“市民殺害に関与の可能性” ロシア兵1600人余の名簿公開

ウクライナの首都近郊の町で、ロシア軍の撤退後、多くの市民の遺体が見つかったことを受けて、ウクライナ政府は、市民の殺害に関与した可能性があるロシア兵1600人余りの名簿を公開しました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は日本時間の5日夜、国連の会合で演説する予定で、ロシア軍の行為を戦争犯罪として追及するよう、国際社会に訴えるものとみられます。

ウクライナの首都キーウ、ロシア語でキエフの北西の町ブチャでは、今月、ロシア軍が撤退したあと、多くの市民の遺体が路上などで見つかりました。

ウクライナで警察を管轄する内務省の高官は、5日、NHKのインタビューに応じ、これまでに400人以上の遺体が見つかったことを明らかにし、「虐殺」だとロシア軍を非難しました。その上で、「氷山の一角にすぎない」と述べ国際社会の協力も得ながら、戦争犯罪の証拠を集めていく考えを強調しました。

こうした中、ウクライナ国防省の情報総局は、ブチャでの戦争犯罪に関与した可能性があるロシア兵1600人余りの名簿を4日、公式ホームページで公開しました。

名簿には、氏名や階級、それに生年月日などが記載され、戦争犯罪に関わったロシア軍の兵士を今後特定し、厳しく追及していく姿勢を示しています。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、日本時間の5日夜11時から開かれる国連の安全保障理事会の会合で、オンラインの演説を行う予定です。

2月にロシアの軍事侵攻が始まったあと、ゼレンスキー大統領が国連で演説するのは今回が初めてで、大統領はみずからも訪れたブチャの惨状を明らかにするとともに、ロシア軍の行為を戦争犯罪として追及するよう、国際社会に訴えるものとみられます。

これに対しロシア側は、軍の関与を否定し、ウクライナ側の自作自演だと主張しており、安保理の会合でも各国の非難に反発するとみられます。

ロシア国防省“ウクライナ側が自作自演のねつ造行為”と主張

ロシア国防省のコナシェンコフ報道官は5日、ウクライナ西部や南東部など各地にあるウクライナ軍の燃料施設を破壊したなどと発表しました。

さらに、コナシェンコフ報道官は「われわれが確認した情報によれば、ウクライナ軍は4日夜、首都キエフ北西にあるモシュンで、欧米メディアに報道させる目的で、ロシア軍によって市民が殺害されたとする新たな心理作戦を行った」として、ウクライナ側が自作自演のねつ造行為を行っていると一方的に主張しました。

さらに北東部スムイやコノトプなど他の地域でも、ウクライナ軍が同様の行為を行っていると指摘しました。

ロシア側は、これまでもロシア軍が撤退したキーウ北西にあるブチャで、多くの市民の遺体が見つかったことについて、ウクライナ側がうその情報を流していると主張しています。

ウクライナ内務省高官「氷山の一角にすぎない」

ウクライナで警察を管轄する内務省の高官が、NHKのインタビューに応じ、首都キーウ近郊で多数の遺体が見つかったことについて、400人以上が殺害された「虐殺」だとロシア軍を非難しました。

そのうえで「氷山の一角にすぎない」と述べ、国際社会の協力も得ながら、戦争犯罪の証拠を集めていく考えを強調しました。

ウクライナの内相の顧問を務めるデニセンコ氏は、5日、西部の都市リビウで記者会見し、首都キーウ近郊のブチャで、これまでに、子どもを含む400人以上の住民の遺体が見つかったことを明らかにしました。

デニセンコ氏は、ロシア軍による「虐殺」だと非難したうえで、拷問や性的暴行も数多く行われたと指摘しました。

そしてNHKとのインタビューに応じ「衛星写真や住民の証言などからロシア軍の犯行であることは明らかだ。ウクライナの警察や検察、それに国際的な専門家も加わって調査しており、ロシア軍による虐殺だと考えている。ロシアは否定しているが、彼らはいつもうそをつく」と非難しました。

そのうえで「ブチャで起きたことは氷山の一角にすぎない。国際的な司法の場で裁くよう、国際社会の協力も得ながら、戦争犯罪の証拠を集めていきたい」と述べ、ロシアの責任を追及していく考えを強調しました。

EU フォンデアライエン委員長 ゼレンスキー大統領と会談へ

EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長と外相にあたるボレル上級代表は今週、ウクライナの首都キーウを訪れ、ゼレンスキー大統領と会談することになりました。

詳しい日程は明らかにされていませんが、今月9日にポーランドの首都ワルシャワでウクライナから避難している人たちへの支援を呼びかける国際的な会合が開かれるのを前に訪問するとしています。