岸田首相 物価上昇 来月末までに緊急対策の取りまとめを指示

ウクライナ情勢に伴う物価の上昇を踏まえ、岸田総理大臣は閣僚懇談会で来月末までに緊急対策をまとめるよう関係閣僚に指示しました。

岸田総理大臣は29日の閣僚懇談会でウクライナ情勢に伴う物価の上昇をめぐり「原油や穀物の国際価格が高い水準で不安定に推移するとともに、一部の水産物などの安定供給に懸念が生じている。国民生活や経済活動に重大な影響を及ぼし、社会経済活動の順調な回復の妨げになるようなことは避けなければならない」と指摘しました。

そのうえで
▽原油高騰対策
▽小麦などの価格上昇に伴う食料品や飼料などへの対策
▽原油高や新型コロナの影響を受けた中小企業の資金繰り支援
それに
▽厳しい生活を余儀なくされている人への支援を
4つの柱として緊急対策を策定する考えを示しました。

そしてみずからのもとに関係閣僚会議を設置し、山際経済再生担当大臣を中心に与党とも十分連携しながら来月末までに緊急対策をまとめるよう関係閣僚に指示し、財源は新年度予算の予備費でまかなう方針を示しました。

官房長官「十分な効果発揮できる対策の取りまとめに尽力」

松野官房長官は閣議のあとの記者会見で「岸田総理大臣の指示を踏まえ関係省庁一体となって速やかに取りまとめていきたい」と述べました。

また記者団が「年金生活者らを支援する5000円の給付金や『トリガー条項』の凍結解除を盛り込むことも検討するのか」と質問したのに対し「『トリガー条項』は自民・公明両党と国民民主党の3党の協議を踏まえ対応を検討していく。5000円給付は、その必要性を含め、しっかり検討していく」と述べました。

さらに記者団が「予備費にはかぎりがあるが対策はどのくらいの規模感を考えているのか」と質問したのに対し「関係省庁における検討などを踏まえ効果的な施策を吟味した結果として規模感が決まってくる。施策の中身が重要であり直面する危機に機動的に対応すべく、十分な効果を発揮できる対策の取りまとめに尽力していきたい」と述べました。

萩生田経済産業相「影響最小化するよう具体的検討進める」

萩生田経済産業大臣は閣議のあとの記者会見で国民生活への影響を最小化するため原材料の調達先の多様化や中小企業の資金繰り支援の強化などに取り組む考えを示しました。

この中で萩生田経済産業大臣は物価上昇を踏まえた緊急対策について「国民生活や経済活動への影響を最小化するよう具体的な検討をしっかり進めていきたい」と述べました。

そして具体的にはエネルギーや原材料などの安定供給に向けた調達先の多様化や物価の高騰に対応するため、中小企業が上昇したコストを販売価格に転嫁しやすい環境をつくること、さらに中小企業への資金繰り支援の強化に取り組む考えを示しました。

ガソリンなどの小売価格の上昇を抑えるための石油元売り会社に支給する補助金については政府はすでに来月末まで延長することを決めています。

萩生田大臣は「さらに高騰し続けた場合の対応について現在講じている措置の効果も見極めつつ、あらゆる選択肢を排除することなく検討する」と述べました。

山際経済再生相 “今後 首相のもとに関係閣僚会議設置”

山際経済再生担当大臣は閣議のあとの記者会見で「新型コロナについては第6波の出口がはっきりと見えてきたところだが、医療体制を維持強化するとともに安全安心を確保しながら経済社会活動の正常化を図っていく必要がある。そうした中でウクライナ情勢などを受けた原材料価格の高騰などが国民生活や経済活動に重大な影響を及ぼし、順調な回復の妨げになることは避けなければならない」と述べました。

そのうえで「今後、岸田総理大臣のもとに関係閣僚会議を設置し私を中心に関係省庁と連携し与党の意見もよく聴きながら具体策の検討を進めていく。新たな財政措置を伴うものについてはまずは予備費を活用した迅速な対応を優先する」と述べました。

自民 茂木幹事長「緊急対策は予備費活用しすぐに実施を」

自民党の茂木幹事長は記者会見で「原油価格の高騰や物価上昇が大きな課題となっており、国民生活の安心や安全を確保するため党としても政務調査会を中心に早速検討に入りたい」と述べました。

一方、公明党が、補正予算案の編成も含む、十分な財源の確保を求めていることについて「緊急対策はすぐに実施しなければならず、新年度予算の予備費を活用して迅速かつ機動的に対応していく。そのあとの対応策は、ウクライナ情勢も含め、国際経済や日本経済がどうなるかを考え、少し長いスパンで考えることになる」と述べ、補正予算案の必要性は中長期的な視点で検討することになるという認識を示しました。

自民 高市政調会長「5000円の給付金 もうない」

自民党の高市政務調査会長は29日午後、党本部で記者団に対し年金生活者らを支援する5000円の給付金について「反対意見も多くタイミングを逸したので、もうない。今後は補てんではなくセーフティーネットの強化の中で支援の対象をどうするかゼロベースで議論し、知恵を出し合ってもらう」と述べました。一方、高市氏は公明党の山口代表が補正予算案を編成し今の国会で成立を図るべきだとしていることについて「『次の国会で』ということであればわかるが、今の国会中は今のところ考えていない」と述べました。

自民 世耕参院幹事長「予備費の範囲で対応することが重要」

自民党の世耕参議院幹事長は記者会見で「補正予算案の編成を前提とはしていないので予備費の範囲で課題に対応することが重要だ。貧困状態にある子育て世帯が給付金も使い果たして非常に苦しい状況で困っていると報告を受けているので、何らかの対策が盛り込まれるよう努めたい」と述べました。

自民 あすから本格議論

自民党は29日午後、経済成長戦略本部の会合を開き、党としての提言の取りまとめに向けて30日から本格的な議論を行うことを確認しました。座長を務める西村 前経済再生担当大臣は「コロナで傷んだ経済・家計にウクライナ情勢が重なっていろんな物資が値上がりしている中で、どんな人たちが苦しい思いをしているのか議論しながらまとめていきたい」と述べました。

一方で年金生活者らを支援する5000円の給付金については「賃金が下がる中で年金も下がって苦しい状況にあるが住民税非課税世帯への10万円の給付などで対応しているので、その効果も見ながらゼロベースで議論していきたい」と述べました。

立民 大串氏「予備費は新型コロナ対策で計上されたもの」

衆議院予算委員会で野党側の筆頭理事を務める立憲民主党の大串博志氏は党の会合で「岸田内閣の動きは非常に遅いうえ対策もまだまだ小さすぎる。本来、補正予算案を編成し、しっかりとした物価対策をやるべきで、政府の対策が迅速に国民生活を支える内容になっていくのか確認したい」と述べました。

また会合で政府の担当者が財源は新年度予算の予備費でまかなうという方針を説明したのに対し、出席した議員は「予備費は新型コロナ対策のために計上されたものでそれ以外に使うことを許すのは財政民主主義の根幹に関わる問題だ」などと批判し、政府に対し補正予算案の編成を求めていく方針を確認しました。

立民 馬淵国対委員長「予算委員会の集中審議を求める」

立憲民主党の馬淵国会対策委員長は党の代議士会で「円安が急激に進む中、物価の上昇に対応しようとする政府の意思と日銀のデフレ脱却を目指す意思が全く逆の方向を向いて悪循環を生みかねない状況で、予算委員会の集中審議を求めなければならない。この難局を乗り越え国民生活を救済する方法をしっかりと訴えていきたい」と述べました。

国民 玉木代表「4月中では遅すぎる」

自民・公明両党と政策協議を行っている国民民主党の玉木代表は記者会見で「このままいくと戦後最悪の『スタグフレーション』に陥る可能性があり対策の取りまとめは4月中では遅すぎで、今週中か来週中にも講じる必要がある。党の経済対策を近々岸田総理大臣に提言したい」と述べました。

また原油価格の高騰対策については「政府は石油元売り会社への補助金の引き上げを来月末まで1か月延長したが、それだけでは不十分で『トリガー条項』の凍結解除も必要だ。今月中に方針をしっかり定められるよう3党の政策協議を急がせたい」と述べました。