上海全域での外出制限始まる 貨物便の欠航など物流に影響も

中国最大の経済都市・上海で新型コロナウイルスの感染が拡大し全域で段階的に厳しい外出制限が始まる中、一部の貨物便が欠航するなどの影響も出始めています。当局は外出制限の期間を短く設定するなど経済への影響を最小限にしたいねらいとみられ、感染を抑え込めるかが焦点です。

今月に入り新型コロナウイルスの感染が拡大している中国では28日一日で全土の市中感染が無症状の人も含めて6886人確認されました。

このうち最大の経済都市・上海では無症状の人を中心に4477人と最も多い感染者が確認され28日から来月5日までの期間、市内全域を2つの地域に分けて段階的に厳しい外出制限がとられています。

制限が始まった上海東部には国際便が多く就航する浦東空港がありますが、全日空と日本航空は従業員が出勤できないため日本と結ぶ貨物便が28日に続いて29日も多くの便が欠航しました。

また同じ東部にある世界最大のコンテナの取扱量がある港では貨物船からの荷降ろしはできるものの、配送するドライバーなどの不足が指摘されていて、制限が長期化すればサプライチェーンへの影響が広がる懸念も出ています。

上海の外出制限はこれまでのほかの都市と比べて短く設定されていて、当局は上海のような大都市では経済への影響を最小限にしたいねらいとみられますが期間中に感染を抑え込めるかが焦点です。

ハルビンも外出制限始まる

また人口およそ1000万の東北部の黒竜江省ハルビンでは感染が確認された人の数はここ数日間、無症状も合わせて10人前後ですが27日夜から市内全域を対象にした外出制限が始まり、生活必需品の買い物を各家庭で1人だけ2日に1回、2時間以内に限って認める厳しい措置がとられています。

一方、同じ東北部の人口およそ900万人の吉林省長春では今月11日から外出制限が始まりましたが28日の感染確認は932人と感染が収まらず、トヨタ自動車の現地工場が14日から操業を停止するなど影響が続いているほか、ネット上には食品が購入しにくいといった投稿が多く見られ、長期化する措置への不満が高まっています。

日本企業にも影響

日本企業が展開する現地の店舗や生産拠点などにも影響が出ています。

このうち
▽ユニクロを展開するファーストリテイリングは上海にあるおよそ90店舗のうち41店舗を休業にしました。上海以外でも瀋陽や長春などではおよそ50店舗が休業しているということです。

▽無印良品を展開する良品計画は上海にあるおよそ40店舗のうち外出制限の対象地域にある店舗を休業しています。

大手コンビニでは
▽セブン‐イレブンと
▽ローソンが
外出制限の対象の地域にある店舗を休業しています。
▽ファミリーマートは上海でおよそ1500店舗を展開していますが「詳しい状況は確認中」としています。
またローソンによりますと、日本向けに鶏肉の商品を製造している工場の一部が稼働を停止しているということです。

▽外食チェーンのサイゼリヤは上海でおよそ150店舗を展開していますが、外出制限の対象地域にある店舗を休業にしているということです。

一方、電機業界では
▽ソニーグループが上海にあるテレビやビデオカメラなどを製造する工場の操業を28日から停止しています。

▽東芝は上海のエレベーターの生産工場で来月1日から工場の操業を一時的に停止する可能性が高いとしています。

経済同友会 櫻田代表幹事「悪い影響が出てくると思う」

経済同友会の櫻田代表幹事は29日の定例会見で「中国の経済力の大きさを考えるといろんな意味で悪い影響が出てくると思う。中国国内の消費が落ち込むことは間違いないので日本も含め、世界各国の企業にとって決してよい影響はない」と述べ、今後の世界経済の動向について十分注視する必要があるという見方を示しました。

一方、日本の水際対策については「新型コロナの“第7波”が予想される中で、また説明もないまま対策が強化されると安定したビジネスの交流ができなくなる。日本経済を全体的に弱くしてしまう」と指摘し、政府は緩和に向けた対応を継続すべきだとの考えを改めて示しました。