航空会社の欧州便 一部で運航も苦慮 ロシア上空避けルート変更

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、航空各社は飛行が制限されているロシア上空を避け大きくう回するルートでヨーロッパ便を運航しています。

通常より運航時間が長くなり燃料費もかさむなどしていて、事態が長引けば気軽にヨーロッパを行き来できなくなるという懸念も出ています。

ロシア上空避けるルートで一部を運航 日本の航空会社

ロシアのウクライナへの軍事侵攻後、ヨーロッパの航空会社はロシア上空の飛行を制限され、日本の航空各社もリスクを避けるために飛行を取りやめています。

影響を受けたのが、ロシア上空がルートとなるヨーロッパ各国を結ぶ便です。

当初は全便が欠航するなどしましたが、日本の航空各社は少しでも路線を確保しようと、ロシア上空を避けるルートで一部の運航を始めました。

日本航空 アラスカ アンカレジ経由の北回りルート復活

このうち日本航空は、アラスカのアンカレジなどの上空を通過する「北回りルート」でロンドン行きやフィンランドのヘルシンキ行きの便を運航しています。

同じく当時のソビエト上空を飛行できなかった冷戦時代、アンカレジはヨーロッパ便を運航する上で重要な拠点として支店を設け、1991年まで旅客便を、2010年まで貨物便を運航していました。

旅客便では30年ぶりに復活した不慣れなルートのため、運航計画を作る部署では、通常は30分ほどで済む作業を4、5時間かけて行うこともあり、火山の噴煙などの災害リスクや軍事演習が行われるエリアなど、地域特有の事情を把握して慎重に計画を立てています。

また、運航前にはパイロットたちが集まり、航路図を見ながら、ルート上の気象状況や緊急着陸する場合に利用することになる各国の空港の特徴などを確認していました。

日本航空の瀬川清司機長は「今までにない飛び方になるので、みんなの経験と知恵を合わせ、チームワークをよくして安全運航を全うしたい」と話しています。

全日空は中央アジアルート 飛行時間増で乗員の人繰りに苦労

一方、全日空は、トルコの上空などを通過する「中央アジアルート」で、ドイツのフランクフルト行きの便と、ベルギーのブリュッセル行きの便を運航しています。

ロシア上空を通過する通常のルートと比べて運航時間が最大で4時間近く長くなることから、乗務時間の制限があるパイロットの人数を3人から4人に増やしています。

しかもパイロットは、機種ごとに操縦資格が要るなど、誰でもよいという訳にはいかず、シフトを作る部署では対応に追われています。

この日は、5日後のフランクフルト行きの便に追加で乗務できる人を探し、カナダ・バンクーバー行きの便に乗務する予定だったパイロットに急きょ変更をお願いし承諾をもらっていました。

全日空の山邉芳恵さんは「3月の勤務はほぼ作り直しになりました。調整に苦労しますが、運航を守るためにクルーを探してシフト作りをやりきるしかないです」と話していました。

ヨーロッパが遠くなる 燃料費もかさみ長引けば運賃値上げも

日本の航空各社が運航するヨーロッパ便は現在4路線。

以前の8路線から半減しています。

運航時間が大幅に延び、パイロットの体調管理上、困難だとしてフランス・パリ行きの旅客便などの運航は再開できていません。

さらに、全日空や日本航空の関係者によりますと、運航距離が延びたことでかさむ燃料費の問題も深刻で、今のところ各社は運賃を据え置いていますが、事態が長引けば、値上げも検討せざるをえないということです。

今後、新型コロナの感染拡大が収束に向かい各国との往来の規制が緩和された場合でも、気軽にヨーロッパを行き来できなくなるという懸念も出ていて、各社は少しでも燃料を節約しようと追い風に乗りやすいルートの開拓などを進めています。