国宝の工芸品「銀鶴」から金の成分が検出 奈良 春日大社が所蔵

奈良県の春日大社が所蔵し、30年以上にわたって普通切手のデザインにも採用された国宝の工芸品「銀鶴」の表面から金の成分が検出されたことが奈良国立博物館の分析で分かりました。
博物館は、製作当初は全体に金めっきが施された華やかな姿だった可能性があるとみています。

高さ13センチほどの「銀鶴」は、平安時代の12世紀ごろに春日大社の境内にある若宮神社に奉納されたと伝わり、翼を広げて飛び立つ瞬間の鶴の優美な姿を表現しています。

今は鈍い銀色をしていますが、去年2月、複製を作るため奈良国立博物館が頭や背中、それに左側の翼など7か所で科学的な分析を行ったところ、すべての場所から金の成分が検出されました。

また、同時に水銀も検出されたということで、博物館は銀などで作った鶴の表面に金と水銀を混ぜ合わせたものを塗る方法によって金めっきが施されていた可能性が高いとみています。

「銀鶴」は、若宮神社に奉納されたほかの工芸品と共に国宝に指定され、1981年からは30年余りにわたって100円の普通切手のデザインに採用されて親しまれました。

奈良国立博物館で科学的な分析を担当した鳥越俊行さんは「銀だという固定観念があったと思うが、調査で新たに見えてくるものもある。平安時代としては類例が少なく貴重だ」と話しています。

「銀鶴」とは

「銀鶴」は、平安時代後期の12世紀に藤原摂関家などから春日大社の境内にある若宮神社に奉納されたと伝わるいわばミニチュアの宝物、「若宮御料古神宝類」の1つです。

13センチほどの大きさでまさに飛び立とうとする瞬間の鶴の姿が表現され、広げた翼には1つ1つの羽根の様子が高度な技術で細かく彫り込まれています。

1955年には、ほかの工芸品と共に国宝に指定されました。

春日大社によりますと、「銀鶴」は長期間にわたって若宮神社の本殿に納められ、1930年以降は春日大社の境内の施設で保管されてきました。

見た目が銀色だったことから長く「銀鶴」と呼ばれてきましたが、今回の分析によって、銀と銅の合金に金めっきが施された華やかな姿だった可能性の高いことが分かりました。

春日大社国宝殿の松村和歌子主任学芸員は、「銀で作るだけでも特別なものだが、それをさらに上質で、豪華なものに見せたいという思いの表れだと思う」と話しています。

若宮神社では現在、20年に1度、本殿を修理する「式年造替」が行われています。
春日大社は、これに合わせて「銀鶴」の複製を作る予定ですが、今回の分析結果を踏まえて、金色をした新たな姿にするということです。

一方で、春日大社の花山院弘匡 宮司は「『銀鶴』という名称は、その特徴を表現してつけられたものです。銀で出来ていることに変わりはないので、名前を『金鶴』などに変更する予定はありません」と話しています。