大相撲春場所 関脇 若隆景が初優勝 新関脇の優勝は86年ぶり

大相撲春場所は千秋楽の27日、関脇の若隆景が12勝3敗で並んだ平幕の高安との優勝決定戦に勝ち、初めての優勝を果たしました。
新関脇の優勝は昭和11年の双葉山以来86年ぶりです。

春場所の優勝争いは、14日目を終えて2敗で若隆景と平幕の高安が並ぶ展開でした。

千秋楽で先に取組があった高安が関脇 阿炎に敗れ、若隆景も結びの一番で大関 正代に敗れました。

この結果、2人は12勝3敗で並び優勝決定戦が行われました。

優勝決定戦では若隆景が上手出し投げで高安を破って、初めての優勝を果たしました。

新関脇の優勝は昭和11年の双葉山以来、86年ぶりです。
また、福島県出身の力士としては元関脇 栃東以来、50年ぶりです。

若隆景は3場所連続で勝ち越して、自己最高位の関脇で臨んだ今場所、持ち味の低い姿勢からの鋭い攻めで白星を重ねていきました。

終盤戦の11日目には全勝だった高安を退け、14日目には大関 貴景勝にも勝って2敗で千秋楽を迎えていました。

優勝インタビューでは地元福島への思いも語る

若隆景は土俵下の優勝インタビューで「うれしい。実感はまだちょっとわかない」と優勝直後の心境を話しました。
千秋楽の本割では2敗で並んでいた平幕 高安が先に敗れましたが「心境は変わらなかった。自分の相撲を取るだけだった」と振り返ったうえで、土俵際の勝負となった高安との優勝決定戦について「最後になんとか残せたというのは自分の感覚としてあった。一生懸命相撲を取るだけだった」と述べました。また優勝の要因について「下からの攻めが今場所は特によかった」と話していました。
そして、地元の福島に向けて「震災から11年たってまだまだ復興が進んでいないところもある。自分が土俵でできることを精いっぱいやっていい姿を届けたい」と思いを述べました。

祖父も父も兄2人も力士 相撲一家に育つ

初優勝を果たした若隆景は福島市出身の27歳。
身長1メートル81センチ、体重130キロと大相撲では大きな体ではありませんが、低い姿勢からの厳しいおっつけを持ち味にしています。

若隆景は3兄弟の力士で、1つ上の年齢の兄・幕内の若元春と、3つ上のもう1人の兄・幕下 若隆元とともに、荒汐部屋に所属しています。

また、祖父は昭和20年代から30年代に活躍した元小結 若葉山で、父も元力士という相撲一家です。

若隆景は東洋大学の相撲部出身で、平成29年の春場所で三段目100枚目格付け出しで初土俵を踏み、平成30年夏場所で十両に昇進、そのよくとし、令和元年の九州場所で幕内入りを果たしました。

去年7月の名古屋場所は新三役の小結として臨みましたが、5勝10敗と負け越しました。

その後、3場所連続で勝ち越して今場所は自己最高位となる関脇に昇進して臨んだ場所でした。

若隆景の父もパブリック・ビューイングで見守る

JR福島駅西口広場のパブリック・ビューイング会場では、若隆景の父で元力士の大波政志さんも、後援会の会員や相撲ファンら200人とともに千秋楽の取組を見守りました。

政志さんは若隆景が敗れ優勝決定戦にもつれ込むことが決まると、残念そうな表情を浮かべ、会場からも大きなため息がこぼれました。

その後、優勝決定戦が始まると、政志さんは周りから「頑張れ」という声援が沸き起こる中、心配そうな表情で大型モニターを見つめました。そして、若隆景が上手出し投げで勝ち、悲願の初優勝を決めると、政志さんは、手をたたいて喜び、集まった人たちがバンザイをして祝福する中、うれしそうな表情で繰り返し礼をして喜びを分かち合っていました。

政志さんは「感無量です。若隆景は、幼い頃は、小さくて弱くていつも泣かされていました。相撲を始めた日からきょうまで、ずっと毎日強くなっていると思います。『おめでとう。よく頑張ったな』と声をかけてあげたいです。若隆景の祖父、元小結若葉山も驚いて、喜んでいると思います」と話していました。

そのうえで大関昇進に向けた来場所以降の戦いに向けて「これからがスタートなので、気を引き締めてまだまだ上を目指していってほしい」と話していました。

若隆景 貫いてきた相撲の形と相撲への姿勢

若隆景は低い姿勢からの厳しい攻めと、ひたむきに相撲に集中する姿勢を貫いて初めての優勝を手にしました。

若隆景は1つの目標としてきた祖父で元小結 若葉山を超える自己最高位の関脇で今場所を迎えました。

先月28日の番付発表の記者会見で「下から上に押し上げる意識を大切にしている」と話していた若隆景は、そのことばどおり、低い姿勢からの厳しいおっつけで前に出る攻めで白星を重ねていきました。

8勝1敗で迎えた10日目は強烈なおっつけで、同じ新関脇の阿炎に得意の突き押し相撲をさせず、圧倒しました。この日の審判長を務めた元大関 武双山の藤島親方は「強い。びくともしない。間違いなく大関候補だ」と高く評価しました。

11日目にはここまで全勝だった高安との一番が組まれました。
若隆景は立ち合い、低く当たってからもろ差しとなり、高安を寄り切りました。大事な一番でも低く攻める自分の形を貫き、一気に存在感が高まりました。

13日目に大関 御嶽海に敗れ、2敗に後退しましたが、翌14日目の大関 貴景勝戦は強烈な当たりでいったん土俵際まで押し込まれたものの、今場所貫いてきた低い攻めで反撃して寄り切りました。

貫いてきたのは相撲の形だけではありません。師匠の荒汐親方は敗れたあともいつもと変わらず稽古に励む若隆景の姿を見ていました。
「ふだんからやっていることは変わらない。今までの努力が実った結果だ」と、ひたむきに稽古に打ち込んできた若隆景を評価しました。若隆景は春場所中「自分の相撲に集中する」ということばを何度も口にしました。多くは語らずとも、その実直な姿勢が表れていました。

福島出身の若隆景にとって、春場所が開催される3月は東日本大震災が発生した月とも重なります。
「福島に少しでも活躍を届けられたらと思っている」と話していた若隆景、その思いを初優勝という最高の形で実現しました。

三賞 若隆景が技能賞 高安と琴ノ若が敢闘賞

三賞選考委員会が春場所が行われている大阪府立体育会館で開かれ、技能賞に初優勝を果たした関脇 若隆景が選ばれました。
12勝3敗で優勝した若隆景は腰を落とし、下からおっつける相撲などが評価されました。若隆景の技能賞受賞は去年の夏場所以来3回目です。

敢闘賞は千秋楽まで優勝を争った高安と琴ノ若の2人が選ばれました。
高安は優勝決定戦で若隆景に敗れましたが、馬力のある相撲で12勝をあげました。
また琴ノ若は正代と御嶽海の大関2人を破る活躍を見せるなど11勝4敗の成績でした。
高安は5回目、琴ノ若は3回目の敢闘賞受賞です。

八角理事長「高安もいい相撲を取った 2人とも立派だ」

日本相撲協会の八角理事長は、新関脇 若隆景と平幕 高安の優勝決定戦が土俵際のきわどい勝負だったことを踏まえ「高安が勝ったかと思ったが、最後は勝ちたい気持ちが強かった若隆景が勝った。ただ高安もいい相撲を取った。2人とも立派だ」と両者をたたえました。

そのうえで初優勝を果たした若隆景について「やってきたことが実ってきた。精神的にも粘り強く攻められる。あとは馬力が課題だが、相撲の形は違うが体つきが近い千代の富士関のようになってほしい」とさらなる期待を寄せました。

一方、高安については「けがなどがあっても合同稽古にも一生懸命出るなど腐らずに稽古してきた。そういう結果が取組に出た」と評価していました。

このほか千秋楽まで優勝争いに加わった平幕の琴ノ若についても「内容はよかった。力をつけているのは間違いなく、来場所が楽しみだ」と成長に期待を寄せました。

2年ぶりの大阪開催となった春場所については「大阪の人たちは待っていてくれた。来年は観客の定員を通常に戻したい。取組内容のいいものが多く力士はよく頑張ってくれた」と話していました。

十両優勝は元小結の竜電(13勝2敗)

十両は、元小結の竜電が13勝2敗で初めての優勝を果たしました。

春場所の十両は、14日目を終えて高田川部屋の竜電がただ1人2敗で、単独トップに立っていました。

27日の千秋楽、竜電が水戸龍に寄り切りで勝ち初めての十両優勝を果たしました。

竜電は山梨県出身の31歳。

平成18年春場所で初土俵を踏んだ後、もろ差しの相撲で平成30年の初場所で新入幕を果たし、令和元年名古屋場所では小結に昇進しました。

しかし新型コロナウイルスの感染拡大防止のために日本相撲協会が定めたガイドラインに違反して原則、外出禁止としていた期間に不要不急の外出を繰り返していたとして、前頭14枚目だった去年の夏場所から3場所の出場停止の処分を受けていました。

復帰した九州場所は西の幕下47枚目で7戦全勝で優勝、先場所は6勝1敗の成績でした。

今場所は東の十両13枚目で迎え、落ち着いた相撲で初日から8連勝するなど白星を重ね、13勝2敗の成績で初めての優勝を果たしました。

竜電は「相撲を取れることがうれしい。毎日いい相撲を取ろうと思ってやったのがよかった」と話していました。

そのうえで幕内への復帰に向けて「しっかり稽古してまた挑みたい。いい相撲を取って、応援してくれたらうれしい」と話していました。

序二段優勝は虎徹 優勝決定戦を制す

序二段は虎徹が千秋楽の優勝決定戦を制して優勝を果たしました。

春場所の序二段は大嶽部屋の虎徹と武蔵川部屋の中島の2人が7戦全勝で並び、千秋楽の27日に優勝決定戦が行われました。

その結果、虎徹が中島に寄り切りで勝って優勝を果たしました。

虎徹は三重県津市出身の20歳。

おととしの春場所で初土俵を踏み、一時は三段目60枚目まで番付を上げましたが、右ひざのけがで去年7月の名古屋場所を途中休場し、その後、2場所連続で休場しました。

今場所は東の序二段62枚目で臨み、得意とする四つ相撲で白星を重ねてきました。

虎徹は「落ち込んでいてもしかたないと前向きにリハビリをして活躍できるよう頑張ってきた。優勝決定戦は前みつを取って、前に出る相撲が取れてよかった。迷惑をかけてきた人たちやお世話になった人に恩返しができていなかったので優勝を通して恩返しができたのがうれしい」と話していました。

そのうえで今後に向けて「自分の相撲を取っていずれは幕下、十両と上がっていける力士になりたい」と意気込みを示しました。

序ノ口優勝は琴手計 同じ部屋の力士との優勝決定戦に勝利

序ノ口は琴手計(ことてばかり)が千秋楽の優勝決定戦を制して優勝を果たしました。

春場所の序ノ口はともに佐渡ヶ嶽部屋の琴手計と琴挙龍が7戦全勝で並んで、千秋楽の27日に、優勝決定戦が行われました。

そして、琴手計が琴挙龍に寄り切りで勝って優勝を果たしました。

琴手計は千葉県柏市出身の18歳。

高校相撲の強豪、埼玉栄高校から兄で幕内力士の琴勝峰が所属する佐渡ヶ嶽部屋に入門してことしの初場所で初土俵を踏みました。

今場所は東の序ノ口10枚目として臨み、初日から7連勝していました。

琴手計は十両の取組後に行われた優勝決定戦を振り返り「土俵に上がると人が多くて楽しみ半分、緊張半分だった。自分の形になることができたとは思っていないが、勝ててうれしい。稽古してきたことを信じて自分の力を出せれば勝てると思っていた」と話しました。

そのうえで「相撲はいつも同じ部屋の琴恵光関の相撲をお手本にしている。右を差して自分の形にして相手に食らいついていく相撲を目指したい。来場所もいい相撲をとって将来は関取を目標に頑張りたい」と今後の抱負を語りました。