日銀短観 大企業の景気判断 製造業・非製造業とも7期ぶり悪化

日銀が発表した短観=企業短期経済観測調査で、大企業の景気判断を示す指数が製造業、非製造業とも7期ぶりに悪化しました。ロシアのウクライナ侵攻をきっかけとした原材料価格の一段の高騰が、景気の重荷になっていることが浮き彫りになりました。

日銀の短観は、国内の企業1万社近くに3か月ごとに景気の現状などを尋ねる調査で、景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた指数で景気を判断します。

今回の調査は2月下旬から3月31日にかけて行われました。

それによりますと、大企業の製造業の指数はプラス14ポイントと、前回・去年12月の調査から3ポイント悪化しました。

また、大企業の非製造業の景気判断も、前回から1ポイント悪化してプラス9ポイントとなりました。

悪化は、製造業・非製造業とも新型コロナウイルスの感染拡大で初めての緊急事態宣言が出された影響を受けた2020年6月の調査以来、7期ぶりです。

企業の景気判断は、持ち直しの動きが続いてきましたが、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに原材料価格が一段と高騰したことで、企業の収益が圧迫され景気の重荷になっていることが浮き彫りになりました。

さらに、3か月後の見通しでは、大企業の製造業で5ポイントの悪化、非製造業で2ポイントの悪化が見込まれ、引き続き感染拡大や原材料価格の高騰が先行きにも影を落としています。

悪化が目立つのは…

今回の短観で、景気判断の悪化が目立つのは、大企業・製造業では
▽「紙・パルプ」が14ポイント悪化して、マイナス3ポイントに、
▽「食料品」が7ポイント悪化してマイナス5ポイントになり、景気が「悪い」と答えた企業の方が多いことを示すマイナス圏に落ち込みました。
▽ガラスやセメントなどの「窯業・土石製品」も9ポイント悪化して、0ポイントとなりました。

いずれも原油や穀物など原材料価格の上昇を受け、収益が圧迫されていることが主な要因です。
また、3か月後の先行きについては、原材料価格の上昇の影響でさらに幅広い業種で悪化が見込まれていて、「石油・石炭製品」「木材・木製品」「鉄鋼」がそれぞれ20ポイントも悪化すると見込まれています。
「自動車」は、今回は7ポイント悪化のマイナス15ポイントでしたが、先行きは部品不足が緩和されるとして14ポイントの改善を見込んでいます。

一方、大企業の非製造業では、
▽遊園地やスポーツクラブなどの「対個人サービス」が前回から12ポイント悪化のマイナス14ポイント、
▽ホテルや居酒屋などの「宿泊・飲食サービス」も5ポイント悪化のマイナス56ポイントとなりました。

新型コロナの感染拡大や仕入れコストの増加が理由だとしていますが、先行きは感染の落ち着きを受けて、いずれも大幅な改善を見込んでいます。

日銀 4年ぶりに調査対象企業を見直し

日銀では、経済の実態を正確に把握するため短観の調査対象となる企業の入れ替えを行っていて、今回の調査で4年ぶりに対象企業の見直しを行いました。

これに基づいて前回・去年12月に公表された指数を算出し直すと、▽大企業・製造業の指数がプラス18からプラス17に、▽大企業・非製造業はプラス9からプラス10になるとしています。

前回の大企業・製造業の指数は、前々回・去年9月の調査と比べて「横ばい」でしたが、日銀はこの評価については変わらないとしていて、今回が7期ぶりの悪化になると説明しています。

松野官房長官「持ち直しの動きが続くも一部に弱さが見られる」

松野官房長官は閣議のあとの記者会見で「持ち直しの動きが続いているものの、新型コロナによる厳しい状況が残る中、一部に弱さが見られる状況を反映したものと考えている。原油や原材料価格の高騰などが国民生活や経済活動に重大な影響を及ぼし回復の妨げになることを避けるため、先に岸田総理大臣から緊急対策の策定の指示があったので、今月末を目途の取りまとめに向けて具体的な施策の検討を進めたい」と述べました。

山際経済再生相 “コスト上昇の結果としての数字が表れている”

1日発表の日銀短観で、大企業の景気判断を示す指数が7期ぶりに悪化したことについて、山際経済再生担当大臣は1日の閣議のあとの会見で「企業物価そのものが去年の年末から相当上がっていて、コストが上昇し、企業の業績にそれなりに影響を与えうると我々としては言い続けてきた。その結果としての数字が表れていると認識している」と述べました。

そのうえで「景気が悪くならないようにという思いを持って対策をやっているので、それを確実に実行していくことが必要だ」と述べました。