上海 感染拡大で外出制限 食料品などまとめ買いも

新型コロナウイルスの感染が拡大している中国最大の経済都市 上海では、一日に確認される市中感染が5000人を超え、市内全域を2つの地域に分けて段階的に厳しい外出制限を行っています。
日本人も多く住む西部の地域では、4月1日から外出制限が始まるのを前に、食料品などをまとめ買いする人の様子も見られました。

中国では、新型コロナウイルスの感染が全土で拡大していて、30日、一日の市中感染は無症状の人を中心に8454人確認され、中でも中国最大の経済都市の上海が最も多く、5653人に上りました。

上海では、東部の地域で3月28日から4月1日まで厳しい外出制限が行われ、日本人が多く住む西部の地域でも4月1日から5日まで同様の措置がとられる予定です。

西部の地域で外出制限が始まるのを前に、31日、現地に住む日本人も利用するスーパーには、開店直後から多くの人が訪れてまとめ買いする様子が見られました。
店内に入るまでに1時間以上かかるほどの長い行列ができ、多くの人が野菜などの生鮮食品を買い込んでいました。

日本人の駐在員の男性は「あすからロックダウンということで、買いだめに来ました。4日間ぐらいは自宅のドアからも出られず、子どもがかわいそうですが、しかたがないです」と話していました。

一方、外出制限が行われるのを前に病院で診察を受けて薬をもらおうとする人も多く、30日も病院には行列ができていました。

上海市当局は、緊急の治療が必要な人は外出を認める方針を示していますが、厳しい外出制限の中で適切に治療が受けられるかなどを心配する声も聞かれました。

がんの治療のため南部の福建省から来た女性は、入院ができず、通院して治療を受ける必要があるとしたうえで「外出を許可してもらえる宿泊場所があるか聞いていますが、もしなければ病院に来ることができません。治療を受けられないと、危険な状態になります」と涙ながらに話していました。

すでに外出制限が行われている東部では、体調を崩した人がすぐに病院に行くことができないという訴えも相次ぎ、当局への批判の声が上がっています。

上海市当局の幹部は31日の記者会見で、感染力の強いオミクロン株の感染が収まらず、準備や対応が不十分だったとして謝罪に追い込まれています。

ぜんそく症状の患者 救急車に搬送など拒否され 自宅で死亡

厳しい外出制限が行われている上海の東部の地域で、30日、ぜんそくの症状を訴えた患者が、同じ住宅地の敷地に医師が乗った救急車が止まっていたにもかかわらず病院への搬送やAEDの貸し出しを拒否されて、自宅で死亡し、地元当局が謝罪するとともに、医師を停職処分にしました。

上海では3月23日にも、ぜんそくの症状を訴えた看護師が、勤務先の病院が感染対策を理由に救急外来を停止していたため診察を受けられず、死亡しています。

西部で飲食店経営の日本人 厳しい対応迫られる

上海で行われている新型コロナウイルスの感染対策をめぐっては、現地で飲食店を経営する日本人も厳しい対応を迫られています。

沖縄県出身の西原圭佑さん(34)は、日本人が多く暮らす西部の地域で去年10月、飲食店を開いて、沖縄料理を提供しているほか、店内で三線を使った音楽も披露し、多くの客でにぎわっていたということです。

しかし、上海で感染が急速に拡大し、今月中旬からは店内での飲食が禁止されたほか、4月1日から西部の地域で外出が制限されるため、先週から始めた出前サービスもできなくなり、売り上げが大きく減少することになりそうだということです。

西原さんは「オープンした時は毎日、店内でお客さんに食事などを楽しんでもらっていました。中国もコロナを抑えるためにいろいろな対策をしているので、個人でできる対策をして、一日も早く元の生活に戻れるよう願うばかりです」と話していました。

帰国予定の日本人 空港に移動し寝泊まり

上海では、厳しい外出制限で帰国を予定している日本人が空港に到着できないおそれも出ていて、中には、住む地域で外出が制限されるのを前に、今週末に出発する便に乗るために空港に移動することを決めた人もいます。

会社員の山下大介さんは、4月3日の便で日本に帰国する予定ですが、住んでいる西部の地域では外出制限が始まるため、31日のうちに東部にある浦東空港に移動することを決めました。

東部では4月1日まで外出制限が行われているため、タクシーや公共交通機関の運行も停止され、移動手段は航空券を持っている人が利用できるシャトルバスだけで、山下さんは31日夜は空港内で寝泊まりするということです。

東部の外出制限が予定どおり解除された場合は、事前に予約した空港近くのホテルに移動できるということですが、感染者が増え続けていることから外出制限が延長されるのではないかと不安を感じています。

山下さんは「日本に帰るまで空港で寝泊まりする覚悟です。仮に外出制限が延びてしまうと、事前に手配していたものがすべてだめになってしまうので、帰国するまで緊張した状態が続きます」と話していました。

山下さんは帰国後、4月11日に本社に出社する予定ですが、予定どおりの便に乗れないと、日本への航空便が少ないことから、帰国がさらに1か月以上延びてしまう可能性もあり、仕事にも影響が出てしまうということです。

上海には去年10月の時点で中国で最も多いおよそ3万8000人の在留邦人がいますが、年度替わりのこの時期は帰任予定の駐在員が多く、こうした人たちへの影響も懸念されています。