【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(31日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻の開始から1か月余りとなります。ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる31日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ロシア ウクライナ東部の掌握地域拡大と発表

ロシアの国防省は、軍事作戦の重点をウクライナ東部に移す方針を示していて、31日には、東部にあるウクライナ軍の複数の燃料基地を巡航ミサイルで破壊し、東部での掌握地域を拡大したと発表しました。

東部でのロシア軍の動きについて、アメリカ国防総省は、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の武装警備員およそ1000人がウクライナ東部に展開しているほか、空爆が優先的に行われていると分析しています。

東部の要衝マリウポリでは深刻な人道危機が続き、包囲を続けているロシア軍が数日以内に市内を完全掌握するという見方も出ています。

マリウポリの現状について、イギリス国防省は「激しい戦闘が続いているが、ウクライナ側が市の中心部を掌握している」と指摘しました。

一方、ロシア側は29日の停戦交渉の結果、首都キエフ周辺と北部のチェルニヒウでの軍事作戦を大幅に縮小するとし、ロシア国防省は30日「キエフとチェルニヒウ方面での主な任務はすべて完了した」と発表しました。

ただ、これについてイギリス国防省は31日「チェルニヒウ周辺では激しい攻撃が続いている。また一部の部隊は撤退したが、キエフの東側と西側ではロシア軍が陣地を維持し、キエフ郊外では数日以内に激しい戦闘がおきる可能性もある」と指摘しています。

またアメリカ国防総省も、ロシア軍の部隊の一部が、ウクライナと国境を接するベラルーシに移動し、再編成や補給を行う可能性があると指摘するなど、キエフ周辺にも、依然としてロシア軍の脅威が残されているとみています。

マリウポリの衛星写真 赤十字マークある施設に穴

人工衛星を運用するアメリカの企業「マクサー・テクノロジーズ」は、ロシア軍の侵攻で深刻な人道危機が続いているウクライナ東部のマリウポリを29日に撮影したとする衛星写真を公開しました。

写真には、屋根に赤十字のマークがある施設に複数の穴があいているのが確認できます。

この施設について、ICRC=赤十字国際委員会は30日、医療品や救援物資を病院やシェルターに届けるために活用していた倉庫だと明らかにしました。

この倉庫では、3月15日以降スタッフは働いておらず、被害の状況は把握できないとしています。

ICRCは発表で「人道支援に使用されるものは、国際法のもとでどのような時にも尊重され守られなければならない。インフラや病院、医療関係者を標的にすべきではない」としてしています。

そのうえで「当事者は、市民を攻撃から守るためにあらゆる手を尽くさなければならない。マリウポリでは、人々は安全に避難する手段もないまま閉じ込められ、生きるのに最低限必要なものさえ不足している」として、人道状況の改善の必要性を強調しました。

NATO事務総長“ロシアの部隊は撤収でなく再配置されている”

NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は31日、ベルギーのブリュッセルにある本部で記者会見し、ロシアがウクライナの首都キエフ周辺などでの軍事作戦を大幅に縮小すると述べたことについて「われわれの情報では、ロシアの部隊は撤収ではなく再配置されている。キエフなどへの圧力は続いており、今後さらなる攻撃が予想される」と述べ、警戒を怠るべきではないという考えを示しました。

またストルテンベルグ事務総長は停戦交渉に臨むロシアの姿勢について「これまでのところ政治的に解決しようとする意思がロシアの側にはほとんど見られない。ロシアはウクライナへの軍事侵攻をやめず、町への砲撃を続け、部隊を再配置して東部への攻撃を強めようとしているようだ」と述べ、ロシア政府の真意を見極める必要があるとの認識を示しました。

日本政府「キエフ」を「キーウ」に ウクライナ語に沿った表記

ウクライナの首都「キエフ」の名称表記について、政府は、軍事侵攻している側のロシア語に基づき適切ではないという指摘があることも踏まえ、今後、各省庁が作成する資料などでは、ウクライナ語に沿った「キーウ」に改めると発表しました。

また、ロシア語に基づいた表記になっているウクライナ国内のほかのすべての都市も同様にウクライナ語に沿ったものに改めました。

例えば、
▼黒海沿岸にあるウクライナ最大の港湾都市「オデッサ」は「オデーサ」に、
▼史上最悪の原発事故が起きた「チェルノブイリ」は「チョルノービリ」に、
▼東部の「ドニエプル」は「ドニプロ」に変わります。

プーチン大統領 春の徴兵の大統領令に署名

ロシアのプーチン大統領は、31日、ロシアで毎年2回、春と秋に行われる徴兵のうち、春の徴兵に関する大統領令に署名しました。

春の徴兵は4月1日から7月15日にかけて行われ、18歳から27歳までの13万4500人が徴集されるということです。

徴集される兵士の数は、ここ数年の規模と変わらない見通しです。

春の徴兵についてロシア軍の参謀本部は31日「ウクライナで行われている特別軍事作戦とは全く関係がない。作戦に関わっているのは将校と職業軍人だけだ」と強調しています。

トルコ大統領“私の目標は両大統領を直接会わせること”報道

トルコメディアは、エルドアン大統領が記者団に対し「プーチン大統領とゼレンスキー大統領に対して、『私の目標はすぐにでもあなたたちを直接会わせることだ』と伝える。会談を開く用意はできている」と述べたと報じました。

両国のトップによる会談を実現させたい考えを改めて示した形です。

また、トルコのチャウシュオール外相は31日、地元メディアのインタビューで「トルコが仲介役となり、1、2週間のうちにロシアとウクライナの外相会談を行う可能性がある」と述べ、3月10日以来となる両国の外相会談に向けて、引き続き努力を続ける考えを示しました。

29日の両国による停戦交渉と同様に、イスタンブールで外相会談を開きたいとしています。

これに関連し、ロシア外務省のルデンコ次官は31日、記者団に対し「外相会談は可能だろうが、会談は、しっかり準備され、実質的なものでなければならない」と述べました。

英情報機関長官 “ロシア軍兵士は命令拒否 装備破壊も”

イギリスの情報機関、GCHQ=政府通信本部のフレミング長官は31日、オーストラリアの大学で講演を行い「プーチン大統領は、ウクライナの人々による抵抗の強さを見誤り、ロシア軍の能力を過大に評価していた」などと述べました。

そして、ロシア軍の兵士は兵器も足りず、士気も低下しているとしたうえで「命令を拒否したり、みずからの装備を破壊したり、さらには、誤ってロシア軍の軍用機を撃墜している」と指摘し「プーチン大統領のアドバイザーたちは、実際に何が起こっているのかなど大統領に対し真実を伝えることを恐れているようだ」と述べました。

また、ロシア軍が首都キエフなどでの軍事作戦を大幅に縮小するとしていることについて「大幅な変更を迫られたようにもみえるが、依然としてこれらの地域における攻撃を続けている」などと述べ、今後を見極める必要があるとしています。

そのうえで「罪のないウクライナの人々や、一般のロシア人の犠牲を伴う、プーチン大統領の個人的な戦争になっている」と強調しました。

ロシア大統領府“アメリカが本当の情報持ってないことわかった”

ウクライナに侵攻したロシア軍の状況などをめぐり、ロシアのプーチン大統領が側近から誤った情報を伝えられていたとみられると、アメリカ ホワイトハウスが明らかにしたことについて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は31日「彼らが本当の情報を持っていないことがよくわかった。クレムリンで何が起こっているのか理解しておらず、プーチン大統領についても理解していない。われわれの意思決定の仕組みやスタイルがわかっていない」と反論しました。

そのうえで「こうした理解不足は単に残念なだけでなく、アメリカ側の間違った判断につながり、非常に悪い結果をもたらすことになる」と批判しました。

ゼレンスキー大統領 オーストラリア議会で演説

ウクライナのゼレンスキー大統領は日本時間の31日午後、オーストラリアの議会で、オンライン形式による演説を行いました。

この中でゼレンスキー大統領は、ロシア軍による爆撃や市民の殺害を非難したうえで「私たちの地域で起こっていることは、あなたたちの国や国民にとっても脅威となっている。今、ロシアを止めなければ、戦争をしたがっているほかの国々にも、武力行使が可能だと思わせてしまうだろう」と訴えました。

また「ロシアが核ミサイルでほかの国を脅すのをやめるまで強力な制裁が必要だ。ロシアでのすべてのビジネスを止めなければならない」として制裁の強化を呼びかけました。

さらに「オーストラリアには装甲車など非常に良い装備がある。支援してくれれば、軍事力の面で情勢をよくすることができる」と述べ、さらなる軍事支援を求めました。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ“ロシア軍が対人地雷を使用”

アメリカに本部がある国際的な人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、ロシア軍がウクライナで、国際条約で使用が禁止されている対人地雷を使用したと発表しました。

それによりますと、地雷は28日、ウクライナ東部のハリコフ周辺でウクライナの爆発物処理の技術者が発見したということで、半径16メートルの範囲内の人を殺傷する能力があるとしています。

「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の担当者は「こうした地雷は戦闘員と民間人を区別せず、この先、何年にもわたって人の命を奪う遺産となる」と述べ、ロシアの行動を非難すべきだと指摘しました。

人を殺傷することを目的とした対人地雷については、1999年に発効した対人地雷禁止条約で、使用や製造などが全面的に禁止されています。

条約にはこれまで、ウクライナを含む160以上の国と地域が加盟していますが、ロシアは加盟していません。

岸田首相「新たな国際秩序の枠組みが必要」

ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり岸田総理大臣は、31日の衆議院本会議で、新たな国際秩序の枠組みが必要だとして、国連安全保障理事会の改革の実現に向けて、リーダーシップを発揮したいと強調しました。

一方、日本の大手商社が出資するロシア極東の天然ガスの開発プロジェクト「サハリン2」は、エネルギー安全保障上、極めて重要だとして撤退しない方針を明らかにしました。

「ロシア軍 北部チェルニヒウ周辺では激しい攻撃」英国防省

イギリス国防省は31日、ウクライナでの戦況の分析を公表し「ロシア側は軍事作戦を縮小すると表明したにも関わらず、北部チェルニヒウ周辺では激しい攻撃が続いている」と指摘しました。

また、「一部の部隊は撤退したが、キエフの東側と西側ではロシア軍が陣地を維持していて、キエフ郊外では数日以内に激しい戦闘の可能性もある」としています。

一方、東部の要衝マリウポリについては「激しい戦闘が続いているが、ウクライナ側が市の中心部を掌握している」と分析しています。

「145人の子どもが死亡」 ウクライナ検察当局

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で犠牲になる子どもが増え続けていて、ウクライナの検察当局は、30日の時点で、145人の子どもが死亡し、222人がけがをしたと発表しました。

被害を受けた子どもが最も多いのはキエフ州で69人
次いで東部のドネツク州で54人
東部のハリコフ州で49人
北部のチェルニヒウ州で39人などとなっています。

また、爆撃や砲撃で被害を受けた学校などの教育施設は790にのぼり、このうち75の施設は完全に破壊されたということです。

ゼレンスキー大統領 ロシア軍の攻撃継続 改めて非難

ウクライナのゼレンスキー大統領は30日、公開したビデオメッセージのなかで「停戦交渉は進められているが、まだ詳細は決まっていない。ロシア側はキエフ周辺などで一部撤退すると言っているが、これはわれわれの防衛部隊による抵抗の結果だ。一方で、東部のドンバスでは新たな攻撃も受けている」と述べてロシア軍が攻撃を続けていると改めて非難しました。

また、30日に行ったアメリカのバイデン大統領との電話会談については、アメリカからの財政支援に感謝を示したうえで「1時間にわたりとても詳細な会談を行った。私は『いまが転換点だ』とバイデン大統領に強調した。民主主義世界の力を示すため、いまこそウクライナに力を貸してほしい」と述べ、さらなる支援を呼びかけました。

ウクライナ代表団の1人「4月1日にオンライン形式で交渉再開」

ロシアとの停戦交渉にあたっているウクライナ代表団のメンバーの1人は日本時間の31日、自身のテレグラムへの投稿で、「4月1日にオンライン形式での交渉を再開する」と明らかにしました。

ジョージア南オセチア自治州 親ロシア派トップ ロシア編入の意向

ロシア南部と国境を接するジョージアにある南オセチア自治州の親ロシア派のトップは30日、ビデオ声明を出し「ロシアとの統合がわれわれの戦略的な目標だ」と述べ、ロシアへの編入を目指す意向を明らかにしました。南オセチアはジョージア北部にありウクライナ東部の親ロシア派と同じように分離独立を主張しています。
ジョージアは旧ソビエトからの独立後、NATO=北大西洋条約機構への加盟を目指していますが、これに強く反発するロシアは2008年にロシア系住民の保護を理由に軍事侵攻し南オセチアの独立を一方的に承認したうえで軍を駐留させています。ウクライナ国防省はこの駐留部隊の一部がウクライナに派兵されたとしています。ジョージア政府が「南オセチアはロシアに占領されている」と訴える中、この地域のトップは「われわれは歴史的な祖国、ロシアの一部となる」と主張していて、欧米とロシアとの新たな火種になることも懸念されます。

ウクライナ副首相 単独インタ「信用できず時間稼ぎかも」

ウクライナのステファニシナ副首相が30日、NHKのインタビューに応じ、ロシアとの停戦交渉についてロシア側の姿勢に変化が見え始めていると指摘する一方「信用できず時間稼ぎかもしれない」と述べ、警戒心を崩しませんでした。
トルコのイスタンブールで29日行われた停戦交渉ではウクライナ側がNATO=北大西洋条約機構への加盟に代わる新たな安全保障の枠組みを提案し、ロシア側は首都キエフ周辺などで軍事作戦を大幅に縮小することを表明しました。
これについてウクライナのステファニシナ副首相は30日、NHKとのオンラインでのインタビューで「ロシア側は今のような状況になるとは思っていなかったはずで、ようやく本当の交渉が始まった。ロシアは安全保障の枠組みなどウクライナ側の提案に関心を示しており真剣な交渉を行おうとしている」と述べ、ロシア側の姿勢に変化が見え始めていると指摘しました。その背景としてはウクライナ軍の抵抗やロシア国内で広がる批判的な圧力、それに国際社会の制裁などを挙げています。ただロシアが表明したキエフ周辺などでの軍事作戦の縮小については「私は今キエフにいるが、空爆が続いており現実とはかけ離れている。ロシアの声明やいかなる約束も信用できず、楽観視できない。今回の交渉ですらロシア軍が再編成をするための時間稼ぎかもしれない」として、警戒心を崩しませんでした。そのうえで、「ウクライナを分断しようとするロシアの試みは、ウクライナの人々の決意を見誤っている。われわれが強さを維持し、国際社会と一体になれば、ロシアの試みは失敗する」と述べ、欧米からの軍事支援や国際社会による制裁の重要性を訴えました。
そして日本については「非常に強くはっきりとウクライナの領土の一体性を支持してくれていてG7=主要7か国の一員としてもロシアへの制裁に貢献している」として感謝したうえで、ロシアへの圧力をかけ続けるべきだという考えを示しました。

米国防総省 “ロシア軍 キエフ周辺の地上部隊の20%弱を再配置”

アメリカ国防総省のカービー報道官は30日、記者会見でロシア軍が首都キエフ周辺に展開していた地上部隊のうち全体の20%弱を再配置し始めたとする分析を明らかにしました。これらの部隊の一部に加えて北部のチェルニヒウや北東部スムイに展開していた部隊の一部はウクライナと国境を接するベラルーシに移動したということです。ただカービー報道官はいずれの部隊もロシア国内の駐屯地に戻っていないとして、部隊の再編成や補給を行ったうえでウクライナの別の場所で任務につく可能性があるという見方を重ねて示しました。そして「現時点でわれわれはロシア軍が撤退し事態を沈静化させようとする証拠を何も見ていない」と指摘しました。
またロシアが軍事作戦の重点を置く方針を示しているウクライナ東部についてロシアの民間軍事会社「ワグネル」の武装警備員およそ1000人が展開しているほか、空爆が優先的に行われているという分析を示したうえで支配地域を拡大しようとする動きだと指摘しました。キエフについても依然として空爆や砲撃は続いているとして、今も大きな脅威にさらされているという認識を示しました。

英国防省 “ロシア軍 多大な損失でベラルーシやロシアに後退か”

イギリス国防省は30日、戦況の分析を公表しロシア軍は多大な損失を受けたため部隊の再編成と補給のためにベラルーシやロシアに後退することを余儀なくされているとの見方を示しました。また地上での作戦能力の低下を補うため大規模な砲撃やミサイル攻撃を続けるとみられるとしています。そして「ウクライナ東部のドネツクとルガンスクに重点を置くのは、複数の方面からの攻勢を維持するのが困難であると暗に認めているのだろう」と指摘しています。

ベラルーシ 国内で軍事演習開始

ベラルーシ国防省は29日、国内で軍事演習を始めたと発表しました。演習は以前から計画していたものだということですが、29日から2日間にわたって軍全体を指揮する部隊と後方支援を行う部隊との連携を確認したということです。ベラルーシはウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアと同盟関係にあり、侵攻に先立ってロシアは合同軍事演習を行うとして3万人もの部隊をベラルーシに集結させました。その部隊が先月24日以降、国境をこえてウクライナに侵攻したとアメリカ国防総省は分析しています。このためロシア軍がウクライナ軍の抵抗を受けて苦戦を強いられている今、ベラルーシが軍事演習で部隊を動かしウクライナ侵攻に加わるのではないかという警戒感も広がりそうです。
ロシア軍についてイギリス国防省は30日「大きな損傷を受けたロシア軍の部隊が態勢を立て直すためにベラルーシやロシアへ撤収している」と指摘していますが、アメリカ国防総省は現時点ではベラルーシ軍が国境付近へ移動するようなウクライナ侵攻に加わる兆候はないとしています。

IAEA事務局長 ウクライナ南部の原発視察

ロシアによる軍事侵攻でウクライナの原子力発電所の安全への懸念が高まる中、IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は現地の原発を視察したことを明らかにしました。
今週ウクライナを訪れているグロッシ事務局長は30日、みずからのツイッターに南部の「南ウクライナ原子力発電所」を訪れ職員を激励する動画などを投稿しました。この中でグロッシ事務局長は「私たちはあなたたちをサポートするために来た」と述べ、ロシアの侵攻が続く中でも原発で作業に当たる職員たちをたたえました。またグロッシ事務局長はウクライナのエネルギー相らと会談し核施設の安全に関わる物資を届ける方策などについて意見を交わし、ウクライナ側を支援する姿勢を強調しました。ウクライナではロシア軍に占拠された北部のチェルノブイリ原発で技術者の交代の見通しが立たなくなる事態が起きるなどしていて、IAEAは安全への懸念を繰り返し示しています。

米宇宙飛行士 ロシアの宇宙船で地球に帰還

国際宇宙ステーションに長期滞在していたアメリカの宇宙飛行士が30日、ともに滞在していたロシアの宇宙飛行士2人とロシアの宇宙船で地球に帰還しました。
NASA=アメリカ航空宇宙局のマーク・バンデハイ宇宙飛行士らはロシアの宇宙船「ソユーズ」で日本時間の30日夜、カザフスタンに着陸し、乗組員らはハッチから元気な姿を現しました。バンデハイ宇宙飛行士は当初からロシアの宇宙船で地球に帰還する予定でしたが、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて予定どおり帰還できるのか注目されていました。
ロシアの宇宙開発公社「ロスコスモス」のロゴージン社長は国際宇宙ステーションにおける欧米との協力を終わらせると繰り返し示唆する一方、29日に行われた船長の交代式ではロシアの宇宙飛行士が「人々は地球上で問題を抱えているが国際宇宙ステーションは友好の象徴で、われわれは一つのクルーだ」と述べるなど、宇宙における欧米とロシアの協力関係の行方にも関心が集まっています。

米 “プーチン大統領 側近から誤った情報伝達か”

アメリカ・ホワイトハウスのベディングフィールド広報部長は30日の記者会見で、ロシアのプーチン大統領がウクライナに侵攻したロシア軍の苦戦の状況や欧米による制裁のロシア経済への打撃について側近から誤った情報を伝えられていたとみられると明らかにしました。この中で「側近はプーチン大統領に本当のことを伝えるのをおそれたとみられる」と指摘したうえで「プーチン大統領は軍によって誤解させられたと感じており、大統領と軍幹部との間で緊張が続いているという情報がある」と述べました。
そしてこうした情報を明らかにしたねらいについて「今回の侵攻がロシアにとって戦略的な失敗であったことが改めてよくわかるからだ」と説明しました。また国防総省のカービー報道官も記者会見で「プーチン大統領はこの1か月間ずっと国防省から十分な情報を得られていなかった」と述べました。

米大統領 “ウクライナに5億ドルの財政支援”

アメリカのホワイトハウスはバイデン大統領がウクライナのゼレンスキー大統領と30日に電話会談を行い、5億ドル、日本円にして600億円余りの財政支援を行うことを申し出たと発表しました。アメリカ政府はバイデン政権の発足後、ウクライナに対してこれまでに合わせて20億ドル以上の軍事支援を打ち出していますが資金面でも支援する形です。
発表によりますと、会談はおよそ1時間にわたって行われ、ゼレンスキー大統領が29日に行われたロシアとの間の停戦交渉について報告したほか、ウクライナ軍が必要とする追加の軍事支援についても協議したということです。

“ロシア軍 少なくとも24回クラスター爆弾使用か” 国連

国連のバチェレ人権高等弁務官は30日、スイスのジュネーブで開かれた国連人権理事会の会合に出席し「ロシア軍が人口が密集する地域で少なくとも24回、クラスター爆弾を使用したという信頼できる申し立てを受けた」と明らかにしました。クラスター爆弾をめぐっては残虐な兵器として使用を禁止する国際条約があります。
一方、バチェレ人権高等弁務官はウクライナ軍がクラスター爆弾を使用したとする申し立てについても調査を進めているとしています。また「砲撃やミサイル、空爆など人口が密集する地域で広範囲に影響を及ぼす兵器の使用が続けられていて市民は計り知れない苦しみに耐えている」と述べ、市民の犠牲が増え続けていることに強い懸念を示すとともに無差別的な攻撃が戦争犯罪にあたる可能性があるという見方を示しました。

ウクライナ公共放送 現地の状況を動画投稿サイトで発信

ウクライナの公共放送は動画投稿サイト、ユーチューブで現地の状況を連日、国内外に英語で発信しています。30日に公開された放送では南部の都市ミコライフで州庁舎がロケット弾による攻撃を受けたことを伝えていて、これまでに14人が死亡し、18人ががれきから救助されたなどとしています。
またウクライナ北部のチェルニヒウの病院ではすべてのベッドが入院患者で埋まっていると伝えていて、ほとんどはミサイル攻撃や空爆でけがをした民間人だということです。院内では攻撃の影響でガラスにヒビが入り水や電気が通じていないとしています。入院しているチェルニヒウの住民は「瓶に水をためて手を洗ったり、トイレに使ったりしています」と話していました。また病院の医療従事者の中には1か月以上帰宅していない人もいるということで、看護師の1人は「手術室では複数の人が同時に助けを必要としている状況です。最初の1週間、私たちは24時間働き睡眠さえ取ることができませんでした」と窮状を訴えていました。

ウクライナ国防省報道官「ロシアは攻撃再開を準備」

ウクライナ国防省の報道官は30日、首都キエフ周辺や北部チェルニヒウなどからロシア軍が部隊を撤退させる動きがあったことを明らかにしたうえで「大規模な撤退ではなくロシアは攻撃を再開する準備をしている」と述べました。そのうえで「ロシアは東部のウクライナ軍を包囲することに集中している」と述べ、ロシア軍が引き続き東部の要衝マリウポリなどの掌握を目指しているとの見方を示しました。

キエフ市長「一晩中 大きな爆発音が聞こえた」

ウクライナの首都キエフのクリチコ市長は30日、EU=ヨーロッパ連合の委員会でオンライン形式の演説を行いました。この中でクリチコ市長は「われわれはロシア軍がキエフから移動したという情報を29日に受け取ったが事実ではない」と述べました。そして「一晩中、キエフの北と東で大きな爆発音が聞こえた。そこで戦闘があり人々が死んでいるということだ」と述べ、キエフ周辺でロシア軍による攻撃が依然として続いていると訴えました。
キエフをめぐってはロシア国防省のフォミン次官が信頼醸成の措置として軍事作戦を大幅に縮小することを決めたと明らかにしていました。

ウクライナの隣国モルドバ 避難者を積極的に雇用の動き広がる

避難生活が長引く中で多くの人が直面するのがお金の問題です。隣国モルドバでは避難してきた人たちを支援しようと企業が積極的にウクライナの人たちを雇用する動きが広がっています。
モルドバ政府はウクライナから避難してくる人たちに対し長期滞在の許可がなくても働けるようにするなど就労の手続きを簡素化していて、ウクライナの人たちを積極的に雇用する企業が増えています。このうち首都キシニョフにあるカフェではウクライナから避難している学生、マリヤ・ボロトナヤさん(18)を先週から店員として雇いました。ボロトナヤさんは「生活にはお金が必要なので仕事を見つけることができてうれしいです。何もせずに過ごしていると嫌なニュースが目に入ってしまうので、仕事のおかげで救われます」と話していました。

介護や看護が必要な人たちの避難が課題

ウクライナから国外に避難した人が400万人を超える中、介護や看護が必要な人たちの避難が課題になっています。
ポーランド南東部のメディカでは30日、ウクライナの首都キエフ在住のエレオノーラさん(63)が体のまひのため寝たきりの40歳の息子とともに国境を越えてきました。ベッドごと、ふだんはレジャー用ボートなどを運ぶための車で国境を越え、地元の警察官の助けを借りて医療支援の団体の患者搬送用の車に移されたあとポーランド国内の避難先に向かいました。エレオノーラさんによりますと、キエフへの攻撃が続く中、息子と一緒に防空ごうに避難することも救急車を手配することも難しかったということです。
エレオノーラさんは「家の近くでロシア軍による攻撃が始まったあとも息子を連れて防空ごうに避難することができなかった。キエフではみんなピリピリしています。一刻も早く戦争が終わることを望んでいます」と話していました。

ウクライナからの国外避難者401万人超 ユニセフ“半数は子ども”

ウクライナから国外に避難した人の数は29日の時点で401万人を超えました。こうした中、ユニセフ=国連児童基金は30日、このうち子どもの数は全体の半数を占める200万人にのぼると発表しました。また250万人以上の子どもがウクライナ国内での避難を余儀なくされているということです。
ユニセフは人身売買などのリスクが高まっているとして、各国と連携して国境での監視活動など子どもの安全の確保に向けた取り組みを強化することにしています。ユニセフのラッセル事務局長は「故郷を追われた子どもたちの数は増え続けていて、その一人一人に対して安全の確保や教育支援などが必要だということを忘れてはならない」としています。

ウクライナ市民少なくとも1189人が死亡 うち108人は子ども 国連

国連人権高等弁務官事務所はロシアによる軍事侵攻が始まった2月24日から3月29日までにウクライナで少なくとも1189人の市民が死亡したと発表しました。このうち108人は子どもだということです。死亡した人のうち393人は東部のドネツク州とルガンスク州で、796人はキエフ州や東部のハリコフ州、北部のチェルニヒウ州、南部のヘルソン州などで確認されています。多くの人たちは砲撃やミサイル、空爆などによって命を落としたということです。またけがをした人は1901人に上るということです。
今回の発表にはロシア軍の激しい攻撃を受けている東部マリウポリなどで確認が取れていない犠牲者の数は含まれておらず、国連人権高等弁務官事務所は実際の数はこれよりはるかに多いとしています。