ウクライナ大統領 “マリウポリ住民3071人の避難に成功”

ロシア軍が掌握を目指して攻勢を強めているウクライナ東部の要衝マリウポリをめぐって、ウクライナのゼレンスキー大統領は、住民3071人を避難させることに成功したと明らかにしました。一方、ロシア側が設置した住民の避難ルートについて、ICRC=赤十字国際委員会はマリウポリに派遣した支援チームが、安全が確保できず引き返したと発表しました。

ロシアが軍事作戦の重点を移す方針を示しているウクライナ東部では1日、ウクライナ軍の施設がミサイル攻撃を受けたほか、ロシア軍が要衝マリウポリの掌握を目指して攻勢を強めています。

こうした中、ウクライナのゼレンスキー大統領は日本時間の2日午前、国民向けに新たな動画を公開し、多くの住民が取り残され人道危機への懸念が高まっているマリウポリから住民3071人を避難させることに成功したと明らかにしました。
一方、ロシア国防省が設置した「人道回廊」と呼ばれる避難ルートについて、ICRC=赤十字国際委員会は住民たちを避難させるためマリウポリに派遣した支援チームが1日、安全が確保できず引き返したと発表しました。

ICRCは2日に再び支援活動を試みる予定ですが、住民の避難は依然として難航しています。
マリウポリで1日に撮影された映像では、多くの建物が焼け焦げたり崩れ落ちたりして甚大な被害が出ている様子が確認できます。

また、疲れた表情でたたずむ子どもや通りを歩く人の姿のほか、戦車などが走っている様子が映っています。

夫と2人で孤児院の地下に避難しているという女性は「持てるだけの物を持ってここに来ました。住んでいた家がどうなったのかは分かりません」と疲れ切った表情で話していました。

戦況をめぐって、ゼレンスキー大統領は新たに公開した動画の中で「ウクライナ北部ではロシア軍がゆっくりと、しかし目に見えて撤退している」と述べました。

一方で、「東部では非常に困難な状況が続いている。ロシア軍はドンバスやハルキウで軍備を増強していて、新たな攻撃に向けて準備している」と述べ、ロシア軍による激しい攻撃が迫っているとして懸念を示すとともに、徹底抗戦を続ける姿勢を強調しました。

国連のグテーレス事務総長は1日、ニューヨークの国連本部で記者団に対し、ウクライナでの人道的な停戦の実現に向けて、人道問題を担当するグリフィス事務次長が3日からモスクワを訪問する予定だと明らかにしました。

グリフィス事務次長はその後、ウクライナの首都キーウ、ロシア語でキエフも訪れるということで、停戦に向けた外交努力が続けられています。