ロシア軍 “首都制圧より東部での軍事作戦を重視か” 米高官

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシア軍について、アメリカ国防総省の高官は首都キエフに向け前進しようとする兆候が見られず、現時点では首都の制圧よりも東部地域での軍事作戦を重視しているという見方を示しました。

その東部のマリウポリでは人道危機が深刻化していて、フランスのマクロン大統領は市民の避難を支援する作戦を行う方針を明らかにし、近くロシアのプーチン大統領とも会談して詳細を詰めたいとしています。

アメリカ国防総省の高官は25日、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシア軍について、首都キエフに向けて前進しようとする兆候が見られないとしたうえで「少なくとも今の時点ではキエフ制圧を求めるつもりがないようだ」と述べました。

その一方で、ロシア軍が東部地域での軍事作戦を優先して攻撃を強化しているという見方を示し、ウクライナ側との停戦交渉でより実質的な利益を確保することなどがねらいだと指摘しました。
こうした中、ロシア国防省は25日に発表した戦況分析で「軍事作戦の第1段階の主要目的は達成された」と強調したうえで「東部ドンバス地域の解放という主要な目標の達成に力を注ぐことができる」と主張し、親ロシア派の武装勢力が影響力を持つ地域を中心に、軍事作戦が強化されるという認識を示しました。

そのウクライナ東部では、地上での激しい戦闘や集中的な空爆によって人道危機が深刻化しています。
ロシア軍が攻勢を強めるマリウポリで16日に破壊された劇場についてロイター通信などは市幹部の話として、当時避難していたのはおよそ900人で、300人が亡くなり、600人が救出されたとする推計を伝え、被害の正確な実態は今も明らかになっていないとしました。

現地の人権状況を監視する国連の代表は、衛星写真の分析から、マリウポリで複数の集団墓地が確認され、このうちの1つにはおよそ200人が埋葬されていると見られるとしたほか、WFP=世界食糧計画は、マリウポリはロシア軍が包囲しているため支援物資が届けられず、食料や水が底を尽きつつあると強い懸念を示しました。
マリウポリをめぐって、フランスのマクロン大統領は25日、市民の避難を支援する人道的な作戦をトルコ、ギリシャとともに行う方針を明らかにし、近くロシアのプーチン大統領とも会談して詳細を詰めたいとしています。
また、ウクライナの隣国ポーランドを訪れているアメリカのバイデン大統領は25日、国境からおよそ70キロの都市ジェシュフでアメリカ陸軍の兵士らを激励するとともに、ウクライナの人道危機の現状について支援団体などから説明を受けました。

バイデン大統領は、26日には首都ワルシャワでドゥダ大統領と会談するほか、避難者を保護している施設を訪れることにしていて、NATO=北大西洋条約機構による防衛やウクライナへの支援をアピールするとともに、ロシアをけん制するねらいがあるものと見られます。