上海全域で段階的に外出制限始まる 感染拡大 日系企業にも影響

中国で新型コロナウイルスの感染が再び拡大する中、上海市は市内全域で厳しい外出制限を段階的に始めました。上海には、中国で最も多く日本人が暮らしていますが、日系企業が工場の稼働を停止させたり、在宅勤務を余儀なくされたりするなどの影響が出ています。

中国の保健当局は27日に、一日で市中感染が中国全土で無症状の人も含め6215人確認されたと発表しました。

中国では、去年は一日に確認される感染者が海外から入国した人を除いてゼロとなる日もありましたが、今月に入ってオミクロン株を中心とした感染が急速に広がっています。

このうち上海では27日、無症状の人を中心に3500人の市中感染が確認され、上海市当局は27日夜、市内全域で外出を厳しく制限する措置を発表しました。

外出制限は、市内を主に東西2つに分けて段階的に実施され、
▽東部では28日から来月1日まで
▽西部では来月1日から5日までの予定です。

このうち、28日から措置が始まった国内外の金融機関が多く集まる東部では、証券取引所は通常どおり営業しているものの、一部の会社では通勤できなくなる事態を避けて、社員が泊まり込んで働いているケースもあるほか、アメリカの電気自動車メーカー「テスラ」の工場が一時、操業を停止すると報道されるなど影響が広がっています。

また、上海には去年10月の時点で、およそ3万8000人の在留邦人がいて、中国で最も多く日本人が暮らしていますが、感染対策のため、日本人が住む住宅地などが相次いで封鎖されているほか、日系企業も工場の稼働を停止させたり、在宅勤務を余儀なくされたりするなどの影響が出ています。

JETRO 上海事務所 “感染収まらなければ世界への影響懸念”

上海市が市内全域で厳しい外出制限を段階的に始めたことについて、JETRO=日本貿易振興機構上海事務所の船橋憲副所長は「上海の主に東側は、きょうからオフィスに出社できなかったり、工場で生産停止になったりしている日系企業があると聞いている」と話していました。

また、「今後の一番のリスクは、今の措置がどれだけ続くかだ。感染が収まらなければ、さらに何らかの措置を継続する可能性がある。上海は世界最大のコンテナ取扱量を誇る港だが、現在、トラックが港に入れない状況になっている。中国は日本の最大の貿易相手国なので、日本への影響も当然出てくるだろうし、世界のサプライチェーンへの影響が懸念される」と話していました。

中国「ゼロコロナ政策」これまでも大都市で制限措置

中国では、徹底して感染を抑え込む「ゼロコロナ」政策のもとで、これまでも大都市での厳しい外出制限措置や大規模なPCR検査が行われてきました。

新型コロナウイルスの感染が最初に拡大した内陸部の湖北省武漢では、おととし1月からおよそ2か月半にわたって都市が封鎖されました。

また、陝西省西安では、去年12月、およそ1300万人の全市民を対象に厳しい外出制限措置がとられ、その期間はおよそ1か月に及びました。

この間には、有効なPCR検査の陰性証明を持っていなかったとして妊婦が病院で診察を受けられず、死産するケースも起き、大きな批判の声があがりました。

さらに、北京オリンピックを控えていたことし1月には北京に隣接する天津で変異ウイルスのオミクロン株の市中感染が出たことを受けて、1300万人以上いる全市民を対象にしたPCR検査が複数回にわたって行われました。

中国では、今月に入ってオミクロン株の感染が各地で拡大し、新規感染者数は武漢で感染が拡大していたおととし2月以来の水準が続いていて、東北部の吉林省長春や南部の広東省・深センでも外出を厳しく制限する措置がとられるなど対策が強化されています。