岸田首相 新経済対策 “来月末まで取りまとめ” あす指示へ

岸田総理大臣は参議院決算委員会で、ウクライナ情勢に伴う物価の上昇を踏まえた新たな経済対策について、機動的に対応する必要があるとして、来月末までに取りまとめるよう、29日に指示する考えを示しました。

自民党の今井絵理子氏は、ウクライナの女性や子どもに対する支援について「国外退避した難民の9割が女性や子どもだ。岸田総理大臣は、G7=主要7か国の首脳会議で新たに1億ドルの追加的な人道支援を表明したが、被害を受ける母子に対する人道的支援の現状と課題をうかがいたい」と質問しました。

これに対し、岸田総理大臣は「今月11日に決定した1億ドルの緊急人道支援は、子どもの保護といった緊急性の高い分野での人道支援や、ミルクをはじめとする女性、乳幼児向けの援助物資の配布などが含まれていて、引き続き女性や子どもに寄り添った支援となるよう対応していきたい」と述べました。
立憲民主党の杉尾秀哉氏は、ロシアとの共同経済活動について「プーチン大統領を増長させて、あげくの果てにウクライナ侵略を許した。日本の経済協力はむだ金だった。安倍政権の楽観的な見通しに基づく失敗としか言いようがない。長く外務大臣を務めてきた岸田総理大臣にも責任がある」と批判しました。

これに対し、岸田総理大臣は「今の状況をもって、2014年以降の国際的な努力をすべてむだだと一概に切って捨てることは適切でない。共同経済活動では、戦後初めて日本人が、日本企業が北方四島で経済活動を行うことを確約した。すべてむだだということは乱暴な話ではないか」と述べました。
公明党の谷合正明氏は、ウクライナ情勢に伴う物価の上昇を踏まえた新たな経済対策について「先に成立した新年度予算はウクライナ危機への対応が盛り込まれていない。原油や穀物の価格高騰を受け、補正予算編成も排除せずに国民生活を守るというメッセージを出してほしい」と求めました。

これに対し、岸田総理大臣は「原油価格や物価の高騰による国民生活や経済活動への影響に機動的に対応していかなければならない。そのための緊急対応策を来月末までに取りまとめるよう、あす指示したい。まずはコロナ予備費を活用した迅速な対応を優先していきたいが、公明党の意見も十分うかがいながら、緊急対策の中身は検討したい」と述べました。
国民民主党の足立 参議院幹事長は、原油価格の高騰対策をめぐり「やはり『トリガー条項』の凍結解除が必要だ。激変緩和措置をやっているが、これは価格上昇を抑えるという仕組みであり、今国民が求めているのは値段を下げてほしいということだ」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「原油価格の高騰に対して、さまざまな対策を重層的に用意した。現在の燃油価格補助制度を来月末(まつ)まで延長したうえで、『トリガー条項』などについては自民・公明両党と国民民主党の3党における協議を踏まえて対応を検討していきたい」と述べました。
日本維新の会の音喜多 政務調査会長は、年金生活者らを支援する新たな給付金を設ける政府・与党の方針について「5000円給付という耳を疑う政策が今、与党から提案をされている。世代間格差を助長する悪手だ。目先の選挙ではなくて、政策効果があるのか真剣に考えなければいけない」と批判しました。

これに対し、岸田総理大臣は「コロナによる影響、原油価格などの高騰の中で対応が十分及んでいない方がいないかといった問題意識に基づく、自民・公明両党からの申し入れだったと理解している。緊急対応策を来月末までに取りまとめていく中で、5000円給付が本当に必要なのかどうかをしっかりと検討したい」と述べました。
共産党の田村政策委員長は、ウクライナ情勢に伴う物価の上昇を踏まえた新たな経済対策について「今後の物価高によって、年収300万円未満の世帯では消費税率が5%から8%に引き上げられた時と同程度の負担率になるという推計も出されている。国民全体に届く対策が消費税の緊急減税であり、ぜひ検討すべきだ」と求めました。

これに対し、岸田総理大臣は「緊急経済対策は、予備費を利用する形で機動的な対応を考えなければならない。そのうえでさらに何が必要か検討したい。ただ、消費税はあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から社会保障の財源として位置づけられていて、当面、消費税に触れることは考えていない」と述べました。
また岸田総理大臣は、新型コロナワクチンの4回目の接種について「専門家で議論を続けているが、結果がどのようなものになってもワクチンをしっかりと準備できるように、政府としてもワクチン製造会社と交渉を行い、確保に努めている」と述べました。

一方、岸田総理大臣は、来月から成人年齢が18歳に引き下げられることを受けて新たに成人となる10代がアダルトビデオへの出演を強要される被害にあっても未成年が親などの同意を得ずに結んだ契約であれば、原則あとから取り消せる「未成年者取消権」が使えなくなることについて「民法、消費者契約法、刑法などさまざまな法律を適用して、成人として扱われる方々の権利や立場を守っていく。法治国家としてそれをしっかりと進めていくことが重要だ」と述べました。

さらに岸田総理大臣は、国連安全保障理事会の改革の必要性について「ロシアのウクライナ侵略によって、国連の在り方が改めて強く議論のそ上にあげられている。日本の常任理事国入りを含む安保理改革の実現に全力をあげていきたい」と述べました。