ロシア マリウポリ撤退要求もウクライナは拒否 攻勢強まる懸念

ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は、ウクライナ軍に対し、東部マリウポリで武装を解除して街を明け渡すよう通告しましたがウクライナ側はこれを拒否しました。

今後、ロシア軍の攻勢がさらに強まり、犠牲者が増え続けることも懸念されます。

ロシア国防省は21日に「ウクライナ西部リブネ州にある外国人の傭兵などを訓練する施設をミサイルで攻撃し80人以上の傭兵や民族主義者が死亡した」と発表するなど、欧米側の軍事支援の動きもけん制しながら攻勢を強めています。

また、東部の要衝マリウポリでは、包囲したロシア軍とそれに対抗するウクライナ軍の間で激しい市街戦が続いています。

マリウポリの市議会は20日「ロシア軍が、女性や子ども、高齢者などおよそ400人の市民が避難する芸術学校を爆撃した」と明らかにし、ゼレンスキー大統領は「多くの人ががれきの下にいてどれだけの人が生存しているか分からない。この爆撃を行ったパイロットをわれわれは必ず撃ち落とすだろう」と怒りをあらわにしました。

ロシア軍が攻勢を強める中、ロシア国防省は20日夜、声明を発表し「すべてのウクライナ軍が武器を置き、マリウポリから撤退することを要求する」として、抵抗をやめてマリウポリを明け渡すよう通告しました。

これに対して、ウクライナのメディアは、ベレシチュク副首相が「武装を解除し、降伏することはありえない」と述べ、通告を拒否したと伝えています。

ゼレンスキー大統領は20日、あらゆる手を尽くしてプーチン大統領との対話を実現させたいという考えを示しましたが、ロシア大統領府のペスコフ報道官は21日に「交渉で大きな進展は見られず、時期尚早だ」としてロシア軍は攻撃を続けるという考えを示しました。

今後、マリウポリでロシア軍の攻勢がさらに強まり、犠牲者が増え続けることも懸念されます。

一方、戦況の分析を進めているイギリス国防省は21日、首都キエフの包囲に向けたロシア軍の部隊の大部分は、市の中心から25キロ以上離れたままで、行き詰まりが見られるなどと指摘しています。

ただ、部隊の前進が見られない中でも、ロシア軍は今後、数週間にわたりキエフの包囲を優先させる可能性があるとしています。

戦況のこう着も見られる中、ロシア軍は、極超音速ミサイルを立て続けに発射するなど、軍事力を誇示しようとする姿勢も見せています。

さらに、ロシア国防省のコナシェンコフ報道官は21日「スムイでウクライナの民族主義者たちの計画的な挑発行為が夜間に行われた」と主張し、北東部、スムイの工場でアンモニアが漏れる事態が起きたと指摘しました。

そのうえで、ウクライナ側が化学兵器を使用する可能性があると非難しましたが、アメリカなどは、ロシア軍がこうした主張を利用して、逆に化学兵器や生物兵器の使用にまで踏み切るおそれがあるのではないかと警戒を強めています。

東部の要衝 マリウポリとは

ウクライナ東部のマリウポリは人口40万人余り。

アゾフ海に面する港があり、石炭や鉄鋼などの輸出の拠点になっているほか、沿岸部には工場も建ち並び、港湾都市として栄えてきました。

ウクライナにとってアゾフ海にアクセスするための要衝である一方、ロシアにとっては、2014年に一方的に併合したクリミア半島とロシア本土とを結ぶ位置にあり、重要な場所になっています。

現地では、町を包囲したロシア軍と、守備にあたっているウクライナ軍の間で激しい市街戦が続き、これまでに8割以上の住宅が攻撃されたほか、女性や子どもも避難していた劇場や学校が爆撃を受けるなど、深刻な人道危機が続いています。

マリウポリは「人道回廊」と呼ばれる避難ルートを設置することが両政府の間で合意されていますが、ウクライナ側は、合意のあともロシア軍の攻撃がやまず、市民の避難を妨害していると訴えてきました。

マリウポリの市議会は、17日の時点で「35万人以上の市民が残っている」としています。

気温が氷点下になる日もあるうえ電気や水道、ガスが止まり、通信インフラも極めて不安定だということで、食料もほとんどない中で厳しい生活を強いられているとみられています。