国際

【現地は今】ロシア軍迫る なぜミコライウは「英雄の都市」?

フロントガラスにロシア語やウクライナ語で「子ども」と書かれたバス。
ウクライナの南隣・モルドバの国境に次々に到着しているバスに乗っているのは、ミコライウの人たちです。
ウクライナ南部の要衝は、ロシア軍の激しい攻撃にさらされています。
ゼレンスキー大統領が「英雄の都市」と呼ぶミコライウで起きていることとは。

空爆とミサイル 逃れた人たちは?

ミコライウからのバスは、避難を希望する住民のために当局が用意しました。
住宅や病院までも攻撃の対象となり、住民たちはロシア軍の攻撃がこのところ無差別になってきていると話します。

モルドバの国境で私たちが話を聞いた51歳の女性は「ミコライウではずっと空爆が続き、空襲警報のサイレンも鳴り続けています。家の地下のシェルターに隠れて生活していましたが、ロシア軍に包囲されるのが怖いので脱出しました」と話しました。
また34歳の女性は「最初は郊外で戦闘が起きていましたが、私たちが住んでいる街なかでも上空にミサイルが飛ぶようになりました。自宅はまだ大丈夫ですが、隣町は攻撃で悲惨な状況です。市民がねらわれていると実感して残っているのが怖くなりました」と話しました。
モルドバに集団避難のバスが到着し始めたのは3月20日ごろから。
攻撃が次第にエスカレートしていた時期です。

ミコライウ なぜ標的に?

ロシア軍にとってのミコライウの重要性は、地図を見ると一目瞭然です。
人口47万人、造船の町として知られる古くからの水路の要衝は、陸路の要衝でもあります。

黒海沿いに部隊を進めるロシア軍は、実効支配するクリミア半島の付け根に近い都市ヘルソンを掌握。
ミコライウは、そこからロシアが軍事目標に定めているとみられる最大の湾港都市オデーサに向かう途中にあります。
3月18日には、ミコライウにある軍の施設がロシア軍によるミサイル攻撃を受け、少なくとも50人が死亡しました。
21日にはガソリンスタンドが攻撃されて3人が死亡、市民の犠牲も増え続けています。

ロシアは親ロシア派の武装勢力が影響力を持つウクライナ東部の軍事作戦に重点を置いていますが、3月26日にはミコライウ郊外の燃料施設を巡航ミサイル「カリブル」などで破壊したと発表しています。
さらに、29日には州庁舎がロケット弾による攻撃をうけ、これまでに14人の死亡が伝えられています。

ミコライウにとどまる住民は

「両親がミコライウに残ったままで心配だ」
日本で暮らすウクライナ人の女性は、心臓病の母親と高血圧の父親の身を案じていました。
その日、3月13日は両親の住む地域はロシア軍の攻撃で電気供給網が機能しなくなり、大規模な停電が発生していました。
最低気温が氷点下まで落ち込む中、電気が使えなければ寒さで体調を壊すのではないかと心配する娘に、父親のニコライさん(68)からは「無事だ」と短いメッセージが届きました。
最低限のことだけ伝えたのは、停電でスマートフォンが充電できない中での備えでした。

その6日後、私たちはニコライさんに電話で話を聞くことができました。

町では何が変わりましたか?

「きょうもロシア軍による攻撃の危険を知らせる警報が出ていて、先ほど解除されたばかりです。最近は1日に数回、警報のサイレンが鳴り、地下への避難を余儀なくされています。
ウクライナ軍が健闘しているため、ロシア軍はミコライウに入ってこられないと聞いています。さらにロシア軍が町に入れないよう、周辺の川にかかる橋を上げて遮断しています。ロシア軍は地上からの攻撃が難しくなっている分、代わりにミサイルで攻撃しているようです。
最近はロシア軍の攻撃が少し収まってきたので、オデーサ側の南ブーフ川にかかる橋は少しずつ通れるようになっています。ただキーウ側の川はまだ危ないということで、橋はまだ遮断されています」。

身の危険を感じますか?

「ロシア軍が侵攻してから、ミサイルや空爆の音がきこえるようになりました。きょうは、寝ている間にも聞こえました。ヘルソンからも飛んできているようで、大きな音がします。ミコライウには重要な造船所もあるので、破壊したいのではないでしょうか」。

生活必需品は足りていますか?

「はじめは薬を確保するのが大変でした。薬局では長い行列ができ、客がパニックになっていました。その後、次第にボランティアがサポートしてくれるようになり、私のところにも薬を持ってきてくれるようになりました。今はオデーサ方面の橋が通れるようになったので、薬局の行列はなくなったようです。
精神安定剤が少なくなっています。妻はサイレンの音を聞き続けて調子が悪くなり、横になっています。妻も私も心臓病や高血圧の薬を服用していますが、あまり体調の改善につながらず、精神安定剤が一番よく効きます。それで、たくさん服用しています。やはり、怖くて落ち着かないのです」
「また、以前は橋が遮断されていた影響でスーパーは食料が売り切れていましたが、先日妻と一緒に行ったときには買うことができました。ロシア軍が少し遠のいたことで、生活も少し楽になってはいます」。

避難しないのですか?

「ここミコライウから他の国へ避難するには、長い旅になります。私はもともと運転手として働いていましたが、今は血圧が240に達することもあり、運転は非常に危険で難しいと感じます。
さらに、聞いた話ですが、ウクライナ国内にはロシア軍から逃げた兵士がいっぱいいて、みんな空腹のため通る車をねらっていると聞きます。武器を持っていますので、普通の民間人でも殺したり、傷つけたりしているそうです。とりあえず今は、地下に隠れる生活を続けながら、ただ祈り続けるだけです」。

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