京大iPS細胞研究所 山中所長退任 “実用化 ここからが正念場”

京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長が31日で所長を退任するのを前にNHKの取材に応じ、iPS細胞の実用化について「ここからが正念場だ」と語りました。

体のさまざまな組織になるiPS細胞の生みの親で、ノーベル医学・生理学賞を受賞した山中伸弥さんは、平成22年(2010年)に京都大学iPS細胞研究所が設立されて以来、12年間にわたって所長を務めてきました。

山中さんは、3月31日で所長を退任するのを前にNHKの単独インタビューに応じました。

この中で山中さんは退任について「研究所ではこの12年間で、すばらしい研究者がたくさん育っていますので、私がトップを続けるよりも別の先生にバトンタッチするのがふさわしい」と述べました。

この12年間で実現できたこととしては、高い品質のiPS細胞を研究機関などに供給する「ストック事業」をあげ「ストック事業で作った臨床用の細胞の第1号を出荷したときの安ど感は、忘れることができない瞬間です。私たちがまとめ役になり、オールジャパンの体制を構築できたことで、これまでのところ、日本の研究が順調に進んでいるのではないかと考えています」と話しました。

iPS細胞の実用化に向けた今後の見通しについては、「マラソンに例えるならば中間点の折り返しを過ぎたところだが、ゴールが近づけば近づくほど多額の研究資金が必要になる。ここからの後半が正念場だ」と述べ、所長を退任したあとも、研究機関にiPS細胞を供給する「iPS細胞研究財団」の理事長として、企業との橋渡しや資金確保などを支援していく考えを示しました。

また山中さんは、今後も研究者として研究所に残り、iPS細胞に関連する研究も行うということです。

次の所長には、iPS細胞を使ったパーキンソン病の治療の研究を進めている高橋淳教授が4月1日から就任します。

京都大学iPS細胞研究所とは

京都大学iPS細胞研究所はiPS細胞の研究を基礎から応用まで一貫して行う世界初の研究施設として、12年前に設立されました。

iPS細胞から作った細胞や組織を移植して、失われた機能を回復させる再生医療の研究や、患者由来のiPS細胞を使った病気のメカニズムの解明、それに新薬の開発を目指す研究など、これまでに1100を超える研究論文が発表され、実際にヒトを対象にした臨床研究も行われています。

特に日本の研究を加速させたのが、再生医療用のiPS細胞をあらかじめ作製・保存し、ほかの研究機関などに供給するストック事業です。

この事業では、特殊なタイプの免疫を持つ人の細胞から移植しても拒絶反応が起きにくいiPS細胞を作ることで、品質の高い細胞の安定的な供給を実現しました。

これまでに遺伝的に日本人の40%ほどに対応できるiPS細胞を作製し、ストックしていて、目や心臓、脳、脊髄など10以上の再生医療の臨床研究などで活用されています。

事業の運営は、3年前に設立されたiPS細胞研究財団に引き継がれ、現在の研究所は基礎研究や臨床研究により特化しているということです。