ウクライナ “ロシア海軍の艦艇撃沈” 停戦交渉停滞で長期化か

ロシア軍がウクライナへの侵攻を続ける中、ウクライナ軍はロシア海軍の艦艇を撃沈したと発表するなど、激しい抵抗を続けています。
一方、双方の停戦交渉は停滞しているとみられ、長期化への懸念が強まっています。

ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は、東部の要衝マリウポリの包囲を続けるなど、親ロシア派の武装勢力を支援しながら戦闘を激化させています。

これに対し、ウクライナ軍は24日、ロシア軍が掌握した南東部ベルジャンシクの港に停泊していたロシア海軍の大型揚陸艦を攻撃して撃沈したと発表するなど、激しく抵抗しています。

首都キエフの包囲に向けたロシア軍の部隊には一部で後退もみられていて、イギリス国防省は「ロシア軍はほぼ確実に数千人の犠牲者が出ている」と分析しているほか、アメリカメディアもNATO=北大西洋条約機構の高官の話として、ロシア軍の兵士が7000人から最大で1万5000人死亡したと推定され、軍の装備の10%が失われて軍事作戦のペースを維持する能力が損なわれた可能性があると伝えています。

こうした中、ロシア国防省は24日、ウクライナ国内の30の研究施設でアメリカ国防総省の支援を受け「炭そ菌」などの生物兵器の開発が行われていた証拠があると主張しました。

アメリカなどはロシア軍がこう着する戦況を打開するためにこうした主張を利用して逆にウクライナ側に、生物・化学兵器を使用しないか警戒しています。

一方、ロシアのプーチン大統領は、24日、国家安全保障会議を開催し、ショイグ国防相らが出席しました。

会議ではウクライナとの停戦交渉についても話し合われ、大統領府は「ウクライナ側が停戦交渉を停滞させていると遺憾の意が示された」と発表し、交渉が難航する現状をプーチン大統領が批判したとみられます。

ただ、ウクライナ代表団のポドリャク大統領府顧問は同じ24日、「ロシアが戦争を長期化させようとしている」と批判していて、停戦のめどが依然として見えない中、長期化への懸念が強まっています。

軍事専門家 ウクライナ軍は各国供与の兵器で反撃

ウクライナの軍事専門家はウクライナ軍が各国から供与された対戦車ミサイルなどの兵器を使ってロシア軍に反撃していると分析したうえで戦闘の長期化は戦果を急ぐロシア側にとって打撃になりかねないとの見方を示しています。

NHKのインタビューに応じたのは、ウクライナで、シンクタンクの代表を務め、軍事や外交問題に詳しいミカイロ・サモシ氏です。

ロシア軍の侵攻から1か月が経過した戦況についてサモシ氏は「当初ロシア軍は首都キエフを数時間で陥落させる作戦だったとみられるが、実現できなかった」としたうえで、その理由として「ウクライナ軍の能力の高さに加えて、対戦車ミサイルの『ジャベリン』や、無人機など各国から供与された兵器もあって、ロシア軍に反撃できている」と分析しました。

また、「プーチン大統領には時間がない」と述べて旧ソビエトが第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利した戦勝記念日でもある5月9日までにプーチン大統領が国内向けに何らかの戦果をアピールできなければ、政治的な打撃になりかねないとの見方を示しました。

そして「戦勝記念日を前にした4月はとても危険な時期になる。プーチン大統領が核兵器を使うようなことにならないよう、民主的な国々は警戒を強める必要がある」と指摘しました。

その一方で、サモシ氏は、NATO=北大西洋条約機構について「今のところ受け身の対応しかできておらず、現状を打開するような手立てを持っていない。NATOが介入しない姿勢を続ければ、かえって、ロシアに核を使用する口実を与えてしまう」と述べ、懸念を示しました。