ウクライナ侵攻1か月 北方領土の元島民 自身の姿と重ね見守る

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から24日で1か月。旧ソビエト軍に島を占領され、故郷を追われた北方領土の元島民たちは、自身の体験と重ね合わせて事態を見守っています。

北海道東部の標津町に住む福沢英雄さん(81)は歯舞群島の多楽島出身です。

両親は島でコンブ漁を営んでいましたが、1945年、旧ソビエト軍が島に上陸してまもなく、家族全員で船で脱出しました。

当時、5歳だった福沢さんは兵士に銃口を突きつけられたこともあったといいます。

家を追われたウクライナの人たちの姿を、命からがら島から逃げたときの自身の体験と重ね合わせながら、日々のニュースを見つめています。

福沢さんは「小さい子どもが『死にたくない』と大粒の涙を流して泣きわめいている姿は、5歳の時の自分と重ね合わさざるをえない。胸が張り裂けそうだ」と話しています。

一方で、福沢さんは島のロシア人との交流も大事にしてきました。

これまでに16回、ビザなしでの交流事業に参加して、北方領土のすべての島に足を運んだほか、島から訪れたロシア人を自宅にホームステイで泊めたこともあります。

それだけに、「ビザなし交流」などを停止するというロシア外務省の一方的な通告に落胆しています。

草の根の交流で縮めてきたロシアとの距離が、また広がってしまうことにむなしさも感じています。

福沢さんは「最初はロシア人のことを憎んでいたが、交流を続けるうちに性格や考え方を理解できるようになってきた。これがまた振り出しに戻ると思うと、悔しくて残念でならない。いつか大統領が代わり情勢が変わったら、また同じつきあいを続けたいと思っている」と話していました。