さ。
ボールの見極めが明らかに昨シーズンよりも進化している。
ホームラン王を争っていた昨シーズンの終盤、相手からフォアボールはしょうがないとコースぎりぎりを攻められ続け「バッターとしてのスキルアップになった」と表現した経験が今、実を結ぼうとしている。
相手にとってさらに難しい打者になっている大谷選手を今シーズン、マッドン監督はまずは1番バッターとして起用していくつもりだ。

マッドン監督
「もし相手が翔平と勝負せずにフォアボールで出塁したら、2番はトラウト(MVPを3回受賞)、さらにレンドーン(2019年打点王)、ウォルシュ(昨季ホームラン29本)といったバッターが後ろに続く。翔平以外に4割近い出塁率があって、相手をかき回すような選手が出てこない限り、昨シーズンのMVPに1番を任せるつもりだ」
「もし相手が翔平と勝負せずにフォアボールで出塁したら、2番はトラウト(MVPを3回受賞)、さらにレンドーン(2019年打点王)、ウォルシュ(昨季ホームラン29本)といったバッターが後ろに続く。翔平以外に4割近い出塁率があって、相手をかき回すような選手が出てこない限り、昨シーズンのMVPに1番を任せるつもりだ」
長打力と俊足を兼ね備え、選球眼も向上した大谷選手がまず打席に立ち、去年はけがで早々に戦列を離れてしまったトラウト選手とレンドーン選手が続く。
リーグでも屈指の強力打線は相手にとって脅威でしかない。
リーグでも屈指の強力打線は相手にとって脅威でしかない。
ルール変更 大谷を後押し
さらに、大リーグのルール変更も大谷選手を後押しする。
今シーズンからは、先発ピッチャーが指名打者としても出場できるようになった。
これまで大谷選手が先発登板する時は、指名打者を使わずピッチャーとして打順に入っていたが、これでマウンドを降りた後もバッターとして試合に出続けることが可能になる。
今のところ、このルールを使いそうなのは大谷選手だけで、ファンの注目を集めた去年の二刀流の活躍が大リーグ機構を動かした形だ。
マッドン監督は4月7日の開幕戦でさっそくこの「大谷ルール」を適用し、大谷選手を史上初の「先発投手兼1番・指名打者」で起用する。
今シーズンからは、先発ピッチャーが指名打者としても出場できるようになった。
これまで大谷選手が先発登板する時は、指名打者を使わずピッチャーとして打順に入っていたが、これでマウンドを降りた後もバッターとして試合に出続けることが可能になる。
今のところ、このルールを使いそうなのは大谷選手だけで、ファンの注目を集めた去年の二刀流の活躍が大リーグ機構を動かした形だ。
マッドン監督は4月7日の開幕戦でさっそくこの「大谷ルール」を適用し、大谷選手を史上初の「先発投手兼1番・指名打者」で起用する。

マッドン監督
「ルール変更というものは、リーグがこれはマイナスだと思っているプレーを見直す時に起きるが、選手1人でその変化を引き起こすのは見たことがない。リッキー・ヘンダーソン(史上最多の通算1406盗塁)があれだけ盗塁したからといってベース間の距離が遠くなったりはしなかったし、誰か1人がホームランを打ちすぎたからといって球場のフェンスが高くなることはない。選手1人のためにルールが変更されるのは、今後100年間、見ることはないだろう」
「ルール変更というものは、リーグがこれはマイナスだと思っているプレーを見直す時に起きるが、選手1人でその変化を引き起こすのは見たことがない。リッキー・ヘンダーソン(史上最多の通算1406盗塁)があれだけ盗塁したからといってベース間の距離が遠くなったりはしなかったし、誰か1人がホームランを打ちすぎたからといって球場のフェンスが高くなることはない。選手1人のためにルールが変更されるのは、今後100年間、見ることはないだろう」
さらに、ナショナルリーグでも今シーズンから指名打者制が採用された。
これで大谷選手は、これまで代打での出場が多かったナショナルリーグのチームの本拠地で開催される試合でも指名打者として先発出場することができる。
2つのルール変更で大谷選手は今シーズン、40から50打席ほど増えることが見込まれる。
それは、ホームランを打つ可能性が高まることを意味する。
これで大谷選手は、これまで代打での出場が多かったナショナルリーグのチームの本拠地で開催される試合でも指名打者として先発出場することができる。
2つのルール変更で大谷選手は今シーズン、40から50打席ほど増えることが見込まれる。
それは、ホームランを打つ可能性が高まることを意味する。

いざ開幕 ことしも歴史を作る活躍へ
大谷選手は開幕を2日後に控えた最後のオープン戦を前にコンディションを問われ手応えを口にした。

大谷翔平選手
「多少、試合数や打席数が少ないが、みんな同じだと考えれば十分な準備ができた。フィジカルも含めて、いちばんいい状態かなと思う」
「多少、試合数や打席数が少ないが、みんな同じだと考えれば十分な準備ができた。フィジカルも含めて、いちばんいい状態かなと思う」
その充実ぶりを見ると、去年は届かなかったベーブ・ルース以来の「ふた桁勝利、ふた桁ホームラン」や、日本選手初のホームラン王、そして2年連続のMVPもあっさり成し遂げるのではないか、とさえ思えてしまう。
ことしも、私たちは伝説の目撃者になれる。
ことしも、私たちは伝説の目撃者になれる。

アメリカ総局 スポーツ担当記者
山本脩太
2010年入局 スポーツニュース部でスキー、ラグビー、陸上などを担当 おととし8月から現所属
山本脩太
2010年入局 スポーツニュース部でスキー、ラグビー、陸上などを担当 おととし8月から現所属
NHK 大リーグ 放送予定
