日本初「食べられる培養肉」 東京大学と食品メーカーが作成

肉の細胞を培養して新たな肉を生み出す「培養肉」について、東京大学と食品メーカーの研究グループが、実際に人が食べても大丈夫な素材と技術を使って牛肉から「食べられる培養肉」を国内で初めて作り出しました。

この研究は東京大学の竹内昌治教授と「日清食品ホールディングス」などのグループが行いました。

グループでは、牛肉の細胞からステーキ肉を再現する研究を進めていますが、これまでは研究用の素材を使っていたため実際に食べることはできませんでした。

このため食用に対応した培養液などを独自に開発し「食の安全」などの観点から研究の進め方について大学の委員会で審査を受け、食べても大丈夫な牛肉の培養肉を作成したということです。

できた培養肉は、重さが2グラムほどで縦4.5センチ、横2センチ、厚さ1ミリのしゃぶしゃぶ肉のような形をしていて、本物と同じように筋肉の組織が立体的に再現されているということです。

グループによりますと、こうした技術で、食べても大丈夫な培養肉が作られたのは国内では初めてだということです。

29日に東京大学で試食が行われ、培養肉を湯せんで加熱したあと、研究者たちが何度もかみしめながら味や食感などを確かめました。
日清食品ホールディングスの研究員、古橋麻衣さんは「しっかりとしたかみ応えだった。味はまだ牛肉とは言えないかもしれないが、あっさりとしたうまみ成分がじわっと感じられた」と話していました。
グループでは、3年後には100グラム程度の培養肉のステーキを実現したいとしていて、竹内教授は「培養肉を食べて評価しながら研究を進めることができる環境がようやく整った。将来的には医療や細胞を使ったものづくりにも応用が広がっていくと思う」と話していました。

「培養肉」とは

「培養肉」は、牛などの動物や魚からとった筋肉の細胞を栄養成分が入った液を使って培養して作られる肉です。
実現すれば、人口増加に伴う食肉不足や畜産が環境に与える負荷などの解決につながると期待され、世界中で研究が進められています。

このうち、2013年にはイギリスで培養肉のハンバーガーの世界で初めてとなる試食会が行われ、当時は1個当たり3000万円以上のコストがかかることが話題となりました。

ただ、ハンバーガーのパテのようにミンチ状の培養肉を作る技術は進んでいますが、ステーキ肉のようなかたまりの肉にするには、筋肉や血管などを立体的に構築する必要があり、再現が難しいのが現状です。

「培養肉」の可能性は

「培養肉」は、実現すれば環境にやさしく、持続可能な食材になるとその可能性に期待が高まっています。

人口増加などにより世界的に食肉の需要は高まっていますが、食肉の生産には広い土地や大量の飼料などが必要となるうえに、家畜が出す温室効果ガスの問題も指摘されています。

仮に培養肉が大量生産できるようになれば、こうした問題が解決する可能性があるだけでなく、衛生管理された環境で生産できることから家畜の病気のリスクなどが減り、安定的で持続可能な生産につながるとみられています。

さらに、培養肉を実際の肉の組織に近づける技術はヒトのからだを再生する再生医療にも応用できると期待されています。

「食べられる培養肉」乗り越えた課題は

国内で「食べられる培養肉」を作るには、食用に適した素材だけで培養する技術的な側面と、研究の進め方や倫理面に問題がないかなどの制度的な側面で一定の水準を満たす必要があります。

グループでは、食品としても使うことができる牛の血液の成分から、栄養成分が含まれた培養液や細胞が増えていく際の足場となる材料を独自に開発したということです。

また、研究の計画についても東京大学の倫理審査専門委員会の審査を受け、去年11月に承認を得たということです。