円安どこまで?意識される“黒田ライン”【経済コラム】

ついに1ドル=120円台に突入した円相場。
この円安はどこまで進むのか?
市場関係者の間で飛び交うのは、125円前後を意味する“黒田ライン”ということばです。(経済部記者 中野陽介)

1ドル=125円前後の“黒田ライン”

黒田とはもちろん、日銀の黒田東彦総裁のこと。

黒田バズーカとも呼ばれた大規模な金融緩和を背景に1ドル=125円前後まで円安が進んでいた2015年6月10日、衆議院の財務金融委員会で、黒田総裁はこう発言しました。

『ここからさらに円安に振れることは、普通に考えるとなかなかありそうにない』

急速な円安への警戒感も出ていただけに、この発言を行き過ぎた円安に対するけん制だと受け止めた市場は大きく反応。

円相場は一時2円以上も円高が進みました。
“このラインを超えると黒田日銀は動くぞ”

こうして市場関係者の胸に深く刻み込まれたのが、1ドル=125円前後の“黒田ライン”というわけです。

これ以降、1ドル=100円から118円程度と、このラインから大きく離れた相場が続いていましたが、3月22日に6年1か月ぶりに120円台に入ったことで、再び“黒田ライン”が市場関係者の話題にのぼるようになっています。

“黒田ライン”は機能するか 市場関係者の見方は?

今回もまた、円安に歯止めをかけるラインとして機能するのでしょうか?

●市場関係者(1)
「“黒田ライン”は健在。かつて125円で発言したのだから、そこに近づけば何らかのコメントを求められるし、その中でけん制発言が出る可能性は十分にある。
だから円安が進んでも125円までだと思うし、もっと手前で警戒感から利益確定の円買いが出てくる可能性もある」

●市場関係者(2)
「125円は、過去の円安局面で踏みとどまってきた水準で、“黒田ライン”はかなり意識されている。
125円もするドルを買い進めるほど、投資家にとってドルが魅力的で、日本に魅力がないだろうか。
コロナでインバウンド需要がないことも円安の一因だが、125円という水準は円が安すぎると感じさせ、突き抜けることを許さない分厚い天井でもある」

125円前後の“黒田ライン”が円の底値として意識されていると語る市場関係者たち。

その一方で、今の円安はもはやこの水準にとどまるものではないという声も聞こえてきます。

●市場関係者(3)
「今の円安は、日米の金利差の拡大だけでなく、貿易赤字が定着しつつある日本経済の弱さを表した円安だ。
安い円で高騰している原油などを買うので貿易赤字が膨らみ、それによってまた円安が進むという悪循環に陥りつつある。
短期的には“黒田ライン”を意識した取り引きになったとしても、中長期的には日本経済が成長力を取り戻さないかぎり、円安は“黒田ライン”を超えて続いていくのではないか」

すでに通貨としての総合的な実力を示す実質実効為替レートでは、円はおよそ50年ぶりの低い水準となっています。

それだけに、いまの円安が“黒田ライン”を超えるのかどうか、一段と注目が集まることになりそうです。

注目予定

3月17日と18日の金融政策決定会合で政策委員から出された、主な意見が公表されます。

黒田総裁は会合後の会見で「円安は日本経済にとってプラスで、金融引き締めは適切ではない」と述べ、円安容認と受け止められて円売りの一因となりましたが、政策委員からはどのような意見が出ていたのでしょうか。

OPECプラスの会合では5月の生産量が協議され、原油価格への影響が注目されます。