かつてウクライナ大統領を案内 原爆資料館の元館長の思いは…

ロシアのウクライナへの軍事侵攻が続き、ロシアのプーチン大統領は核兵器の使用の可能性もちらつかせています。17年前、当時のウクライナ大統領に広島市の原爆資料館を案内した元館長は「人類に対する脅しだ」として強い憤りを示しています。

1997年から9年間、広島市の原爆資料館の館長を務め、自身も母親の胎内で被爆した畑口實さんは2005年、原爆資料館で当時のウクライナ大統領のユーシェンコ氏を案内しました。

畑口さんによりますと、ユーシェンコ氏は原爆投下後の広島の街を再現したパノラマ模型をじっと見つめ、きのこ雲の下で一瞬のうちに命を奪われた人々の苦しみに思いを巡らせていたといいます。

また、放射線が身体に与える影響について畑口さんが説明すると、事故を起こしたチェルノブイリ原発のある国の大統領として聞き入り、当初の予定時刻を過ぎても見学を続けるほど、熱心に展示を見て回ったということです。

原爆資料館の見学を終えたユーシェンコ氏は「文明のもっとも恐ろしい大惨事を心に刻みます。平和を守るためにあらゆる努力をして将来あのような悲劇を阻止することが我々の義務です。核の脅威のない世界をつくるために日本国民と連帯しています」とメッセージを残しました。

畑口さんはユーシェンコ氏から依頼され、引き続き原爆ドームを案内したということで「被害のありさまがそのまま残された原爆ドームを自分の目で見て、感じて、2度とこういうことがあってはいけないと感じたのではないかと思う。いろいろな国家元首が来るが熱心さが印象深い人の1人」と当時の印象を語りました。

ロシアがウクライナに軍事侵攻したことについては「あちこちで起こる虐殺や破壊された街、避難する国民を見ると悲しくて、早く侵略をやめて欲しいと思う」と話していました。

また、ロシアのプーチン大統領が核兵器の使用の可能性をちらつかせていることについて畑口元館長は「核を使用したらどうなるかということはみんな分かっていると思う。核兵器の使用をちらつかせるというのは地球人類を脅す以外の何ものでもないし、非常に憤りを感じる」と話していました。