キーウ近郊で市民死亡 欧米各国新たな制裁へ ロシアは関与否定

ロシア軍が撤退したウクライナの首都キーウの近郊などで多くの市民が死亡しているのが見つかったことを受けて、アメリカが同盟国と連携してロシアへの新たな制裁を今週中に打ち出す見通しを示すなど、欧米各国は相次いで対応に乗り出しています。
一方、ロシア側は関与を否定し、欧米への対立姿勢を鮮明にしています。

ウクライナの首都キーウ・ロシア語でキエフ周辺に展開していたロシア軍について、アメリカ国防総省の高官は4日、再配置の動きが続いていると指摘し、これまでにおよそ3分の2の部隊が現地を離れたとする分析を明らかにしました。

ウクライナと国境を接するベラルーシに向けて北上しているか、すでにベラルーシへの移動を終えたとみられるということで、この高官は、これらの部隊が補給や人員の追加を受けたあと、ウクライナ東部などでの戦闘に再び投入される可能性があるという見方を示しています。

一方、ロシア軍が撤退を進めてきたキーウの北西にあるブチャで、多くの市民が路上で死亡しているのが見つかったことについて、ウクライナのゼレンスキー大統領は4日、公開したビデオメッセージで、300人以上の市民が殺害されたり、拷問を受けたりしたという情報があると明らかにしたうえで、死者の数はさらに増えるという見通しを示しました。

そのうえで、「犯罪に関与したロシア軍を一刻も早く特定するため、あらゆる手を尽くしている。彼らを罰するために、EU=ヨーロッパ連合や、国際刑事裁判所などの国際機関と協力していくことになる」と述べ、関係機関と連携してロシア軍の行為を厳しく追及していく考えを示しました。
欧米各国は相次いで対応に乗り出していて、このうち、アメリカ・ホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は4日、ロシアへの新たな制裁について「同盟国や友好国と具体的な内容を協議している」と述べ、今週中に同盟国などと連携して打ち出すことになるという見通しを示しました。

フランスの外務省は4日「多くのロシアの外交官の追放を決定した」と発表しました。この中でフランス外務省は、追放の対象となるロシアの外交官について「われわれの安全保障上の利益と相反する行動をしている」と指摘し、今回の決定はヨーロッパ各国と歩調を合わせた対応だとしています。地元メディアは追放の対象となるのは35人の外交官だと伝えています。
さらにドイツのベアボック外相も、4日の声明で、「ロシアの指導者たちの信じられないほどの残忍さを証明するものだ。この非人道的な行動に対抗しなければならない」として、首都ベルリンのロシア大使館に勤務する、かなりの数の外交官を追放する措置をとると発表しました。
こうした動きに対し、ロシア大統領府のペスコフ報道官は、「いかなる非難も断固として拒否する」と述べ関与を否定していて、ドイツによる外交官の追放についても、ロシア外務省のザハロワ報道官が「われわれは、このドイツの悪意ある行為に対応する」として、対抗措置をとる考えを示すなど、欧米への対立姿勢を鮮明にしています。

松野官房長官「状況踏まえつつ適切に対応」

松野官房長官は、午後の記者会見で、ドイツやフランスがロシアの外交官を追放する措置をとると発表したことに関連し「ロシアに対するわが国の制裁は、これまでG7を含む国際社会と連携し機動的に厳しい措置を講じてきたが、引き続き、今後の状況を踏まえつつ、適切に対応していく」と述べました。

そして「ウィーン条約では、理由を示さず、派遣国に対し、使節団の長もしくは外交職員が『好ましからざる人物』だと通告でき、通告を受けた場合、派遣国は召還するか任務を終了させなければならない。わが国として、ロシアの外交官に対してこうした通告を行ったケースはない」と述べました。

自民 茂木幹事長「断固として許されるべきではない」

自民党の茂木幹事長は記者会見で「民間人の殺害は国際人道法に違反する問題であり、戦争犯罪者と呼んでもいいと思う。断固として許されるべきではなく、必要な制裁は検討すべきだ」と述べました。

立民 西村幹事長「厳しく裁かれる必要がある」

立憲民主党の西村幹事長は記者会見で「民家や学校、病院などを無差別に攻撃するロシアの行動は明らかに戦争犯罪であり、プーチン大統領をはじめとするロシアの責任を国際法上明確にして、厳しく裁かれる必要がある」と述べました。

公明 山口代表「厳しく非難 制裁を検討していく必要」

公明党の山口代表は、記者会見で「一般市民の虐殺は戦争犯罪であり、厳しく非難する。国際人道法違反の行為に法の裁きを期さなければならない。日本政府は、国際社会と連携しながら、ロシアが暴挙を重ねないよう効果のある制裁を検討していく必要がある」と述べました。

国民 玉木代表「追加の経済制裁を」

国民民主党の玉木代表は記者会見で「無抵抗の女性や子どもに容赦ない暴力が向けられている事実は明白な戦争犯罪であり、ジェノサイドと言ってもいい状況だ。日本にとっても厳しい判断になるが、ロシアからの原油と天然ガスの輸入をいったん停止するといった追加の経済制裁を行い、その分のエネルギーは安全性が確認された原子力発電所を動かすなどして対応すべきだ」と述べました。

そのうえで「国連改革が不可欠だ。ロシアの常任理事国としての資格を停止するための決議を日本としてリーダーシップを発揮して行うべきだ」と述べました。