ウクライナ研究者ら 早期戦争の終結を求める 文化財被害も危惧

ロシア軍による侵攻でウクライナにある貴重な文化財にも被害が広がるおそれがあるとして日本の研究者などは早期の戦争の終結を求めています。

筑波大学の上北恭史教授はウクライナの西部などにある世界文化遺産「ポーランド、ウクライナのカルパチア地方の木造教会」の保存に協力しています。

これらの教会は16世紀から19世紀にかけての16棟の伝統的な木造建築で、上北教授は「建てられた当初の状態を維持し傑出した価値がある」として、ウクライナの研究者などと共に今後の保存の進め方を協議していたということです。

しかし、新型コロナウイルスの影響で協議は滞り、その後に始まった軍事侵攻がこれからも続けば、被害を受けるおそれもあると懸念しています。

さらに、首都キエフの「聖ソフィア大聖堂」など、ほかの世界遺産についても市街戦によって破壊されるおそれがあるのではないかと危機感を強めています。

上北教授は人命第一を前提としたうえで「第二次世界大戦などの危機を乗り越えてきた貴重な文化遺産として継承しなければならない。改めて戦争の終結を強く求める」と訴えていました。

ウクライナ研究者「祈るしか」

筑波大学の上北恭史教授と交流があるキエフ国立建築建設大学のガリーナ・シェフツォバ教授も文化財への被害を懸念しています。

オンラインで取材に応じたシェフツォバ教授によりますと、ウクライナの木造の教会はログハウスのように木材を水平に積み上げて組み上げるのが特徴で、攻撃を受けて出火すれば被害は大きく、修理や復元も難しいといいます。

自分は1週間ほど前にキエフから避難して西部のリビウの知人の家に身を寄せているということで、被害の状況は、インターネットでしか把握できていないということです。

シェフツォバ教授は「毎日のように攻撃を受けている地域もあるので、いつ被害が出てもおかしくない。今は祈るしかない」と話しました。

そのうえで「被害を出さないためには、一刻も早く戦争を終わらせるしかない。世界の協力も必要です」と訴えていました。