ウクライナ 新たな安全保障の枠組み提案 ロシアの判断が焦点に

ロシアとウクライナとの停戦交渉を受けて、ウクライナ側は今後NATO=北大西洋条約機構の加盟を断念する代わりとなる新たな安全保障の枠組みについて関係国と具体的な調整に入りたい考えです。一方、ロシア側はウクライナ側の提案を受けて対案を提示するとしていて、プーチン大統領の判断が焦点となります。

ロシアとウクライナが29日、トルコのイスタンブールで行った停戦交渉でウクライナ側はNATO=北大西洋条約機構の加盟を断念する代わりとなる新たな安全保障の枠組みについてロシア側に提案しました。

ウクライナ側によりますと、枠組みにはアメリカ、イギリス、ポーランド、トルコなどのほかロシアや中国も含まれる可能性があるとしていて、これが受け入れられるなら国内に外国の軍事基地を設けないなどの「中立化」に応じるとしています。

この提案をめぐりウクライナ側の代表団は今後2週間かけて安全保障の枠組みに入る可能性がある関係国との間で協議を始めるなど、具体的な調整に入りたい考えです。

これに対してロシア代表団のトップ、メジンスキー大統領補佐官は「ウクライナの提案を検討し対案を出す用意がある」としています。

一方ロシア国防省は首都キエフ周辺などで軍事作戦を大幅に縮小すると発表しましたが東部での軍事作戦は継続する方針で、コナシェンコフ報道官は30日、ドネツク州でウクライナ軍の燃料施設などをミサイルで破壊したと明らかにしました。

ロシアとしては戦闘を継続しながらウクライナとの交渉に臨む考えで、安全保障の枠組みなどをめぐりプーチン大統領がどのような判断を行うかが焦点となります。

ロシア大統領府報道官「まだ非常に長い道のりがある」

ロシア大統領府のペスコフ報道官は30日「ウクライナ側が書面で具体的に提案してきたことは、少なくとも前向きなことだ」と述べ、ウクライナ側の提案に一定の評価を示しました。一方で、ペスコフ報道官は「突破口は見いだせない。まだ非常に長い道のりがある」と述べ、依然として、交渉の難航は避けられないとする見方を強調しました。

ロシア軍 新たに2000人派兵か

ウクライナ国防省によりますと、黒海沿岸の国、ジョージアの一部地域に駐留していたロシア軍の部隊、合わせて2000人がウクライナに派兵されたとしています。

この部隊はロシアが一方的に独立を承認し、ジョージアはロシアに占領されていると訴えている地域、アブハジアと南オセチアに駐留するロシア軍の部隊だということです。

アメリカ国防総省は25日、ロシア軍がこの地域の部隊をウクライナに投入する兆候が見られると発表していて、ロシア軍が戦闘で損失した戦力を補充するねらいがあるとみられます。

ウクライナから国外避難 401万人超

UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は29日の時点で401万人を超えました。

避難先は
▽ポーランドがおよそ233万人
▽ルーマニアがおよそ60万人
▽モルドバがおよそ38万人
▽ハンガリーがおよそ36万人
などとなっています。

またロシアに避難した人はおよそ35万人となっています。

林外相「交渉の行方はまだ予断できない」

林外務大臣は参議院の特別委員会で「双方からの発信を見るかぎり立場の隔たりは依然として大きいとみられている。各国の働きかけにもかかわらずロシアはなお停戦に応じるところまではきておらず、今後の交渉の行方はまだ予断できない。わが国としてもこの停戦交渉の行方に高い関心を持ち、注視している」と述べました。